スーツケース・ミステリーの起源 Part4: スーツケース・ミステリー2のデザインに関する個人的な考え

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今回は、インバイトジャパンのクリエイティブ・ディレクターであるデニスが、人気の派遣型ゲーム「スーツケース・ミステリー」の開発と、その新バージョン「スーツケース・ミステリー2」の制作について紹介するシリーズの第4回目のブログ記事です。パート1、パート2、パート3をご覧になりたい方はリンクをクリックしてください。

スーツケース・ミステリー2:増えるストーリーと減る靴べら

同僚と一緒に考えた最初の「スーツケース・ミステリー」は、洗練されたパズルのアイデアと美しいデザイン、そしてびっくりするような論理を集約したものです。しかしストーリーだけが欠けていました。例を挙げると、一つのパズルの中で12の月、ランダムなアイコン、カラフルなリボン、そして数字を同時に扱うものがあります。パズルとしては非常に面白いのですが、コンセプト的には必ずしもまとまっていません。これらのアイテムが互いに関係があるとは言い難いのです。


他にも木製の靴べらを6本使ったパズルなんてものもあります。このパズルも人気が高く、プレイヤーにはとても楽しんでもらっているのですが、このパズルも何セットも作っていくにつれ、この小道具の不条理さに気が付き始めました。お店の人は何を思ってこんなに大量の靴べらを買っていくのか想像もつかなかったことでしょうし、「靴べらは使い捨てじゃないってこの人は知っているのか?」と思われたかもしれません…

困難なストーリーと白紙のページ 

私は常にパズルのメカニズムに焦点を当てており、完成したゲームの全体的な外観と、そこに込められたストーリーを練ることはあまり得意ではありません。プレイヤーが微妙なニュアンスに惑わされることがないよう、原色や標準的なフォントを使い、バランスのとれたレイアウトを意識することが多いです。ストーリーやコンセプトとの整合性を無視したデザインでプレイヤーを迷わせてしまっては、パズルデザイナーとしての本分を果たしているとは言えませんからね。


しかしこれは0か100かにすべきという話ではありません。映画は面白いものであると同時にサスペンスフルなものでもありますし、スピーチは情報量が多いながらも、分りやすいものです。複数の目標を同時に達成するには余計な努力が必要ですが、それによりさらに力強い結果に繋がります。これは異なる興味や意識を持つ人たちが集まるチームビルディングのためのゲームにも当てはまるでしょう。ある人にとっては競争することが重要であり、またある人にとってはストーリーが、与えられた「なぜ?」に答える努力と挑戦のための原動力となるのです。


問題は、ストーリー制作が「Blank Page Syndrome(空白不安症候群)」にさらなるストレスを与えることです。クリエイターにとって白紙ほど怖いものはありません。傍から見れば時間の経過とともに自然とアイデアが浮かび、結果が現れ、創造物はずっとそこに存在していたかのように見えることでしょう。しかし今回の場合は文字通り空のスーツケースからのスタートであり、作業は困難を極めました。

インスピレーションを得るために

「スーツケースに何を入れる?」というところから考え始めてみましたが、「何でもあり」という答えに行きついただけであまり役に立ちませんでした。オンラインでのリサーチも同様。というのも、私は個人的にオンラインショッピングをあまりせず、このような膨大なリソースを扱うのは難易度が高いからです。その代わりに、どんな状況であれば自分の内なるクレイジーさを表現できるかを考えてみました。そして自分のインスピレーションに任せて、何が出てくるか見てみることにしたのです。


最初のインスピレーションは、最も汎用性が高く、不朽のファッションアイテムのひとつであるデニムジャケットから得られました。デニムジャケットはあらゆる年齢層、あらゆるキャラクターにマッチします。ファッションの歴史の中で使われてきた多くのバリエーション、スタイルの選択肢、パーソナライズ技術(パッチ、ピン、エアブラシ、ステッチ、カッティング、ペインティング)を検討した末、今回のスーツケースに入れるべきものが分かりました。そしてこの服を自由にカスタマイズできたことで状況は好転しだします。(物を隠す場所がたくさんあるからね!)。さらにこのアイテムは、今回の主人公に個性を与えるきっかけにもなりました。

もちろんスーツケースを使う理由の中心は旅行ですから、そのイメージに寄り添いました。主人公はただ世界各地を飛び回るだけでなく、その旅を1年間で実現することに。実を言うと、私はパズル制作でカレンダーを扱うのが大好きなんですよね。前作でもカレンダーを使っていましたが、少なくともストーリーの面ではあまり上手くいきませんでした。今回は、カレンダー全てをストーリーの一部として活用しようと決めました。

私はよく、歩き回って新しいものを調べることからインスピレーションを得ます。春の東京を散策している時に、造花を使ったパズルを作ろうと思ったのも偶然ではないでしょう。さまざまな色の花を使ったアイデアがあったのですが、パズルのサンプルを組み立ててみると、全体的に色に頼りすぎていることが分かりました。このように、単体では成立しているパズルのコンセプトが、ストーリーの中で他の課題と一緒になるとよく分からなくなってしまうというのは時々起こることです。

パーツをまとめあげる 

ここで、花とデニムジャケットとカレンダーとその他諸々がスーツケースに入っている理由を作らなければならないという、未解決の問題が。この時点で私は「スーツケース・ミステリー2」の制作過程が難題であると感じていました….

でももしかしたらそれが先へ進む鍵だったのかも!…メタ的な話は抜きにして、私は上から下へ指示が伝達される方法について考え始めました。不思議で不透明なことが多いのではないかと。例えば何か新しい書類を要求された時「これ誰からの指示?」と疑問に思うことってありません?

その日の最後に、インバイトジャパンのクリエイティブディレクターである私は、「スーツケース・ミステリー2」のゲームをクリアするための課題をプレイヤーに与えることに決めました。世の中には、主人公の世界を活性化させる推進力として、裏で暗躍する秘密組織を登場させる物語が多くあります。そしてここにも、世界で最も権威のある場所として、謎の「インバイト・ジャパン・アカデミー」が誕生したのである。ドンッ。

そして同時に、プレイヤーの役割を明確にしようと決めました。これにより、プレイヤーとインバイトジャパンアカデミーの間にもう一つの層を設けることが理に適ってきます。プレイヤーは直接アカデミーと接触せず、プレイヤーの助けを必要とする主人公を登場させる方向で固まりました。主人公はエリート校であるアカデミーへの入学を目指す学生です。この筋書きは、何かしらの認定を受けるために相次ぐ困難を乗り越えた経験のある人なら誰でも共感できるでしょう。

編集を重ねて、難易度や仕掛けが異なる7つのパズルが出来上がりました。このパズルには、ゲームの流れに影響を与えて意図しない結果をもたらしてしまうような小さな落とし穴がたくさんあるため、この編集作業は正直面倒なパートです。例えば、文字が書かれたプラスチックの輪っかを組み合わせて使う錠前のために、ストーリーにふさわしい5文字の単語を決める工程がありました。しかし選んだ単語を表す正しい組み合わせを作るためには、輪っかが足りず、錠前を余分に買わなければならないことが発覚。つまり、私の選んだ単語は高すぎたのです。この後お手頃価格の単語を探すのに苦労しました。

※教訓:言葉には値段がついている

最後に

こうして様々な困難を乗り越え、私たちは1と2の全く異なるスーツケース・ミステリーを手に入れました。どちらも挑戦的で、驚きと楽しさに満ちています。私にとっては、チームや私自身のスキルを高めることができる、とてもやりがいがある仕事でもありました。今回私たちが成し遂げたことの大きさを考えると、今後のプロジェクトにも期待が高まります。3作目の制作…あると嬉しいですね。