スーツケース・ミステリーの起源 Part1

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「スーツケース・ミステリー2」の発売に向けて、「スーツケース・ミステリー1」の開発の歴史や考え方をシリーズでご紹介します。今回の前編では、「スーツケース・ミステリー」の開発を後にご依頼いただくことになる会社との最初のイベントについてお話しします。

社内でのチームビルディング活動の展開

オフィスとは本来楽しい場所ではなく、驚きといったものはさほど多くはないでしょう。普段は課題を分析したり、日々の仕事に集中するためのスペースなのだから、チームのための魅力的なプログラムを作るのが難しいのは当然のことです。この問題を解決するために最初に思いつくのはオフサイトでのチームビルディングのイベントかもしれませんが、同僚と遊ぶ以外の目的のためにわざわざ時間を作って外出をする意味があるのか、と疑問に思ってしまうのが実際のところではないでしょうか。

とあるファッションブランドがインバイトジャパンにご相談くださった時のことです。この会社の成功の核心は「従業員のエネルギーの結集」。そんな彼らが求めていたのは、チームのメンバーがこの基本原則に関わり、それを内在化させ、チーム全体を強化するための新しい方法でした。

そこで私たちインバイトジャパンのチームは、ファッションブランドの基盤となる製品や素材、社内のトリビアなどを使って脱出ゲームの制作に着手しましたが、これは非常に繊細さを要する作業でした。私たちは会社に敬意を払いながらも、遊び心と驚きのある体験を提供することに注力しました。更に参加者には会社に対する尊敬の念を打ち破って、会社の中での自分の立場の重要性を理解していただくという目的もあったため、難易度が高いのは想像に難くないでしょう。

ちなみにこちらのファッションブランドは高品質の生地、頑丈なハードウェア、カラフルなパターン、そしてお客様をモダンで洗練された世界へと誘う革新的なデザインで広く知られています。これらはすべて、私たちが取り組むにあたって素晴らしい素材となりましたが、私たちの本当の挑戦は「どこから始めるか」ということでした。

ゲームの制作

チームプレイ用のゲームには、最後に鍵を開けるという行程があります。つまりパズルを解いて、次のパズルを開くためのコードを手に入れるのです。4〜5人のグループでプレイする60分程度のゲームでは、7つ程度のユニークなパズルが組み込まれています。 

ここで最初の問題が発生しました。一般的なゲームでは、決められた手順や方法でパズルを解いていくことでひとつの正解を導き出します。しかしファッションの場合は、アイテムや機能の見方に正解があるとは限りません。せっかく突破口を切り開こうとしているのにモノの見方を固定してしまうということは、例えパズルであっても避ける必要があったのです。

最終的には、特定の感覚で要素をコーディネートする必要がない柔軟なパズルを考えました。例えばマネキンにトップス、ボトムス、靴、バッグを着せるという課題では、選んだアイテムをネットで検索すると、次の課題へのアクセスコードが表示されるという仕様を採用。ただしアイテムのコーディネートは一つではなく、様々な方法で辿り着くことができるように配慮しました。

また別のパズルには当社愛用のUVライトを使用しました(当社の脱出ゲームをプレイしたことがある方なら、ゲーム中に紫がかった光によって文字やアイコンが浮かび上がる瞬間をご存知でしょう)。これにより、ブランド名の由来にもなった有名なペットを紹介するストーリーが生まれました。このペットにまつわるお話しは、社内でもかなりの遊び心のあるトリビアになっています。プレイヤーは探していた鍵がこのペットに “盗まれた “ことを知って、ストーリーにすっかり魅了されていたのが印象的です。そしてここで、創業時に特に重要だった歴史的な日付を配置しました。この事実を適切なタイミングで展開することで、プレイヤーはこのディテールをより個人的な体験として捉え、記憶に刻まれる可能性が高まったのです。

更にもうひとつ、この会社ではちょっとした偶然の産物がありましたのでご紹介します。まずこのイベントが行われたオフィスの部屋には、大きな鏡の壁がありました。イベントの冒頭、プレイヤーに自分自身や会社に対する希望や目標を鏡に直接書いてもらったのですが、これがとても良いアイスブレイクになりました。普段はビジネス一色の部屋が、新たな方法でプレイヤーのための刺激的な空間へと変化したのです。しかしゲームが始まると、次々に出てくる新たな課題に集中するあまり、書いたメッセージはすぐに忘れられてしまいました。また「希望のメッセージ 」は当然良いものではありますが、ビジネスの場では若干空虚な印象を与え、浮いてしまうのも事実ではないでしょうか。

そこでゲームの最後の鍵の1つであるキャビネットを開けると、そこにウィンドウクリーナーのボトルが入っていたときのプレイヤーの驚きを想像してみてください。さて、最後の課題は鏡の掃除です。プレイヤーはひたすら効率的に(時計のカウントダウンが進んでいます!)鏡を上から下へと掃除していきます。そして進行役にゲームの完遂を報告すると、贈られるのは「希望や目標の答えが見つかりましたね」という祝福の言葉。「未来は鏡の中にある」とのこと。そこでプレイヤーたちは、見るべきは磨き上げられたきれいな鏡ではなく、鏡の中なのだと気付きました。そう、「会社の未来はプレイヤーひとりひとりが作っている」というメッセージです。

もちろんすべてのオフィスでそのような細かい作業ができるわけではありませんが、このような仕掛けや気付きに驚くことは間違いないでしょう。正にそこがポイントなのです。 オフィスで毎日同じものを見ていると、その空間で働く人に会社の使命や本質を理解してほしいという願いを込めて配置されたディテールに気付くことがなかなかできません。時間が経つにつれ、そのようなディテールは背景に溶け込んでしまい、見えにくくなってしまうものですからね。

あれ?風船の話はもうしましたっけ?何十個もの風船を割って、次のステージの情報を探すというステージもありました。この騒ぎにはオフィスにいる他の人たちも注目しており、一体何で盛り上がっているのかと興味深い様子で伺っていました。運が良ければ、その人たちもこのストーリーを一緒に知ることができるという、一体感で満ちたワクワクする瞬間だったのが印象的です。

スーツケースで何かできませんか?

そしてフレッシュな顔ぶれの新メンバーを迎えた時、そのブランドはまた新たな課題を持ってインバイトジャパンに戻って来てくれました。「スーツケースで何かできませんか?」と。

我々は挑戦を受け入れました。「よし、インバイトジャパンでスーツケース・ミステリーを作ろう。」

ということで来週の後編では、「スーツケース・ミステリー1」の制作過程とそこから得られた教訓をご紹介します。

次回もお楽しみに!

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