チームとして意思決定を行うのは大変なことであり、どのように進めるべきかなど、必ずしも明確な方向性があるわけではありません。ここでは、チームの意思決定プロセスをより効率的かつ集中的に行うための意思決定テクニックトップ10を紹介します。
さぁ、決断の時! チームは大きな決断を迫られ、議論して計画を練るための時間を確保しました。そこで今、あなたがすべきことは何でしょう?
ただ決断を下すだけ、これは簡単なことのように思えるかもしれません。しかし、ここ数回の意思決定に関する記事でご紹介したように、意思決定には様々な方法やスタイルがあります。
特に最初のうちは、どのように決断を進めていけば良いのか、また、特にチームが関わっている場合は、メンバーのさまざまな意見を考慮する必要があるため、やるべきことは必ずしも明確ではありません。
そんな時、チームはオープンミーティングやディスカッション、あるいは単純な多数決に陥ることが多々あります。しかし、実はこのようなテクニックは、はじめから大きな声や大多数の意見を暗黙のうちに重視してしまう傾向があることを忘れてはいけません。少数派の意見や発言力の弱いメンバーを排除し、ある種の前提を最初から固定してしまう可能性があるのです。
意思決定プロセスの初期段階からチームに必要なのは、異なる意見を公平かつ包括的に前に進めるための意思決定テクニックです。本質的には、チームはさまざまな選択肢から選ぶことができ、より多くの声が貢献し、協力することでそれを実現することができるものなのです。
そこで、このブログでは包括的な議論を促し、問題に対する新しい視点を得て、本当に重要なことに集中し、意思決定プロセス全体をより効果的にするために、チームが活用できるさまざまな意思決定テクニックをご紹介します。
これらのテクニックは、それ自体が目的ではなく、むしろ出発点として使用されるべきものであることを頭に置いておきましょう。意思決定プロセスの初期段階や、チームが行き詰まったときにこれらのテクニックを使うと、より簡単に前進することができます。また、これらのテクニックは、チームがどのように考えているかを深く理解し、チーム内のこう着状態を軽減することにも役立つものです。
チームのための意思決定テクニックTOP10
1. ブレインストーミング
ブレインストーミングは、ほとんどのチームが知っていて、最も使われている古典的な意思決定テクニックです。チームメンバーが一緒にアイデアを出し、組み合わせていく共同意思決定テクニックのことを指します。
ブレインストーミングの多くは、フリーフロー、つまり特定の議題を掲げずにチームメンバーが自由に考え、ディスカッションする時間と空間を確保することで効果を発揮します。このため、ブレインストーミングは何か新しいものを生み出したり、新しいアイデアを思いついたりすることを目的とする場合に、特に効果的なテクニックとなります。
また、ブレインストーミングにはさまざまな方法があり、創造性の高い意思決定のテクニックとして、チームでさまざまな方法を模索することが可能です。
2. ノミナル・グループ・テクニック
ノミナル・グループ・テクニックは、単純なブレインストーミングに投票という要素を加えて発展させたものです。この意思決定テクニックは、最初のブレインストーミングで出てきたアイデアに対してチームメンバーが投票することで機能します。投票の後、最も得票の多かったアイデアを発表します。また、ブレインストーミングと投票のステップを、アイデアが固まるまで繰り返すことも可能です。
また、このテクニックはブレインストーミングで出てきたアイデアを絞り込み、そのセッションをより集中的に行うためにも使用することができます。さらに、混沌としたブレインストーミングの後、チームの雰囲気を把握するのが難しい場合に、チームメンバーの意見を確認するために使用するのも効果的です。
3. デルファイ・メソッド
デルファイ・メソッドは、ブレインストーミングの合間に投票を行う代わりに、リーダーがアイデアの数を減らしたり、より大きな枠組みで整理して、次のセッションでチームで議論できるようにすることを除けば、ノミナル・グループ・テクニックに似た意思決定テクニックであす。
以下はそのメソッドのステップです。
- チームはブレインストーミングを通じて、或いは自分たちでアイデアを出す。
- リーダーはこれらのアイデアをより簡潔なリストにまとめる。
- チームはその新しいアイデアのリストに基づいて議論する。
- リーダーはそのリストをさらに簡潔なリストにまとめ直す。
- チームは最新のリストの中から進めるべきアイデアを選ぶ。
この方法はチームが必要とする限り何度でも繰り返すことができ、その都度、選択肢をさらに絞り込んでいくことができます。また、この方法によって、チームは最も実行可能で重要なアイデアだけに集中できるようになり、前進し続けることができます。
4. 可能性ランキング
可能性ランキングは、アイデアや目標に優先順位をつけ、チームがそれらに置く重要度を可視化するための意思決定テクニックです。また、この手法はチームが選択する可能性をリスト形式で順位付けするという、シンプルで分かりやすいテクニックでもあります。
これは同じ会議の中でメンバーと一緒に行うこともできれば、最初は個人または小グループで行い、後でグループとして議論することもできます。会議でなくても、可能性ランキングの結果連絡はメールなどで簡単に済ませることが可能であることも利点でしょう。
可能性ランキングは、チームメンバーに自分の優先順位と、実際に何を重要視しているかを批判的に考えさせることができます。すべての可能性を本当の意味で順位付けすることは難しいですが、そうすることで、意思決定プロセスにおいて、実際に何を重要視しているかがわかり、チームが意思決定を進める上で役立ちます。
5. 加重配点
優先順位付けに役立つもう一つの意思決定テクニックは、加重配点です。加重配点は、チームが一連の基準に基づいて可能な限りの選択肢を「重み付け」することで、各決断の結果を導き出すことを可能にします。たとえば、リスクを避けたいチームであれば、リスクの大きさに基づいて特定の選択肢を重み付けするといったことが可能です。その他にも、品質や創造性など、チームの価値観や目標に基づいて結果を判断することもできます。
加重採点により、チームは意思決定の結果を部分的に確認し、それが目標や価値にどのような影響を与えるかを知ることができます。そもそも「重み付け」の方法を選択することは、チームの優先順位付けと、チームが(文字通り)何を重視しているかを見極める良い練習にもなります。
6. 決定木(ディシジョン・ツリー)
ディシジョン・ツリーも、チームが結果を図式化するのに役立つ意思決定テクニックの一つです。それと同時に、非常に分析的で合理的な意思決定の方法でもあります。ある選択肢の結果が簡単に計算できたり、マップ化できたり、既知であったりする場合に、主に効果的なものです。
ディシジョン・ツリーでは、木の各節が、その前にある節に基づく異なる決定に対応しており、ツリーの枝の先は、各選択肢のさまざまな結果を表します。これはチームが意思決定の効果を視覚化するのに役立ちますが、やはりそれは、これらの結果が簡単に計算またはマッピング可能である場合に限られます。
そのため、変動性や不確実性がより高い状況や、より創造的で流動的なアプローチが必要な場合に、ディシジョン・ツリーを使用する際は注意する必要があるでしょう。
7. 長所・短所リスト
長所と短所のリストは、誰もが知っている、最もシンプルで広く使われている意思決定テクニックの1つですが、実は個人だけでなく、チームでも有効です。
このテクニックは、単純に選択肢を選び、チームで思いつく限りの長所と短所を書き出すものです。複数の選択肢がある場合は、それぞれの長所と短所を比較して、どの選択肢を取るべきかを決定します。
もちろん、それぞれの選択肢について長所と短所を考えるには時間が掛かるでしょう。そのため、この意思決定テクニックは、検討している選択肢が1つ、もしくは少数の場合に有効です。
8. ディダクティブ・インタラクション(教訓的な相互作用)
多くの人が拒絶反応を示してしまいそうな名前ですが、怯える必要はありません。ディダクティブ・インタラクションは基本的に、「相手を論破する」という意味でしかありません。学校やディベートクラブでよく行われる練習で、「リーダーとしてのテクニック」とまで言われています。
ディダクティブ・インタラクションが最も上手く機能するのは、決断することが一つであるときで、できればこの決断は「イエスかノーか」であるとより良いでしょう。以下がそのステップです。
- 「賛成」「反対」の立場によって、チームを2つのグループに分ける。
- 各グループに、それぞれの立場の長所と短所を書き出させる。
- 次に、「賛成」チームが「反対」の立場の長所と短所を書き出し、逆も同じようにする。
- 両者の結果を共有させる。
- 決定を下す。
ディダクティブ・インタラクションにより、チームメンバーは問題を異なる視点から見ることができるようになります。特に、チームが行き詰まり、ある問題に対して共通の立場で結論を出せないときに有効です。この方法は、チームが一丸となり、両者の有効な点を認識するのに役立ちます。
9. ステップラダー・テクニック
ステップラダーもまた、ブレインストーミングの手順を少し変えて意思決定に臨むテクニックの一つです。各ステップでは、毎回意思決定プロセスに参加させるチームメンバーを増やすことで、ラウンドごとに人数を拡大し、意思決定を新しい目で見る機会を与えていきます。
以下がそのステップです。
- 問題や課題をチーム全体に発表し、自分たちの意見を少し煮詰める。
- 数人のメンバーでコアグループを作り、問題やタスクに集中して最初の解決策を考える。
- コアグループにもう一人メンバーを加える。この新メンバーは、これまでの作業を振り返り、自分の意見を加える。
- ステップ3と同じ作業を、意思決定グループにすべてのメンバーが加わるまで続ける。
- 最終的な決定を下す。
このテクニックは、チーム全体がゆっくりと問題やタスクについて学び、メンバー一人ひとりが意見や感想を述べるように仕向けてくれます。しかし、この方法は時間がかかるので、プロジェクトを決定するまでに時間があるときに使うのがベストでしょう。また、複数のプロジェクトを同時に進める場合にも、メンバー全員に負担がかからないので効果的です。
10. コンセンサス・マッピング
コンセンサス・マッピングは、今回ご紹介した他の意思決定テクニックと同様に、チームメンバーをブレインストーミングにおけるさまざまなステップのグループに混ぜるものです。このテクニックでは、異なるグループのブレインストーミングセッション間の繋がりを「マッピング」することで、最後にチームが合意に達することができる場所を知ることが目的となります。
そのプロセスを(簡略化して)説明します。
- チームメンバーに、個人で問題について考える時間を与える。
- チームメンバーを3人組のグループに分けてそれぞれのアイデアを共有し、可能であれば1つのアイデアにまとめる。
- この3人組のグループをさらに大きなサブグループに分け、そのサブグループ内で、先ほどの小グループのアイデアを1つにまとめる。
- 以上を繰り返して、チームを半々にする2つの大きなグループになったら、2つの(この時点では組み合わせた)アイデアを共有し、チーム全体のための1つの決定を形成する。
- この最終的な決定について、一緒に話し合う。
このように、このテクニックでは、ステップバイステップのプロセスで、チームが能動的に合意形成を行うことに成功しています。いきなり合意形成するのは難しいので、ブレインストーミングの中で自然に選択肢間のつながりが生まれるように誘導することで、効果的にチームを引っ張っていくテクニックです。