チーム内の対立は常に発生するものですが、実際に解決するためには、チームメンバーは何をすればよいのでしょうか。今回は対立に対処するための最も一般的な方法とその違い、そして、それぞれの方法を使うべきタイミングについて見ていきます。
チーム内における「対立」
前回、チームにおける対立はチームワークのプロセスの中で自然なことであるとお話しました。チームはそれぞれの個性や希望、夢、好みを持った個人によって構成されています。そして、その良いところを組み合わせて、大きな成果を上げるのがチームの強みです。
このような組み合わせの過程では、必然的に摩擦が生じ、それがチーム内の対立という形で現れてしまうもの。しかし、前回のブログで説明したように、対立は悪いものであったり、破壊的であるということはありません。未来志向でアイデアを出し合う建設的な対立もあり、それはとても良いことであり、必要なことでもあるのです。
とは言え、対立が生じたとき、必ずしもそう上手くいくとは限りません。ですから、チームには対立に対処し、対立を生産的な方向に導くための方法が必要です。これは少なくとも、対立ができるだけ少数のメンバー間で収まるようにし、他の領域に波及しないようにすることを意味します。
その中でも最良のシナリオは、対立を、潜在的な問題に気づき、それを解決するための手段に変えることです。また、対立を新しいアイデアの源とし、チームのさまざまな考えや意見を融合させる手段としても活用できるかもしれません。
つまり、チームにおける対立とその対処法については、複数の考え方があるわけです。もちろん、これは状況によって異なります。チームメンバー2人が深刻な人間関係の対立を抱えているのであれば、手に負えなくなる前にできるだけ早く問題を解決する必要があるでしょう。
一方、チーム内に不満が蔓延し、あちこちで暴言が吐かれているような場合は、より広範囲で変革的なアプローチが必要であり、より時間と忍耐を要します。
チーム内の対立に対処する方法
チーム内の対立に対処する方法の一つ目として、多くの人が知っているであろう「対立解消(コンフリクト・レゾリューション)」があります。対立解消は交渉人の間などでも応用が利くので、対立を解決したり、少なくとも生産的な話し合いができるように和らげるために広く使われているものです。
さらに、チーム内の対立を処理する方法には、他に大きく分けて2つの方法があります。「対立管理(コンフリクト・マネジメント)」は新しい用語で、対立を協力や協調に向けることに重点を置いています。そして「対立変化(コンフリクト・トランスフォーメーション)」は、対立をより広いシステムや構造の中に位置づけ、より長期的で広範囲な変化(トランスフォーメーション)を可能にすることを目指すものです。
対立解消(コンフリクト・レゾリューション)
名前が示すように、「対立解消」は対立の解決または終了(そしてできるだけ長くその状態を維持)することを目指すものです。そのため、中立的な第三者やスペースを利用して双方を落ち着かせ、双方のさまざまな不満を話し合い、当面の問題を解決する建設的な方法を考え出すなど、緩和や段階的縮小のための手段を用いることが強調されています。
特に重要なのはこの最後のポイントです。なぜなら、対立解消は多くの場合、短期的または単一問題の対立に有効だからです。たとえば、会議で激しい口論になった場合に対立解消のテクニックを使用すると、その場で両者を落ち着かせることができ、おそらくその後の、よりプライベートな環境での衝突の根本的な理由を処理することができます。会議の参加者全員が動揺し、喧嘩をしているような状況では、対立解消はうまくいかないでしょう。
結論から言うと、「対立解消」は以下のような場合に適しています。
- 2つの立場が明確に存在する対立
- 急性または短期的なチーム内の対立
- コミュニケーションのミス、または誤認識に起因するチーム内の対立
- タスクや役割に関連したチーム内の対立
- 対立のダメージをその場で最小限に抑え、激化した状況を和らげたい場合
対立管理(コンフリクト・マネジメント)
「対立管理」は、対立の建設的な側面を強調するものです。ある種の対立、特にアイデアや視点に関する対立の中には、最後に協調や協力が生まれる可能性が常に含まれており、対立全般に対する考え方の可能性を広げてくれます。
つまり、対立管理とは、対立を生産的な目的のために利用することなのです。チーム内の対立で言えば、人間関係に影響することなく、自分の考えをオープンに表現できるようにすること、そしてお互いの考えをぶつけ合うのではなく、融合させ、協力できるような信頼と協力の雰囲気を作り出すこととなります。
このため、「対立管理」は根本的な視点の違いに関する長期的な対立に対してより有効であることが多く、必ずしも手放すことが目的ではなく、むしろ対立に対する視点を変えて、最終的に一つになることが目的なのです。そして、「対立管理」は「対立解消」が必要となるような、より激しい対立を防ぐためにも用いることができます。
「対立管理」は、以下のような場合に有効です。
- 長期的またはチーム全体における対立
- アイデアや視点に基づくチーム内の対立
- その他、明確な解決点がなく、双方が協力し続けなければならない対立
- 対人関係の対立が仕事に波及したり、その逆を防いだりしたい場合
- 建設的な対立が安全に発生するような、協力的な環境を作りたい場合
対立変化(コンフリクト・トランスフォーメーション)
最後の「対立変化」はチームにおける対立の対処法として最も新しい方法です(実は私もこの記事を書くまで聞いたことがありませんでした)。しかし、これまでの2つの手法で欠落していた、チームの構成や職場の構造・文化の問題を補うものとなるかもしれません。
「対立変化」は、チーム内の対立や対立全般を構造、システム、制度などのより広い文脈の中に位置づけようとするものです。そして、破壊的な対立が将来起こらないように環境を再構築する方法として、「変化」を強調しています。
例えば、チーム内でいじめや嫌がらせがあった場合、それはより広い意味での文化や構造に問題があることを示しているかもしれません。いじめを許すような競争的な文化があるのか?上司が事態に効果的に対処できていない、または対処しようとしないような経営構造になっていないか?あるいは、従業員が自分の経験について話すことを恐れていないか?などと考える必要があるでしょう。
このように、「対立変化」はより長期的な変化を必要とし、中には短期間で簡単にできるものではないものも含まれます。ですから、「対立変化」は現時点では、急性的な対立に対処したい場合や段階的縮小を目指す場合にはあまり役に立ちません。
「対立変化」が有効なのは、以下のような場合です。
- チーム内の対立を引き起こす長期的な構造的問題
- 組織構造や文化に関連したチーム内の対立
- 燃え尽き症候群、チーム結束の欠如、不公平感など、対立として現れる可能性のある問題の根底にあるもの
- 広範囲に渡る変革が必要なチーム内の対立
「対立解消」と「対立管理」:その違いとは?
チーム内の対立を処理するためのこれらの方法に関して、おそらく最大の混乱の原因は、「対立解消」と「対立管理」の違いでしょう。同じように聞こえたり、区別するのが難しいと感じる方も多いかもしれませんが、実はこれらは全く別の概念であり、チーム内の対立を処理する際にも、全く異なる効果をもたらす可能性があります。
この2つの違いの大きな側面の1つは、対立がどのように「解決」されるのか、あるいはまったく解決できないのか、ということです。「対立解消」では、たとえ一時的なものであっても、解決や終結のポイントがあるといいます。双方が「癒され」、状況が段階的に収縮したときに対立は終了します。双方は競合の終了についての合意を受け入れ、先に進むのです。
対する「対立管理」では、完全な解決策がない対立もあるとしています。たしかに、対立が攻撃的・暴力的になった場合は、その場を落ち着かせることが重要ですが、アイデアや視点をめぐる対立の場合は、本当の意味での「解決策」がないことが多いものです。このような場合、チームにできることは、双方が「自分の意見やアイデアを聞いてもらえた」と感じられるような方法を見つけることとなります。
このように「対立管理」では、アイデア自体と、「そのアイデアのために自分の地位や人格が脅かされる」と感じることで発生する対人的な対立を切り離すことができるようになります。対立がアイデアや視点に集中していれば、両者を融合させる協調的な解決策を考えやすくなり、対立を生産的に利用する方法を提案することができるのです。
最後に
ということで、チームにおける対立の対処法について、3つの主要な方法の概要を説明してきました。 ここまでは、それぞれの手法の一般的な哲学やポイント、視点について、表面をなぞったに過ぎません(練習方法や方法論については、今後のブログでご紹介します)。
チーム内の対立にどう対処するかは、対立の種類に大きく左右されます。破壊的な対立の場合は、その深刻な対立と、それを引き起こした根本的な問題にも対処することが求められます。一方、建設的な対立であれば、対立が手に負えなくならないようにコントロールしながら、チームの可能性を広げ、より大きなコラボレーションを実現するために対立を利用したいと考えるでしょう。
この違いを認識し、破壊的な衝突よりも建設的な衝突が多くなるように環境を整えるには、時間と練習が必要となります。そのために、私たちインバイトジャパンは、対立を管理し、信頼と協力関係のあるチームを作るのに役立つチームビルディング・スキルをお伝えしているのです。