対立管理:「対立」を上手く利用し、チームにとって有益なものにする方法

「対立管理」とは、対立を破壊的なものではなく、潜在的に有益なものとして捉え、チームをより成長・発展させるための方法です。

「チーム内の対立」というとネガティブなイメージがありますが、必ずしもそうではなく、むしろ対立が有益に働く場合もあるのです。対立が問題解決のアイデアや方法に関するものである場合、必ずしも明確な「解決策」や「正解」があるとは限りません。それどころか、チーム内の対立を放置しておくことが、全員の意見を聞き、自然な創造性を発揮させる最善の方法となる場合もあるのです。

「対立管理」とは、このような考え方を奨励して、対立を避けるのではなく、生産的な方向に持っていこうとする対立対処の方法です。「対立管理」は「対立解消」とは異なり、一つずつの段階を踏んでいくプロセスではありません。対立を見極め、さまざまなマネジメントスタイルを駆使して、チームにとって最善の結論を導き出すことに重きを置いています。

今回のブログ記事では「対立管理」とは何か、そしてそのさまざまなスタイルと、「対立管理」をチームで活用するためのヒントについて説明します。

「対立管理」とは?

まず「対立管理」とは何かをもう少し詳しく掘り下げてみましょう。「対立管理」は関係するチームや達成したいこと、対立そのものに依存する部分が多いため、例えば「対立解消」のように一言で定義するのは難しいものとなっています。

そこでまず、「対立管理」と「対立解消」を対比してみましょう。「対立解消」は、双方が納得できる合意や条約などを設けて対立の解決を目指すものですが、「対立管理」は、一歩引いた視点で考えます。もう少し具体的に言うと、対立に関してこのような問いかけをします。

  • チームは将来何を達成したいのか?
  • チームはこの対立を利用して、目標に向かってさらにどのように前進することができるか?
  • チームはどのようにすれば、対立の対人関係への波及を最小限に抑えられるか?

このように「対立管理」は、対立の終わりに何が起こるべきか、あるいは終わりがあるのかどうかについて、それほど具体的ではありません(時には、対立に明確な終わりがないこともありますし、それはそれで良いのです)。

特徴のひとつは、チームの未来(=目標に向けたチームの成長・発展)にフォーカスしていることです。つまり、対立を未来志向の中に位置づけようとするものと言えます。対立はチームの成長と相反するものではなく、むしろチームが共に学び、発展していく過程の一部と言う考えなのです。

「対立管理」を用いるべき状況

当然ながら、ここで「対立管理」が必ずしもすべてのケースに適用できるわけではないことを明確にしておかなければなりません。対立が特に顕著で、攻撃的、破壊的である場合、あるいは役割や仕事に関するコミュニケーションや誤解に基づいている場合、「対立解消」や「調停」の手法によって、できるだけ早く対立を解決することが最も生産的な対応となる場合もあります。

 「対立管理」は、対立がアイデアに関するものであったり、明確な解決策がない場合に効果的です。また、対立が長期にわたる場合は、アイデアを組み合わせたり、一緒に新しいものを作ったり、新しい協力の仕方を見つけることに焦点を当てることによって対立を乗り越える方法を見つけられるため、より効果的です。  

「対立管理」が最も効果を発揮するのはどのような場合かをまとめてみましょう。 

  • 長期的またはチーム全体における対立
  • アイデアや視点に基づくチーム内の対立
  • その他、明確な解決点がなく、双方が協力し続けなければならない対立
  • 対人関係の対立が仕事に波及したり、その逆を防ぎたい場合
  • 建設的な対立が安全に発生するような、協力的な環境を作りたい場合   

「対立管理」のさまざまなスタイル

先に述べたように、「対立管理」は必ずしも一つの特定のプロセスではなく、チームのタイプや対立の種類によって採用する手法が異なってきます。

とは言え、自分のチームでの対立への対処方法を整理するために使える、一般的な「対立管理」のスタイルもいくつかあります。今回は最も一般的な5つを見てみましょう。

1.  順応

この「対立管理」のスタイルのポイントは、一方の側や考えを意図的に「勝たせる」ことです。これは不公平に見えるかもしれませんが、使い方によっては実に生産的であり、チームがより重要なタスクや目標を決定するために前進することができます。

例えば、どのアイデアを実行するかで対立しているとしましょう。チームメンバー①(またはグループ①)が自分の提案に強いこだわりを持っていて、他のチームメンバーは反対ではあるもののそれほど強くはない場合、チームメンバー①のアイデアを実行させる方が良いと言う場合もあるでしょう。

このスタイルでは、「負けた」側が傷つくことがないように、チーム内にかなりの信頼関係があることが前提です。信頼関係があれば、チームメンバーはいつ引き下がり、相手のアイデアに勝たせるべきかを暗黙のうちに理解することができます。また、チームリーダーやマネージャーは、ネガティブな感情を最小限に抑え、意思決定プロセス(および将来の意思決定プロセス)における公平性、公正性、包括性を確保する点で、大きな役割を担うことになります。

2. 回避

この「対立管理」は一見悪いことのように思えるかもしれませんが、よく考えてみてください。対立に適切に対処し、破壊的なスパイラルを生み出さないために、チームは一定期間対立を回避したり、議論を別のチャンネルに切り離したりする必要があるときがあるものです。つまりこれは、皆をクールダウンさせ、ある程度の余裕を持たせるための方法となります。

例えば、マーケティング戦略について議論しているときに、議論が白熱し始めたとします。この場合、いったん議論を中断し、来週に話を持ち越す方が良い場合もあるでしょう。全員に考える時間を与え、互いに言われたことを処理することで、冷却効果が得られ、より良い精神状態で会話に戻ることができます。

あるいは、そのアイデアの議論を複数のチャンネルに分けることで、対立を回避することもできます。そのためには、議論が散らかる可能性の低い、より小さなグループやチームにその問題を議論させることが有効です。または、問題そのものを小さなセクションに分割し、それぞれを個別に処理することもできます。これらの戦略も「回避」の一種であり、ただ遠回しに言っているだけにすぎません。

言うまでもなく、「回避」は長期的な戦略としては有効ではありません。また、重要な決断をしなければならないような緊迫した状況でも、この方法はあまり効果的ではありませんし、常に適用できるわけでもありません。それでも、目の前の仕事に集中し、他の問題は緊急事態が終わってからにするなど、「回避」の戦術の中にはストレスが大きい時に有効なものがあります。

3. 競争

これもまた、気をつけなければならない管理のスタイルです。「競争」とは、特定の競争力を利用して、問題に対する最適な解決策を導き出したり、新しいアイデアを見つけたりすることを意味します。「競争」はチームメンバーがベストを尽くそうとする原動力になりえるものですが、管理されない「競争」は、チームメンバー間に不必要な敵意や排他性を生み出すなど、マイナスの影響を与える可能性があることを覚えておいてください。

「競争」は複数のアイデアを扱う場合や、まったく新しいアイデアを出す必要があり、そのために対立が発生している場合に最も効果的に使用できます。このような場合の対処法としては、チームメンバーに小さなチームに分かれてもらい、まずは新しい解決策に到達するよう試みてもらうのが良いでしょう。あるいは、チームでオープンにアイデアを討論させるのも手です。このようなアイデアに焦点を当てた「競争」は、創造的で合理的な思考を促します。また、これまでチームが考えもしなかったような新しいアイデアを呼び起こす可能性もあります。

しかし繰り返しになりますが、競争心が暴走して対人関係に影響を与えないようにするためには、チームリーダーやマネージャーが果たすべき役割は大きいのです。チームメンバーは、競争のために信頼を犠牲にしてはなりません。

4. 妥協

この対立管理スタイルでの目標は、「中道」を見つけることです。これは「対立解決」にも似ていますが、ここでは異なるアイデアや考え方の間で妥協点を見出すことを目的としています。しかし「妥協」には、対立する双方がその過程で何かを諦めることが必要です。そのため、信頼関係が不可欠であり、何が重要かを判断をする能力も求められます。

「妥協」はある意味「lose-lose」であるため、悪感情を持つ場合もあるでしょう。このプロセスでは、チームメンバーがオープンに話し、自分の考えや気持ちを話し合うよう促してください。チームメンバーが特に気にしている点があれば、その対立を今解決するのは得策ではないという判断もできるかもしれません。

私たちは皆「妥協」とは何かを暗黙のうちに知っているものであり、そのため、解決策として自動的に「妥協」に向かう傾向を持っています。「妥協」は多くの状況で有効なものともなり得ますが、より良い方法がある可能性を考え続けなければなりません。だからこそ、チームは創造的に考えるようにすべきなのです。

5. 協働 

「協働」は最も長続きする、持続可能な「対立管理」のスタイルです。「協働」では、チームメンバーではチームメンバー同士のアイデアを組み合わせます。しかし「妥協」とは異なり、必ずしも何かを諦める訳ではありません。むしろ、チームメンバーは一緒に融合するように自分たちのアイデアを再編成し、再形成するために協力するのです。

「協働」とはつまり、創造的なプロセスです。チームメンバーはこれまでの対立を乗り越えて、一緒に新しいものを創造することによって、対立に対処します。そうすることで、チームメンバーは対立を真に生産的な方法で活用することができるのです。

しかし「協働」の唯一の欠点は、時間と労力がかかることです。「協働」には適切な環境と感情的な繋がりを作るだけでなく、創造的な解決策を見つけるための時間も必要となります。

このプロセスを加速させることができるのが、定期的なチームビルディングです。それによってチームは互いに信頼し、より簡単に協力できるように訓練することができます。「協働」は創造的なプロセスの中に対立を置くことですから、信頼関係が構築されていれば、ほとんどのチームにとって最終的に目指すべき場所になるはずです。

「対立管理」を活用するためのヒント

1.  良いチーム環境を作る

良好なチーム環境は、「対立管理」のアプローチに大きな変化をもたらします。信頼関係がしっかりと築かれ、自分の感情や考えをオープンにし、心理的な安全が確保されているチームは、対立を管理し、それを創造的な目的のために活用することが容易となります。

2. すべての対立は潜在的に生産的であると考える

「対立管理」では、正しい考え方を持つことも重要です。「対立は生産的なものである」という考え方で臨めば、チームはより生産的に前進する方法を見つけることができるようになります。また、「対立はすべて悪いことで、避けるべきものだ」という考え方にとらわれることもありません。

実際、対立は時に必要なものであり、むしろ良いことになり得るのです。対立は自分では気づかなかったチームの姿を見せてくれることもあれば、対処すべき問題を指し示してくれることもあります。すべての対立が良いものや有益なものであるとは限りませんが、対立を肯定的にとらえることで、対立によってもたらされる利益に目を向けることができるようになるでしょう。  

3. 直面している対立の種類を特定する

それとともに、対立はすべて異なるものであり、万能の解決策はないことも念頭に置いておきましょう。「対立管理」ではこのことを重視し、毎回異なる方法で対立に対処することを推奨しています。そうすることで、最適な解決策を見出すことができ、新しい創造的な解決策を生み出すことができるのです。

4. 目標は常に開発と成長とする

「対立管理」の最終目標は、常にチームの成長と発展であるべきです。必ずしも対立の解決に完全に成功しなくても、失敗から学ぶことで成長できるもの。この教訓をチームで実感している限り、チームは前進し、より良くなっていくことができるのです。対立を管理するときは、常に「これでチームは拡大するのか、それとも縮小するのか?」と考えてください。

5. チームメンバー全員の声が聞こえているか確認する

「対立管理」を効果的に行うためには、プロセスを通じてチームメンバー全員の声が聞こえるようにすることが重要です。そうすれば、まずもって対立が頻発することがなくなるでしょう。チームメンバー全員が積極的にプロセスに参加することで、自分の盲点がどこにあるかがわかり、対立を生産的に管理することのメリットが広く伝わるようになります。 

チームビルディング完全
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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。