クリティカル・シンキング(批判的思考): チームがより効果的に考え、互いを信頼し、持続可能な新しいアイデアを生み出す方法

チームにおけるクリティカルシンキング(批判的思考)のスキルとは、質問をし、先見性をもって問題や可能な解決策を一緒に考えるということです。

「クリティカルシンキング」は、職場において個人が必要とするスキルとして、非常に称賛されているキーワードでもあります。クリティカルシンキングとは、簡単に言うと、情報を総合的に判断し、どこから来て、どのように応用できるかを考えて情報を分析する能力のことです。

クリティカルシンキングの最も重要な側面の1つは、「質問をすること」です。クリティカルシンキングでは、文脈と情報の出所が非常に重要とされています。情報は偏った情報や誤った情報など、さまざまなところからもたらされるものです。さらに、特定の情報をどのように利用するかによって、効果的な解決策と非効果的な解決策の違いが生じることもあります。

ここで、チームとクリティカルシンキングの繋がりが重要になります。おそらく個人では、情報源を分析し、その情報をどのような文脈で利用するかを自分で考えることができるでしょう。しかし、これには多くの知識と時間が必要です。また、それまでに受けてきた教育や専門分野によっては、ある種の情報を適切に分析するスキルを持ち合わせていない場合もあります。

このように、チームを持つということは、さまざまな意味でクリティカルシンキングに有効なのです。人数が多ければ、意見も多くなり、考え方も多様になるので、より多くの種類の情報について批判的に考えることができるようになります。

また同時に、質問をしたり、解決策を生み出したりする人も増えます。チームがお互いにオープンで効果的なコミュニケーションをとることができていれば、お互いのアイデアに対して疑問を投げかけ、問題解決のためのクリエイティブな方法を考え出すために、さまざまなところにインスピレーションを求めることが可能になります。

今回は「思考法とチーム」に関するシリーズの続編として、クリティカルシンキングを取り上げ、この思考法チームビルディングがいかに密接に関係しているかを説明します。また、あなたのチームがクリティカルシンキングのスキルを向上させるための方法もいくつかご紹介しますので、是非参考にしてみてください。

では、「知力の兜」をかぶって早速始めましょう!

クリティカル・シンキング(批判的思考)とは?

まず、クリティカルシンキングとは何かについてお答えします。クリティカルシンキングとは何かということに関して、明確なコンセンサスがあるわけではないので、これは実は案外難しいことなのです。多くの人は、クリティカルシンキングが「情報の統合と分析、そして推論に関係している」ことに同意するでしょう。

しかし、ここでいうクリティカルシンキングとは、最初の考えやアイデアの後に来るステップのことを指します。つまり、新しいアイデアを生み出すことではなく、その新しいアイデアをどのように認識し、評価するかということなのです。

もちろんそのためには、自分のところに来るアイデアや情報に対して「批判的」であることが必要です。これは社会的な意味での「批判的」であり、無意味に批判したり、懐疑的になったりすることではありません。むしろここで言う「批判的」とは、判断力、論理力、理性を駆使して、ある考えや主張がどこから来て、どういう文脈で成り立っているのかを多面的に分析することを意味します。

したがって、クリティカルシンキングは簡単なものではなく、必ずしも「自然」な思考法でもありません。私たちは「特定の人や信頼したい情報源からの情報を受け入れたい」と思う傾向があります。これは私たちが人間関係を構築することで共同体やチームを作る社会的存在としてプログラムされているためです。要するに、誰かのアイデアや意見を無批判に受け入れることは、その信頼を示すことであり、自分がそのコミュニティやチームの一員であることを示すことでもあるのです。

しかし、クリティカルシンキングでは、情報を客観的かつ合理的に見ることが要求されます。つまり、ある考えや情報が事実や論理に十分に根ざしていない場合、あるいは問題の解決に有効でない場合、それが誰のものであっても、否定することができるということなのです。

チームにおけるクリティカルシンキング:「批判」と「信頼」の関係

とは言え、実際のところ、チームにおけるクリティカルシンキングは、信頼関係の問題を崩壊させるようなものではありません。むしろ、多くの信頼関係を必要とし、さらに大きな信頼の絆を築くことに繋がるのです。

なぜなら、意見や考えをオープンに共有するには、多くの信頼が必要だからです。チーム内に真の信頼の基盤があれば、メンバーは互いのアイデアを批判し、その批判が個人的に受け取られることを恐れることなく、うまくいくかどうか正直に話すことができます。

逆に、信頼関係がないとき、あるいは信頼関係が不確かなときほど、人は自分の考え、特にチームの上司やメンターの考えを批判することを恐れます。しかしその結果、不健康で非効率的なチームが生まれ、誰もが自分の本当の意見を隠そうとし、悪いアイデアを議論も考えもせずに受け入れてしまうということが起きやすいのです。 

このような点からも、チームにはよりクリティカルに考えるべき理由があるのです。とはいえ、信頼関係がない中で批判的思考が行われるチームも理想的とは言えません。たとえ合理的な根拠に基づいて行われたとしても、自分のアイデアやコンセプトが批判されたときに誰も怒らないと考えるのは非現実的でしょう。なぜなら、私たちは皆、プライドや羨望といった感情や、成功を収めたいという願望を持ってるものだからです。

だからこそ、信頼とクリティカルシンキングは密接に関連し合うことが求められます。クリティカルシンキングのスキルが発揮されるとき、チームメンバーは自分の感情が無視されていないことを感情レベルで知ることができるように、チームは信頼と理解の強固な基盤を構築する必要があるのです。

そうすることで、チームメンバーが自分の感情的な欲求が満たされることを理解して安心するようになると、自分の批評だけでなく、(他のメンバーに批判されるかもしれないとわかっていても)アイデアを共有しようという気持ちになり、良い循環が生まれるでしょう。

そのため、信頼関係やコミュニケーションの向上に努めながら、チームで問題を解決する思考力に挑戦するチームビルディング・アクティビティが、クリティカルシンキングの強化に最も適していると言えます。 

チームにおけるクリティカルシンキング育成のためのモデル

クリティカルシンキングはチームによってはなかなか理解できないかもしれません。特に、実際にアイデアを選別し、分析するためにはもう少し時間がかかるでしょう。さらに、新しいメンバーや若いメンバーは、クリティカルシンキングになじみがなく、実際に実践する勇気もないという人も多いかもしれません。

そこでご紹介したいのが、マット・プラマー氏が開発した4つのステップモデルであり、これはチームにおけるクリティカルシンキングのステップを説明するのに役立ってくれるでしょう。これはPDCA(Plan-Do-Step-Act)モデルに似ていますが、問題やアイデアを考え、分析することに重点が置かれている点が異なります。

第一段階:実行する( Execute)

実は、このモデルでは「実行する」が最初のステップとなっています。その理由は、先ほども言ったように、クリティカルシンキングは「アイデアや情報を分析するプロセス」だからです。ですから、始めるには何かきっかけが必要なのです。

この段階では、チームは単に報告書を完成させたり、新製品を発売したり、会議で決定を下すといった通常のタスクを達成しているに過ぎません。しかし、この段階でも質問を投げかけ、批判的に考えることができます。どのようにタスクを達成したのか。どのようにタスクを達成したのか、全員が参加したのか。何がうまくいったのか。何がうまくいかなかったのか。などといった質問が考えられます。

第二段階:統合する(Synthesize)

これである程度の情報が揃ったので、分析を始めることができます。例えば、マーケティングキャンペーンの結果を見ることもできますし、新しい提案の効果を見ることもできるでしょう。どの情報が有用で、どの情報が有用でないかを理解することが、統合の段階の一部となります。このプロジェクトにとって価値のある情報源は何か、価値のない情報源は何か、を見極めていくのです。

より大きな目標は、新しいアイデアや行動を分析することですが、クリティカルシンキングは一般的な情報の使い方の実践方法でもあり、このステップはその鍵を握っています。

第三段階:提言する(Recommend)

収集した情報や調査をふるいにかけたら、次に何をすべきかについて提案や提言を始めることができるようになります。例えば、新しい提案が期待通りの効果を上げていないことが、データから明らかになったとしましょう。さて、どうしますか?手を加えるか、廃止するか。それとも、将来的にうまくいくかもしれないという期待を込めて、このままにしておくべきでしょうか。

クリティカルシンキングにおいて「提言」が重要なのは、批判から新しいアイデアを生み出すことができるからです。ここでの目標は、単に悪いか良いかを見分けることではなく、最初のアイデアや情報の断片を越えて、それについて何をすべきかを決めることにあります。

提言の中で選択肢を重み付けすることも重要です。どのアイデアも一義的には良くも悪くもなく、それぞれにプラスとマイナスがあることを理解することも、チームがよりコラボレーションを促進するために役立つクリティカルシンキングの一面でしょう。

第四段階:形成する(Generate)

次は、これらの提言の中から、新しいアイデアを形成していく段階です。このアイデアは前回のアイデアをベースに改良を加えたものかもしれませんし、まったく異なる方向性を持つ新しいアイデアの場合もあるでしょう。重要なのは、前回のアイデアを分析した情報に基づいて、新しいアイデアやコンセプトを作り上げたということです。あなたのチームは成長し、発展し、前進しているのです。

もちろん、このような新しいアイデアの創出は、アイデアや批判をぶつけ合う仲間がいるチームではより容易になります。チームでの全体的なアイデアの共有は、新しいアイデアを生み出すだけでなく、どのアイデアが実際に機能するかを決定する能力も高めるのです。

クリティカルシンキングスキルを強化するための方法

1. より多くの、より良い質問をする

前述の通り、「質問すること」はクリティカルシンキングの大きな基礎となるものです。このクリティカルシンキングのスキルをチームに浸透させるには、たくさん質問をすること、そしてチームが質問をしやすくすることが大切です。そして、「質問の質」がチームの効果を左右することもあるので、提案の後や会議のたびに良い質問をする文化を根付かせましょう。

2. 傾聴する 

もちろん、大切なのは質問することだけではありません。相手の話を聞き、その答えに耳を傾けることも必要です。クリティカルシンキングでは、多くの情報が他人やその発言を通じてもたらされるため、アクティブリスニングが大きな役割を果たします。チームが批評によって感情を揺さぶるときにも耳を傾け、そして誰もが自分の声に耳を傾けていると感じられるような文化を作りましょう。

3. 仮説を立てつつ、それに執着しないようにする

これは基本的に、想像力を働かせるということを意味しています。仮説を立て、仮定的な状況で遊ぶ。「もし…だったら…」という質問をすることで、チームメンバーの創造力を引き出します。そうすることで、批判的な思考に繋がり、新しいアイデアを実行可能な解決策に発展させることができるのです。ただし、遊び心を持って想像力を働かせるようにしましょう。仮説に執着するあまり、それを批判したり、うまくいかないと判断して手放したりしないように注意してください。

4. 先見性を持つ

先見性を持つということは、自分のアイデアや考えが実際に与える影響について考えるということです。あなたのチーム、クライアント、あるいは顧客にどのような影響を与えるのか?あなたの会社や事業の将来にどのような影響を与えるのか?と考えてみましょう。

先見性はアイデアに根拠を与え、より批判的に考えさせるのに役立ちます。特に、新しいアイデアや成果を分析し始めたとき、現実世界への影響を多角的に考えることで、説得力に欠ける部分や、もっと議論や分析が必要な部分を除外することができます。

5. チームビルディング

最後に、インバイトジャパンのようなチームビルディングのアクティビティは、チームをより批判的に考えるよう訓練することができます。決断と実行が必要な課題を与えることで、チームは今回ご紹介したような考え方を実践することができるのです。さらに、チームビルディングのアクティビティは、チームの信頼関係を構築し、アイデアや意見を共有し、批判を受け入れることができるチームを作ることを助けます。

チームビルディング完全
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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。