意思決定バイアス:チームでの意思決定に影響を与える認知バイアスと、それを回避する方法

目次

チームとして意思決定を行う場合、「意思決定バイアス」は意思決定に至る思考プロセスに深刻な影響を与えることにより、意思決定自体の質も低下させます。そのため、チームはこのような認知バイアスを意識し、管理する方法を学ぶ必要があるのです。今回ブログ記事では、「意思決定バイアス」とは何か、そしてその影響を抑える方法をご紹介します。

私たちが何かを決断するとき、頭の中では何が起こっているのでしょうか。これは興味深い質問であり、そう簡単に答えられるものではありません。実は、想像以上に色々なことが起こっているんですよ。さまざまな理解や知識、情報を組み合わせる、自分の経験や「直感」、人生のさまざまな局面で得た事実を使用する…そして、特にそれが新しいことに関する決断であれば、想像力を働かせて、さまざまな選択肢の結果を知覚しようともしています。  

私たちの意思決定には、ある種の思考が、時には有益でない形で影響を及ぼします。「認知バイアス」というものを聞いたことがある人や、知っているという人もいるでしょう。認知バイアスには多くの理論があり、私たちの認知思考能力のあらゆる部分に影響を及ぼすものでもあります。  

しかしここでは、特に意思決定に関連するもの、そして意思決定に最も影響を与えるものに焦点を当てていきましょう。今回取り上げる意思決定バイアスは、これから解説していくように、状況を中立的または客観的に判断する能力に影響を与えるため、意思決定を行う際に意識しておくことが重要です。

また、こうした意思決定バイアスを回避するために使えるツールもご紹介します。もちろん、特に短時間で考え方を完全に変えることはできないでしょう。しかし、これらのツールを使うことで、自分の意思決定についてゆっくり考え、より意図的に行動することができるようになり、意思決定バイアスの一部を捉えることができるようになります。

認知バイアスとは?

まず、「認知バイアス」とはいったい何なのか、簡単に説明しておきましょう。認知バイアスとは、脳が何度も繰り返してしまう「系統的なエラー」と定義することができます。これは通常、脳が膨大な量の情報を処理する必要があるために起こります。そのため、時間をかけてショートカット(ヒューリスティック:発見的手法)や、情報を簡略化する方法を開発し、物事をより簡単に処理できるようにするのです。

例えば、「機能的固定性」というバイアスは、特定の道具を特定の作業や働き方だけに関連付けさせます。つまり、ハンマーは、頭の中で釘を打つこととしか関連付けられなくなるのです。もちろんこれは、ハンマーは通常釘を打つものだと脳が経験的に知っているから起こることです。しかし、これによって、ハンマーの他の用途(釘を抜くなど)や、同じ用途に使える他の道具を無視してしまうことがあります。

認知バイアスは習慣や経験に関係するものですが、それだけでなく、感情にも関係します。私たちの脳は自分が良い気分になりたいことを知っているため、認知バイアスは自分自身を幸せで満足な気分にさせようとする方法でもあるのです。

その一例が「楽観バイアス」で、「悪いことは起こりそうにない」と思い込んでしまうというものです(例:冬の間、自分はインフルエンザにかからないから予防注射は必要ない)。これにより、良い気分や無敵感、もしかしたら優越感が生まれることもあるでしょう。しかし、このように考えることは、特に危険な状況やリスクの高い状況では、必ずしも私たちにとって有益ではありません。   

楽観バイアスがもたらすもう一つの興味深い点は、認知バイアスは必ずしも悪いものではない、ということです。楽観主義的な考え方は、時として、そうでなければ取らないようなリスクを取るといった影響を与えることもありますし、実際に気にする必要のない些細な問題を気にしないよう導いてくれることもあります。

しかし、例え何かしらのメリットがあるとしても、認知バイアスは注意深く監視する必要があるでしょう。事実や情報をできるだけ中立的に処理することが求められる私たちの意思決定能力にも大きな影響を与え、長期的にはチームにとって最善とはいえない道を歩むことに繋がりかねないからです。

主な意思決定バイアス

以下は、最も広範で影響力のある意思決定バイアスのリストです。これらの意思決定バイアスを理解することで、それを管理する方法を意識し、意思決定プロセスをより効果的にすることができます。

1. 確証バイアス

これは現在最もよく知られている認知バイアスの1つです。この意思決定バイアスは、自分のこれまでの信念を裏付けるような証拠に、私たちはより注意を払ってしまう傾向があることを意味します。言うまでもなく、これは情報収集の範囲を狭めてしまうため、意思決定に悪影響を及ぼします。また、自分の信念に合致するアイデアだけに思考を限定してしまい、自分自身やチームの信念を覆すような新しいアイデアに気づかなくなってしまうこともあります。

2. 利用可能性ヒューリスティック

この意思決定バイアスは、容易に思いつくことに基づいて意思決定するように私たちを誘導するものです。例として、広告が挙げられます。コカ・コーラのポスターやコマーシャルをあちこちで見かけたら、次に自動販売機に行ったとき、人は利用可能性ヒューリスティックによって、コカ・コーラを選びたくなってしまうのです。この場合も、思考の幅が狭くなり、意思決定で利用できる選択肢が狭まります。

3. 生存者バイアス

生存者バイアスとは、成功や失敗という大きな文脈が存在する場合にのみ、成功体験に注目するように私たちに仕向けるものです。例えば、ある企業が何かを成功させると、失敗した多くの企業のことを考慮せずに、その成功企業の例に倣ってしまうということが考えられます。このような意思決定バイアスは、大局を曇らせ、「どんな困難があっても自分も成功できる」かのように思わせてきますが、それは必ずしも真実ではありません。 

4. アンカリング・バイアス

この意思決定バイアスでは、最初に触れた情報が私たちの期待や判断を「固定化」してしまうという傾向があります。また、価格戦略においては、低価格、中価格、高価格の3つの価格を提示することがよくあります。中間の価格は私たちの適正価格に対する判断を固定化し、たとえそれが過大評価であったとしても、「他の2つの価格と比較すれば妥当である」と考えさせやすくなります。このように、アンカリング・バイアスは私たちの第一印象を左右するものであり、必ずしも正しいものとは言えないのです。

5. ハロー効果

もう一つ、第一印象に基づく意思決定バイアスとして、ハロー効果というものもあります。このバイアスは、過去に経験したことが真実であるかどうかにかかわらず、誰かまたは何かが良いものであると信じ続けてしまうものです。これは、悪いことをした有名人などによく見られます。長い間彼らを応援してきた熱烈なファンの多くは、例え不利な証拠があったとしても、彼らがそのような行為をすることを信じることができないのです。この効果はチーム内の人間関係、特にチームメンバーの雇用や解雇に影響することは明らかですが、同様に企画やアイデアにも応用できます。

6. イケア効果

イケアは購入した家具をすべて自分で組み立てるという考え方の上に成り立つ企業です。この意思決定バイアスは、自分が参加したり働いたりした活動やプロジェクトにより高い価値を見出すという形で私たちに影響を与えています。自ら関わっているが故に、他のプロジェクトより多くの経験を持っているため、これは当然のこととも言えるでしょう。しかし、特にチームでどのプロジェクトを優先するかを決める際には、一歩下がって、他のプロジェクトも同等かそれ以上に重要である可能性を認めることが大切なのです。

7. 計画錯誤

計画錯誤は、私たちが仕事やプロジェクトにかかる時間を正確に測ることができないことと関係しています。実際、私たちは短期的にどれくらいの時間がかかるかを過小評価し、長期的にどれくらいの時間がかかるかを過大評価する傾向があります。そのため、自分の能力を超える仕事を引き受けたり、自分には無理だと思うプロジェクトを無視したりすることがあるのです。このように、計画錯誤は意思決定において非常によく見られる偏りです。 

8. サンクコスト(埋没費用)バイアス

サンクコスト・バイアスは非常に一般的な意思決定バイアスであり、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、多くの時間やエネルギーを費やしてきた仕事やプロジェクトは、たとえそれを中止したり、他のことに切り替えたりした方がよい場合でも継続してしまう傾向があるというものです。ですから、ある道を進むかどうかを決めるときには、状況を客観的に見て、費用と効果を比較検討する必要があります。  

9. プログレス・バイアス

プログレス・バイアスも、継続しているタスクやプロジェクトに関係したものです。この意思決定バイアスでは、プロジェクト全体がうまくいっていない可能性があっても、そのプロジェクトのポジティブなメリットだけに目を向けたり、進んでいる特定の部分に注目したりする傾向があります。これは、状況を過度にポジティブに捉えてしまうこととよく似ているでしょう。繰り返しになりますが、実際に何が達成されているのか、プロジェクトを継続すべきかどうかを見極めるためには、全体的で正直な視点を持つことが大切なのです。

10. バンドワゴン効果

このリストで最後にご紹介する意思決定バイアスは、チームにとって特に重要なものです。バンドワゴン効果とは、多くの人が信じているから信じる、あるいは他の人が同じことをしているからする、という傾向を指します。チーム内で合意や結束を求める傾向は有益な側面もありますが、コミュニケーションと心理的安全性の文化は、バンドワゴン効果のいくつかを打ち消すことが可能です。

意思決定バイアスを管理する方法

先ほども述べたように、認知・判断の偏りは自然なものであり、完全に取り除くことは困難です。また、短期間で変えることも非常に難しいでしょう。しかし、だからといってその影響を最小限に抑えるためにできることは何もないというわけではありません。

自分の考え方を完全に変えようとするのではなく、意思決定バイアスを「管理」するという考え方を取り入れてみましょう。つまり、より意図的にゆっくりと意思決定を行い、意思決定バイアスが入り込んでいることに気づくようにするのです。

チームには、表向きはあなたを助け、サポートするために存在する他の人たちがいるという利点があります。ですから、チーム内で互いが持つバイアスに気づき、そこから離れるよう助け合い、より協力的で思慮深い意思決定ができるようなチーム環境に作り変えるよう努力しましょう。

さらに、意思決定バイアスを管理するために、チームが採用できる戦術や戦略もいくつかご紹介しておきます。

1. 時間を掛けて意思決定を行う

勿論、迅速な意思決定が必要な場合もあります。しかし、もっとゆっくりと、時間を掛けて意思決定するようにすれば、単純かつ簡単に問題に対処するために発達してきてしまった意思決定バイアスにチームが陥るのを避けることができるでしょう。

2. 最初から枠にはめないて判断しないようにする

私たちは、最初から自分と相手、良いことと悪いこと、正しい方法と悪い方法というように、問題を枠にはめようとする傾向があります。これを避け、できるだけ中立的に問題を見るようにしましょう。また、複数の枠を使って判断することで、新しいアイデアに対してできるだけオープンな思考ができるようになります。

3. 謙虚でいる

お気づきかもしれませんが、このリストにある意思決定バイアスの多くは、自分自身や自分の判断に自信を持ちすぎているときに起こります。謙虚な姿勢でいることは、これを打ち消すのに有効な手段です。また、自分自身やチーム、あるいは現実の理想像に基づくのではなく、現実の世界に根ざした判断をすることができるようにもなります。

4. 近道を探さない

決断は時に困難で、多くの時間と忍耐を必要とするものです。しかし、近道を探すと決断について現実的に考える能力が削がれてしまいます。結局のところ、近道はそもそも私たちが認知バイアスを発達させた原因の一つなのです。

5. チームの意思決定プロセスを信頼する

前回のブログでは、意思決定プロセスについてお話しました。優れた意思決定プロセスは、チームがタスクを継続し、オープンで協力的、かつ信頼できる環境で意思決定を行うことを可能にし、チームが認知バイアスの罠に陥ることを回避するのに役立ちます。

6. フィードバックと批判に耳を傾ける

リアルで正直なフィードバックや批判は、個人でもチーム全体でも、意思決定バイアスを指摘するのに役立ちます。つまり、フィードバックはチームの発展を妨げているバイアスに気づくために非常に重要なのです。また、チーム内でできるだけ多くの人の意見を聞き、異なる視点から学ぶようにしましょう。

7. 変化と成長を厭わない

意思決定バイアスの多くは、私たちが現状を受け入れているかどうかにも起因しています。私たちは「怖い」とか「難しい」という理由でやり方を変えることを拒み、自分の考え方や行動を正当化するために認知バイアスを発達させてしまうことが多々あります。このような偏見を避けるためには、変化や成長を受け入れ、目標に向かって進んで努力することが必要です。一晩で変わる必要はありませんが、自分の考え方を変える努力をすることが、意思決定バイアスがチームの生産性に及ぼす影響を抑えるための一歩となるでしょう。