デザイン思考:デザイン思考とは何か、この手法によってチームはより創造的かつ革新的に考えることができるようになるのか。

デザイン思考は、新しいアイデアを生み出すプロセスに対する新しいアプローチであり、あらゆるチームが学ぶことができるものです。

これまで、さまざまな思考法に関するこのブログシリーズで、複数のタイプの思考法と、職場で使用される思考スタイルの具体的なモデルについて見てきました。いずれも、チームメンバーの考え方の多様性を意識することが、全員のスキルやアイデアを適切に活用できる、より優れた創造的なチームを生み出すことに繋がるということに焦点を当てた内容でした。

続く今回は、具体的な「思考のフレームワーク」を見て、それがどのようにチームの役に立つかを考えてみたいと思います。このようなフレームワークは、多くの人の思考方法とは異なる特定の思考方法にズームインし、チームが恩恵を受けることができる有用なアイデアと実践に光を当てています。

この中には、これまでにも少し見てきた、批判的思考や水平思考のように一般的によく知られているタイプの思考も含まれます。しかしそれと同時に、システム思考のように、現在の複雑な世の中に対応するために、特にチームのために開発された新しい概念のフレームワークもありますので参考にしてみてください。

まずは比較的新しく、現在流行の思考法である「デザイン思考」について掘り下げていきましょう。

デザイン思考とは?

デザイン思考は、技術的には特定の思考法(プロセスとも言える)であり、チームがより創造的に、既成概念にとらわれずに考えることを意図しています。デザイン思考は新しいプロセス、アイデア、デザインなど、最終的に何か新しいものを生み出すことを目的とした、非常に創造的なプロセスです。

この思考法のステップでは、チームは質問をし、仮定を疑い、調査し、実験し、最善の道を見つけるためにできるだけ多くのアイデアをブレインストーミングすることになります。

効果的なチームのための有名なフレームワークと同様に、デザイン思考もその時代の産物であると言えます。例えば「PDCAサイクル」は1950年代の製造方法に基づいて開発されたものであり、「ベルビンのチームロールモデル」は大企業の成長に触発されたもの、そして「リーンシックスシグマ」は1990年代から2000年代初頭のリーンサプライチェーンから派生したものです。

デザイン思考は、UX(ユーザー体験)デザインの考え方を基本としています。UXデザインは、スマートフォンアプリをはじめとするテクノロジーやオンラインインターフェースの発展により、ますます重要性を増しているものです。スマートフォンのアプリをはじめ、オンライン上の複雑なインタラクションやトランザクションを、お客様が簡単に操作できることが非常に重要であり、そのために優れた「ユーザー体験」をデザインすることが重要であるという考え方です。

デザイン思考は何が違うのか?

では、デザイン思考で何が面白いかというと、「聞くこと」と「理解すること」が含まれることです。UXデザイナーは、顧客を理解し、彼らのニーズに耳を傾ける必要があります。つまり、共感することが必要なのです。

UXデザインは常に型にはまらず、より簡単でスムーズなデザインの可能性を考え出す必要があるため、質問をすることと仮定に挑戦することに重点を置いている点が、デザイン思考のもう一つの側面であると言えます。他のチームビルディングのモデルでも、質問をして新しいアイデアを出すことの重要性は認められていますが、デザイン思考ほど明確には強調されていません。

デザイン思考には、「ウィキッドプロブレム(Wicked Problem)」という言葉もあります。デザイン思考では、課題の難しさ、問題やその原因の複雑さに注目するのではなく、こうしたウィキッドプロブレムを、人間中心の特定のニーズを解決しようとする問題ステートメントとして捉え直すことを提案しています。つまり、問題を解決不可能なものとして留めるのではなく、それに答えるための目標や問いを作るのです。

最後に、実験を繰り返すことに対してオープンであることも新鮮な点でしょう。確かに、他のチームビルディングのモデルは反復的で、チームがプロセスを繰り返し、新しいことに挑戦することを期待しています。しかし、デザイン思考では実験をブレインストーミングのプロセスとリンクさせ、たとえうまくいかなくても、できるだけ多くのアイデアを実験するようチームに促すことで、さらに一歩進んだ実験を行います。この点で、デザイン思考はチームビルディングと非常によく似ていると言えます。

デザイン思考がチームやチームビルディングに特に有効なのは、これら3つの特徴、すなわち「共感」「思い込みへの挑戦」「実験」があるからです。デザイン思考を内側に向けることで、チームは互いや個人のニーズをよりよく理解する方法を見つけることができます。また、コミュニケーション(対話)やブレーンストーミングを通じて、より良い、より創造的なアイデアを生み出すよう、チームを後押しすることができるのです。 

デザイン思考の5つのステージ 

では、実際にデザイン思考モデルで、チームが何をすべきなのかを見てみましょう。デザイン思考のフレームワークには、5つのステージがあります。「共感」「定義」「発想」「プロトタイプ」「テスト」です。

しかし、これらの段階は必ずしも順を追って行う必要はないことを指摘しておきます。チームが取り組んでいるプロジェクトや取っている実験に応じて、これらのステージを自由に行き来することができるということです。

このように、デザイン思考モデルのフリーフロー性は、チームが既成概念にとらわれず考えること、そして必ずしも「明白な道」を辿らないことの重要性を強調しているのです。では、各ステージを説明するために、デザイン思考を次のような順序で見てみましょう。

1. 共感する (調査する)

共感する段階では、まだ問題が定義されていなくても、チームは情報を集め、周囲の人々がどのように考え、感じているかを理解しようとします。基本的にはリサーチと同じですが、ちょっとした工夫が必要です。データや数字に目を通すだけでなく、クライアントや顧客、他のチームメンバーの声にも耳を傾ける必要があります。

これは重要なステップで、自分が問題だと思うことを積極的に探すというよりも、アンテナを高くして「同調」することが大切です。あなたのチームはその場の空気を読んで、これから起こるかもしれないことを察知しようとしているのです。ですから、何よりも人の話を聞き、人を理解することが大切です(先ほどお話した感情的知性の活用)。

2. 定義する

共感し、周りの人がどう感じているか、どう考えているかを吸収して、初めてチームが取り組むべき問題を実際に定義し始めることができるようになります(ただし、いつでも「共感」の段階に戻ることは可能ですし、そうすべきで時も大いにあるでしょう)。

前述したように、問題定義は、問題を明文化し、そして答えられる質問、または達成できる目標を作るプロブレム・ステートメント(解決のために今すぐ対応することが必要な課題や問題を提示した文書)を作成するという手順で行います。プロブレム・ステートメントでは、人間中心、行動中心という視点を使うことで、共有された現実の基盤を維持し、目標が抽象的になりすぎないようにしましょう。

例えば、会議中にオープンなコミュニケーションをとるのが苦手なチームであれば「より多くの人が意見を言い合えるような職場環境づくりが必要である」というプロブレム・ステートメントを設定するとしましょう。そこから、「どうすれば、よりオープンに共有できる環境をつくれるか」という質問に繋がります。そうすることで、次の段階である「発想」への道が開けるのです。

3. 発想する

この段階では、新しいアイデアの発想に取りかかります。「アイデア出し」とも言えるでしょう。デザイン理論では、最も創造的なプロセスのひとつであるブレインストーミングによって、この作業を行います。ブレインストーミングは多くの異なるアイデアを考え、できるだけ多くの関連性を持たせることであり、通常はチームで行います。

デザイン思考では、「発想(アイデア出し)」のプロセスの中で、「創発」と「明確化」という2つのコンセプトが重要視されます。創発とは、ブレーンストーミングでの同僚との会話や、言葉の掛け合いによる連想など、アイデアが形成される際の対話のことです。互いの思考を積み重ねることとも言えるでしょう。

そして、明確化とは質問を投げかけ、仮説や前提に挑戦することを意味します。これはブレインストーミングセッションのもう一つの方法であり、チームメンバーが異なる考え方をするように、的を絞った質問を投げかけることによって行うことができます。また、明確化は先に定義した問題を解決するために、具体的な方法を考え始める方法としても有効です。

4. プロトタイプを作る

このフェーズでは、発想(アイデア出し)のフェーズで出てきたアイデアを、「プロトタイプ」として成形します。つまり、どのようなアイデアが実行可能かを確認し、そのアウトラインや実装のためのモデル作りを行うのです。

この段階では、チームはどのようなアイデアが問題に対する最良の解決策であるかを確認する作業に取り組みます。複数のアイデアを選んでプロトタイプを作成することもできますが、すべてのアイデアをテストするには時間とエネルギーが限られている可能性があることを覚えておきましょう。また、いつでもブレインストーミングの段階に戻ったり、新しいプロトタイプも探すことも可能です。

デザイン思考では、プロトタイピングは荒削りであったり、断片的なものであるべきとされています。新しいアイデアを実現するためには、まずそれを体験してもらい、どんなものか想像してもらうことが重要だからです。これを「プレ・エクスペリエンス」と呼びます。たとえプロトタイプが完成していなくても、テスト結果をもとに簡単に作り直すことができるでしょう。 

5. テストする

デザイン思考の「最後の」段階では、チームはプロトタイプやモデル化したアイデアを取り出してテストします。これは実験段階とも呼ばれていますが、なぜこの言葉を使うことが重要なのかというと、ここには本当の意味での「失敗」が存在しないからです。たとえプロトタイプが失敗したとしても、何がうまくいき、何がうまくいかないのかを学び、その結果、他のアイデアを試すことに繋がります。

テスト段階と関連しているのが、「行動で学ぶ」というコンセプトです。基本的に、アイデアは現実の世界で試してみて、初めてそこから学ぶことができるもの。そうやって成長し、強くなっていくのです。また、別の段階に戻り、より多くの知識と理解を得て、いつでも再スタートすることができます。つまり、失敗がないのは、より良いアイデアを開発するプロセスだけなのです。

最後に

以上、デザイン思考の概要について解説しました。デザイン思考については非常に多くのことが語られていますので、今後のブログでさらに掘り下げていく予定です。しかし現段階で既に、デザイン思考とチームビルディング(私たちインバイトジャパンが行っているようなもの)が非常によく似ていることは明らかでしょう。デザイン思考はチームビルディングと同様に、創造性、既成概念にとらわれない思考、質問、思い込みへの挑戦、他者への共感、そして失敗を恐れないことに重点を置いています。

デザイン思考は、新しい方法のブレインストーミングやチームの創造性を刺激するためだけでなく、多くのチームが導入を検討すべきものであると言えるでしょう。たとえあなたのチームが創造的な業務に携わっていなかったとしても、紹介されている多くのアイデアから恩恵を受けることができます。デザイン思考は、実用的で実行可能なステップを通じて、チームがこれを達成することを助けるという利点があるのです。

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