チームにおける感情的知性:より共感的で成功しやすいチームを作るための価値ある教訓

このブログではこれまで、感情的知性(EIまたはEQとも呼ばれる)について、個人に焦点を当て、感情的知性を私生活やチーム内で活用することで、より感情的に気づき、生産的になることができるということを述べてきました。

そしてここからは視野を広げて、チームにおける感情的知性の話をしていきましょう。チーム環境において感情的知性はどのように考えられているのか、また、感情的知性の高いチームを作るにはどのような仕組みが必要なのかについて解説していきます。

このテーマに関する文献でよく強調されているのは、「規範」について。つまり、個人や組織によって一貫して強化される習慣を確立することの重要性です。チームについて話しているのですから、このような文化的・構造的規範が、感情的知性を高めるために重要であることを心に留めておきましょう。

なぜチームにおける感情的知性が重要なのか?

しかしその前に、なぜチームにおける感情的知性がそんなに重要なのかを説明しておきます。良いチームとは何か、良いチーム環境とは何かを考えるとき、私たちが思いつく言葉の多くは、信頼、モチベーション、充実感、グループのアイデンティティ、共に成功したいという気持ちなど、「感情」に基づくものでしょう。

人々が「共に成長し、達成したい」と願うような、健全で生産的なチームを作るためには、そのチームの感情環境に注意を払う必要があります。一般的な感情的知性と同様に、チーム内の感情を意識することは、より多くの共感と信頼につながり、その結果、チームはその感情を生産的な目的のために活用することができるようになるのです。

実際、最近の多くの研究から、感情的に優れたチームは生産的で協力的な議論を行い、対立を解消して対人関係に波及するのを防ぐのが上手く、全体として良い業績を上げていることが分かっているようです。

そして、チームにおける感情的知性は、より共感的で理解力のある職場文化だけでなく、より協力的で熱心な職場文化の基礎を築き上げるものです。さらに、感情的知性が高いチームでは対立が少ないため、より良い議論、新しいアイデア、創造性を発揮するスペースが生まれます。

したがって、効果的で生産性の高いチームを目指すのであれば、感情的知性にもっと注意を払うべきであることは明らかです。しかし、チームにおける感情的知性の本当の意味とは何でしょうか。

チームにおける感情的知性の中核となる要素

以前のブログ記事で、感情的知性の概念をご紹介した際に、それを構成する4つの主要な要素についてお話しました。

  1. 自分自身の感情への気づき(自己認識)
  2. 自分自身の感情への影響(セルフマネジメント)
  3. 他人の感情への気づき(社会的認識)
  4. 他人の感情への影響(リレーションシップ・マネジメント)

感情的知性が外に向き、気づきと影響が繰り返されるという同じパターンが、チームにおける感情的な知性にも存在する…というわけです。

個人の感情的知性が「自分」と「他人」の2層であるのに対して、感情的知性は3層に分れています。すなわち、チームメンバー個人の感情、チーム全体の感情(一般的に言う「ムード(雰囲気)」)、そして他のチームやグループの感情(すなわち「越境的な関係」)です。

1. チームメンバー個々の感情に気付く:理解する 

チームにおける感情的知性の確立は、チームメンバーの感情に気づき、それを認識することから始まります。チームメンバーの波長が合わないと、他のメンバーにも影響を与え、時には全員のテンションを下げてしまうこともあるでしょう。では、調子の悪い人を見かけたら、どうしたらいいのでしょうか?手を差し伸べて理解しようとする?それとも、その気持ちを怒ったり、無視したりするでしょうか?

そんな時は、まずはシンプルに周りの人に気づいてあげることです。そのためには、チェックインや長めのディスカッション、1対1のチャットなど、お互いが気づき、メンバーそれぞれの気持ちを察することができる場を増やすことが一番です。

この意識は、判断や批判のために行うのではなく、常に理解するところから始める必要があります。しかし先に見たように、仕事はポジティブなものもネガティブなものも含めて感情と密接に関係しています。ですから、相手を非難するのではなく、なぜそのように感じるのかを理解することが、感情やその使い方についてより生産的な会話をすることにつながります。

2. チームメンバーの個々の感情に影響を与える:対立を管理する

チームにおける感情的知性には、個人の感情に影響を与えることも含まれます。「影響を与える」というのは、もちろん良い意味で影響を与えるということです。「調整する」「管理する」とも言えますが、「同僚の感情」という文脈では奇妙に感じられることでしょう。基本的には、チームメンバーの気持ちにポジティブな影響を与える術を学ぶということだと思っておいてください。

メンバーの気持ちを理解した上で、その気持ちに影響を与え、形にしていくことで、問題の真相に迫ることができます。そのための方法が、オープンで管理された「対立」です。

管理された対立とは、問題がエスカレートしたり、対人関係に波及したりしないように対処することです。ある問題を解決する最善の方法について、2人のメンバーが議論している場合、2人は自分の考えに固執するあまり、自分の考えに対する批判を自分自身に対する批判として受け止めてしまう可能性があります。このような場合、管理された対立アプローチのもとでは、双方の意見に耳を傾け、誰も肩身の狭い思いをしないように、2つのアイデアを妥協または融合させる方法を見つけます。

常に感情が渦巻いていることを考えると、対立や衝突を無視するのは無理があります。しかし、対立を競争と排除のゼロサムゲームにさせるのではなく、思いやりをもって生産的な結論に至るようにアプローチすることは可能なのです。

3. チーム全体の感情に気付く:どんな「ムード(雰囲気)」なのか?

グループ全体のレベルでの感情について語るのは、最初は奇妙に思えるかもしれませんが、実は私たちは皆、自分のグループ、家族、チームが一緒に同じ感情を経験した時を思い浮かべることができるものです。最もイメージしやすいのは、大きな危機や困難があって、皆がストレスを感じたときでしょう。特にこの2年間は、疲労感や燃え尽き症候群のようなものが集団的に発生していました。一方、チームが何かを成功させたときも、誰もが同じようにエネルギーとポジティブな波動を感じるものです。

チームにおける感情的知性に関しては、集合的な感情を「ムード(雰囲気)」と呼ぶこともできます。この集合的な感情は、時に「何かが起こっている」という漠然とした感覚として感じられることがあるため、この言葉はしっくりくるものだと言えるでしょう。また、全員がまったく同じように感じるとは限らないという事実にも対応しています。

では、どうすれば「ムード(雰囲気)」を自覚し、それに対処できるようになるでしょう。それに最適な方法は、自己評価集団的フィードバックです。ムードが変化したときには、それが何であるか、なぜそうなったかを理解するために、率直に向き合う必要があります。また、フィードバックはチームの強みと限界を認識させ、実際に何が達成できるかをよりよく理解させてくれる良い手段です。 

もしストレスを感じている人がいたら、何がストレスになっているのか、仕事そのものなのか、それとも体制なのか、一緒に自己評価する必要があります。もしポジティブなムードであるならば、今回の経験から何を学び、今後はよりポジティブになれるかどうか、そしてその理由はプロジェクトの性質なのか、それとも人々の協力の仕方なのか、などを話し合いましょう。

評価とオープンフィードバックは、反省のシステムを確立するための有効な手段です。前に述べたように、内省は自分自身を理解し、成長し、感情的知性を向上させるために非常に重要なステップでもあります。チームでは、複数の人を相手にするため、こうした振り返りやフィードバックはさらに重要であり、実際にどのようなチームなのかをより深く理解することにもつながります。

4. チーム全体の感情に影響を与える:規範の重要性

自己評価を通じてチームの「ムード(雰囲気)」を理解することで、チームはそのムードに影響を与えることができるようになります。これは、チームにおける感情的知性の本質的な目標のようなものです。チームの感情にポジティブな影響を与えることで、グループの成功と生産性を高め、それを邪魔する人間関係の対立を緩和することができるのです。

そこで登場するのが「規範」です。チームの感情に全体的に影響を与えるためには、どのような習慣、構造、ワークスタイル、文化があるのか、そして、それが心理的に安全な環境、創造的な環境、競争よりも問題解決を重視する環境など、肯定的な環境を作り出しているのか、そうでないのかを見極める必要があります。 これは単に優れたリーダーがいるとか、新しい政策があるとかいうことではありません。全体的なものでなければならない理由は、集団が以下のような様々な影響から規範を確立するからです。

  • 正式なリーダーと非公式なリーダー(これについては次回の記事で詳しく説明します。)
  • 組織構造と正式な文化…役職上下関係、会議スタイル、業績評価指標など 
  • 非公式な文化…同僚との関係、仲間からのプレッシャー、社会的階層など
  • トレーニング、メンタリング

規範は複数の起点から形成されるため、チームのムードや状況に対する感情的な反応がどのように形成されているかを示すには、全体的な視点を持つことが必要です。

重要な規範の1つは、感情を全く共有しないことかもしれません。もちろん、感情を認めることは必要であり、避けられないことであり、それによってチームメンバーが自分の環境に安心感を持つことができ、その結果、モチベーションが上がり、成功につながるということも今では分かっています。

その他の規範としては、より協力的なオフィス空間、メンタルヘルス問題へのサポート、メンターリングの機会やスキルアップなどのリソースへのアクセス、対立解決の実践などが挙げられます。

そしてチームビルディングも、そこに含まれる一つの規範です。その目的は、全体のチームスピリットを高めることにあります。チームビルディングは、リトリート、ディナー&ドリンク、アウトドアでの街歩き謎解きなど、チームの絆を深めるために、普段のスケジュールの一部として行うのが効果的です。

5. チーム外からの感情に気づく:境界を越えた関係  

チームにおける感情の重要性を認識し、その感情にポジティブな影響を与える方法を学ぶのは重要なことですが、チームにおける感情的知性のもう一つのレベルは、チームの外にいる人の感情に関係します。

当然ながら、チームは同じ組織内の他のチーム、他の部門、他のグループとの関係を持っているものです。また、顧客や株主、投資家、協力者、政府機関など、より広い世界と交流しなければならないこともあるでしょう。そのため、他のチームの感情にどう対処するかを理解することは、非常に重要です。

すべての関係者に利益をもたらす、効果的な「境界を越えた関係」を成功させるためには、チームは自分自身を見つめ直し、外に向かって働きかける必要があります。自分たちのチーム内で確立した規範をもとに、他のチームとの共感と理解を深める必要があるということです。

境界を越えた関係を、仕事、信頼、理解を必要とする関係と捉えることは、そのための一つのステップです。しかし最終的には、自分たちの感情にうまく働きかけ、共感、対立解決、問題解決を促進する環境を整えたチームが、外部のグループと同じ環境を再現することに長けたチームとなることができるのです。

最後に

このブログ記事で、チームにおける感情的知性とは何か、そしてなぜそれが重要なのかについて、ご理解いただけていたら幸いです。チームの成功においては、個々のチームメンバー、チーム全体、そして他のチームやグループとの関係という3つのレベルで、チームにおける感情的知性が機能します。

このチームにおける感情的知性のモデルでは、気づき、フィードバック、対立の解決、感情のはけ口の確立、規範の形成が強調されています。次回のブログでは、実際に感情的知性が高いチームを形成する方法について、より深く掘り下げていきたいと思います。ひとまず、これらのアイデアが、あなたのチームにおける感情的知性について、もう少し批判的に考えるきっかけになることを願っています。

チームビルディング完全
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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。