「我々は困難な時代に直面している」。この2年間、この言葉を何度聞いたことでしょうか。「困難」なことの一部として、絶え間ない変化と不確実性に適応しなければならないということがあります。仕事を始めとした生活の大部分が非常に予測不可能なものになりました。会社でも、家庭でも、社会生活でも、これまでのやり方が通用しなくなってきたことを実感した人も多いのではないでしょうか。
チームビルディングの会社として、私たちの興味の大部分は「仕事」の部分にあります。このブログ記事では今までも、職場文化に関して発生した大きな変化を理解し、それが今後のチームやチームビルディングにどのような影響を与えるかについての有益なアドバイスを提供することを試みてきました。
しかし時が経つにつれ、まず私たちの生活の各分野の境界線が曖昧になってきていることに気付き始めました(もしかしたら境界線など初めからなかったのかもしれませんが)。現在、多くの人の家庭生活は仕事に溶け込んでいます。職場やチームにとって非常に重要でありながら、しばしば議論の対象から外されてしまうようなこういった社会的側面が、私たちの前にはたくさんあるということです。
多くの人が指摘するように、現在起きていることはリモートワークやハイブリッドワークの巨大な実験のようなものであるため、長期的にどのような影響が出るかはまだ分かりません。さらに先のことを考えると、これらによって私たちが行きつく先がどこになるのかすらもまだ不明です。そのため、仕事の未来を想像することはいささか難易度が高いこととなってしまっているのが現状でしょう。ある意味、「目の前にあるもので最善を尽くすしかない」と言うことなのかもしれません(これは人生の教訓とも言えるかもしれませんね)。
しかしもしかしたら、私たちはリモートワークやハイブリッドワークに関連した仕事の未来についての、正しい問いかけ自体ができていないのかもしれません。今日、私たちは何がベストで、何が機能し、何がトリックで、何がハックなのか?チームにとっては何が最も生産的なのか?といった事に関する「正解」を知りたがりがちです。
生産性については後述しますが、リモートワークが良いか悪いかではなく、オプションとして導入することでどのようなメリットがあるのかを考える所から始めてみるのはどうでしょう。言い換えれば、オフィスではできないことをリモートワークではできるかもしれないし、その逆もまた然り、ということです。そして両方から何を学び、将来に役立てることができるのかを考えてみましょう。
「ハードワーク」と「ソフトワーク」
アトランティック誌の記事(https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/06/winners-losers-work-home-remote/619181/)でデレク・トンプソン氏は、「リモートワークへの移行によって生産性が低下したとは思えない」と指摘しています。確かに、リモートワークの長期的な影響が考慮されていないことを認めたとしても、人々の働き方が突然大きく変化したことが大規模な混乱や目に見える生産性の低下に繋がっていないことは事実です。しかし同時に、誰もが「リモートワークには何かが足りない」と感じてもいることでしょう。
他の記事の中(https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/09/offices-microsoft-study-out-group-connections/620137/)でトンプソン氏はその理由を述べています。まず彼は「ハードワーク」と「ソフトワーク」を区別しました。ハードワークとは記事を書いたり、データシートを作ったり、コーディングをしたりといった、仕事の具体的な要素のことです。それに対してソフトワークとは人間関係の構築、雑談、噂話、カジュアルなブレインストーミングやジョークなど、仕事とそれ以外の間にあるグレーゾーンの職場環境で発生する全てのことを指します。
ソフトワークは、オフィスワークにおける最大のメリットであり、多くの人が自宅で仕事をする際に最も欠落しているものです。リモートワークでもソフトワークが完全になくなる訳ではありませんが、多くの人が簡単にはアクセスできない領域に移行してしまいました。SlackチャンネルやZoomなど、社会的スキルを少し変えるアプリを使用する必要が出たのです。
一方で、ソフトワークが特定のオンラインエリアに限定されたことにより、気が散ることなくハードワークをこなせるようになったとも言えるかもしれません(当然これは知識や創造性を必要とする仕事に限った話ですが)。つまりリモートワーカーは、ハードワークの面では生産性が向上したと感じる一方で、以前のようなソフトワークがないために不安を感じることがあるということです。
コミュニケーションと “サイロ効果”
もうひとつ、トンプソン氏がコミュニケーションに関して興味深い指摘をしています。パンデミック後にマイクロソフト社の社員がリモートワークに移行した際の調査によると、驚くべきことに全社的なコミュニケーションは低下したものの、チーム内のコミュニケーションや親密さは実際には上昇したそうです。
これは直感的に理解できる部分でもあるのではないでしょうか。リモートワークでは、同じプロジェクト(あるいは同じ「重労働」)に関わる人たちとのコミュニケーションがより濃密になることがその最大の理由です。また会社全体とコミュニケーションを取るよりも、5〜6人とコミュニケーションを取る方が簡単だからというのもあるでしょう。
これはリモートワークによって、チーム間のコミュニケーションに「サイロ」が形成される傾向があることを意味しています。つまりチームが内向きになり、会社やグループの他の部分との関わりが少なくなるということです。これはソーシャルメディアで見られる「サイロ効果」とよく似ています。ユーザーは閉鎖的で自己強化された飛び地に集まる傾向があるのです。
捉えきれない「生産性」の発生源
これらはどのように理解すべきでしょうか?そしてそれはチームにとってどのような意味を持つのでしょうか?こういった質問への答えは、生産性をどのように考え、どのように生み出すかということに大きく関係しています。
まず生産性はハードワークとソフトワークのどちらから得られるものだと思いますか?多くの人は「ハードワーク」という答えに飛び付きたがるかもしれません。なぜなら生産性とは、当然のことながら「仕事を終わらせ、気が散らないようにすること」と直結するからです。
しかし創造性についてはどうでしょう?新しいアイデアはそのための会議ではなく、同僚に「最近、何か良い映画はあった?」などと尋ねることから始まる、思いがけない会話の中で生まれることがあります。では自発性はどうでしょう?また信頼感、心理的安全性、回復力などに不可欠なチームの関係はどうでしょう?そして最後に、若いメンバーが特に重視し、人材の維持と育成にも欠かせないトレーニングやメンタリングの機会はどうでしょう?
同様に、サイロ効果には生産性に関するメリットとデメリットがあると考えられます。チームがお互いに多くのコミュニケーションを取るのは良いことである一方、チームが内に向くあまり他のチームや外部のグループとあまりコミュニケーションを取らなくなることは、長期的な生産性や健全性にとってあまり良いことではないようです。
ここで指摘したいのは、生産性とは、私たちが思っているよりもずっと捉えどころのないものだということです。生産性は測定が難しいだけでなく、受け入れられていると感じることや社会に溶け込んでいると感じること、インスピレーションを得ていると感じることなど、人によってその発生源は異なるものであることを覚えておきましょう。
最後に:未来の働き方はハイブリッドになり得るか?
一言で言えば、「その可能性は高い」ということになるでしょう。しかしどのような形になるのか、その輪郭はまだ明確にはされていません。この記事を書いた理由のひとつは、ハイブリッドの意味や、ハイブリッドについて考える時に重要なことについての会話を始めたいと思ったからです。
先に述べたように、リモートチームやハイブリッドチームの構成に関しては、正解や不正解はありません。しかし自分たちの個性、創造性、生産性を見失わないために、チームは自分たちの価値観や目標をしっかりと考えるべきでしょう。そしてその時に、別の誰かが作ったモデルに基づいて、自分たちのアイデンティティを放棄する必要はありません。
同時に、ハイブリッドな世界で成功するためには、チームで試行錯誤を重ねる必要があります。ソフトワークとハードワークの適切なバランスを模索しなければならないし、場合によっては対面での時間の不足を補うために、チームビルディングのイベントなどにもっと時間を費やす必要が出てくるかもしれません。また、自分自身を会社の他のメンバーと統合し、以前と同じレベルの外部グループとの交流を維持する方法を探す必要性が出てくることもあるでしょう。
結局のところ、タイトルの「未来の働き方はハイブリッドになり得るか?」に対して今出せる答えがあるとするならば、「未来の働き方はエキサイティングなものであり、全ては私たち次第だ」ということになるのかもしれません。
インバイトジャパンでは、リモートチームやハイブリッドチーム向けに、オンラインでのチームビルディングアクティビティ、対面式のイベント、ワークショップなど、幅広いサービスを提供しています。私たちのサービスについての詳細や、あなたのチームが最高の状態になるためのお手伝いをさせていただきますので、詳細につきましてはお気軽にお問い合わせください。