この1年半(間もなく2年)の間、企業やチームは数多くの課題に直面してきました。リモートワークを含む新しいワークスタイルへの移行、ガイドラインや推奨事項の変更への対応など、チームが新たな道を見つけるために適応し、変化しなければならない課題は尽きなかったことでしょう。
世間や私たちはこの衝撃からまだ完全に立ち直ることができた訳ではありませんし、しばらくは余波が続くものと思われます。それでも少なくとも一息ついて、少し振り返ることができる場所にはようやく到達したと言えるのではないでしょうか。そしてそんな今は、将来の為に、今後どのような新しい出来事や変化があるのかを考える良い機会でもあります。
数ヶ月前、私たちは「レジリエンス」という概念について、いくつかのブログ記事を掲載しました。思い起こせばその間に、政治学、経済学、環境学など、あらゆる分野で「レジリエンス」が話題になっていたことに気付いた方もいるのではないでしょうか。レジリエンスとは、いわば「嵐を乗り切る」能力のこと。課題に直面し、それに適応し、それによってより強く成長することができるかどうかということです。
今、このレジリエンスというテーマを再び取り上げたいのは、チームが次の展開を見据えていく上で、考えるべきことがあると思うからです。「元に戻る」という言葉がよく聞かれますが、私は「元に戻ることはない」と確信しています。既に多くの「ニューノーマル」が定着していることを考えれば、今後も状況に柔軟に合わせていくしかないことは明確です。そしてこれまでの経験をもとに、将来の課題や危機に対処するための教訓を得ることこそが、今やるべきことなのです。
今回はこのテーマの中から、チームのレジリエンスを高めるのに役立つ実践的な教訓を抽出してみたいと思います。私の最終的な目標は、チームが今からこのガイドを使って自分たちのレジリエンスを高め、チームとして次に来るどんな困難にも対応できるようになることです。 是非参考にしてみてください。
1. 失敗から学ぶ
私たちが自社のチームビルディングアクティビティでいつも強調しているのは、「たとえ失敗しても、それ自体だけでは完全に失敗したことにはならない」ということです。成功するためには、まずやってみて、失敗から学ぶことが必要不可欠だからです。レジリエンスの高いチームは失敗から良く学びます。時間の経過とともに過去の失敗から得た教訓が積み重なり、変化や新しい状況に上手く適応できるようになるのです。
これを自分のチームで実践するには、実験を奨励し、チームメンバーの能力を信じることが大切です。メンバーが失敗しても、それは失敗の兆候ではなく、学習の経験であり、別のやり方を試す機会であると考えましょう。「失敗しても良いからやってみよう」というマインドセットを採用することで、チームは課題に適応する能力を高め、より心理的に安全な環境を作ることができます。
2. 議論の活性化を図る
「管理された対立」は、信頼感と心理的な安全性を備えたチーム環境の特徴であり、どちらもレジリエンスの高いチームの中核的な側面です。熱心な議論ができるチームは、議論がコントロール不能になることなく、暗黙のうちにお互いを信頼し、議論が個人的なものにならないようにしています。このようなチームは、複数の異なるアイデアや意見を取り入れることに慣れており、この方法は危機的状況下での適応と進化に役立ちます。
このような生産的な議論を促すためには、チームとしてのコミュニケーションを図り、全員に発言の機会を与え、「意見が尊重されている」と感じられるようにすることが大切です。沈黙している人がいたら、例えそれが個人的な話であっても、その人の意見を具体的に聞いてみましょう。また、全ての問題についてチーム全員が同意している場合は、警鐘を鳴らすべきということも覚えておいてください。それはチームのメンバーが自分の意見を言えないと感じているか、意見を言うほど気にしていないという可能性があるからです。
勿論これはコンセンサスや合意が必ずしも悪いという意味ではありません。しかしコンセンサスを得るのは、ある程度の議論を経て、全員のアイデアを共有した後でなければなりません。たとえあるメンバーのアイデアに同意できなかったり、「今はどうでもいい」と思っていたとしても、それがいつどんな場面で役に立つか、どんな新しいアイデアが生まれるかは分からないからです。
3. 自分の欠点を自覚する
人間には限界がありますが、それはチームも同じです。しかし自分たちの限界や不足しているものについて正直に話しているチームは、一般的に課題を解決するための準備が整っているため、より良い状態にあると言えます。また、そういったチームの方が、何が問題になり得るかを限界に基づいて明確に把握できているでしょう。
「Be aware of what you don’t know(知らないことを意識する)」という言葉があります。これは自分の盲点を知り、情報のギャップを知り、自分に足りない知識を知るということです。それを意識するようになると、自分の知識の穴を埋めようとする好奇心が生まれます。そしてどこに問題があるのか、どのような選択肢があるのかを想像することに繋がります。このように自分の足りない部分を知ることで、チームに新しいアイデアが生まれたり、いざというときに問題を解決する方法を知ったりすることができるのです。
4. 柔軟性を保つ
ここで言う柔軟性とは、「新しい変化に素早く対応し、新しいアイデアを積極的に取り入れることができる」という意味です。もちろんチーム内での議論や新しいアイデアの流れを促進することは、この点でも効果的です(上記参照)。そして柔軟性のもう一つの側面は、「チームの構造」です。チームの構造によってメンバーのある程度の独立した行動すら制限されてしまっていると、チームが危機に直面した時に、メンバーが対処するのは難しくなるでしょう。
同時に柔軟性とは、「チームが外界とどのように関わっているか」ということでもあります。あなたのチームは新しいアイデアや新しい方法を積極的に取り入れていますか?あなたのチームは外部の人と上手く関係を築けていますか?あなたのチームはサポートを期待できる顧客やリソースのネットワークを持っていますか?あなたのチームがどれだけ柔軟であるかは、レジリエンスを維持する能力の中心的な部分なのです。
5. チームの結束力を高める
チームとしてのレジリエンスを高めるためには、「チームの結束力」が重要なポイントとなります。「チームの結束力」は、変化に直面してチームが柔軟性や適応力を発揮する際に、その中核となる価値観やアイデンティティから離れすぎないようにするための、チームの拠り所であり支えとなるものです。チームの結束力については他のブログ記事でも多く取り上げてきましたが、ここではチームの結束力の主な2つの側面である「目標」と「人間関係」に焦点を当てたいと思います。
- 目標
チームの目標はチームの方向性やビジョンを示すためにも重要なものです。目標が適切に伝えられることによって、プロジェクトを遂行する際、チームメンバーは容易に同じ考えを共有することができるようになります。
同様に、チームの目標がメンバー全員に明確に伝えられ、理解されていれば、危機的状況にあっても、同じ全体像に沿った解決策を容易に見出すことができるようになるのです。もちろん危機的な状況下では目標を再調整する必要性が出ることもあるでしょう。目標を見直すことでアイデンティティが完全に失われたり、チームの一体感が失われたりすることはありませんが、その変更を伝え、全員が納得できるようにしておくことは必要です。
- 人間関係
人間関係は、チームの全てのピースを繋ぎ合わせる接着剤のようなものです。 チームでの団結力を維持するために、強い人間関係を築くことに集中しましょう。チームは最終的にはそこにいる人たちで構成されます。そのためその人間関係に注意を払い、尊重することで、課題が発生したときのための防火壁を構築することができるのです。
最も重要なことは、チームがその関係を築くために充実した時間を一緒に過ごすことです。もちろんどのようなチームでも、人間関係は自然と形成されていくものではあります。しかしチームはそうした関係を強化し、チーム全体を上手くまとめ、レジリエンスを低下させる原因となる摩擦や分裂が起こらないようにする努力は必要がでしょう。
6. 一緒に楽しむ
これはどのブログ記事でも言っていることですが、レジリエンスという観点からは特に関連性が高いと言えます。チームとして一緒に楽しむことで、自然と人間関係が強化され、より多くの結合組織が形成されます。またチームメンバー間の信頼関係が深まることによって、より多くの議論やアイデアが生まれることにも繋がります。
しかしもっと単純な理由は、一緒にいる方が単純に楽しいからです。レジリエンスの高いチームとは、メンバーが実際にチームの一員でありたいと思い、その成功に投資しているチームです。一緒に過ごす時間が楽しければ、チームメンバーはずっと一緒にいたいと思うはずです。
7.練習を重ねて完璧を目指す
最後に注意すべきことは、レジリエンスを高めることは継続的なプロセスであるということです。チームはこれらのステップを常に実践し、改善のためのさまざまな方法を検討する必要があります。そのためには、定期的にチームビルディングのセッションを開催することをお勧めします。定期的にチームビルディングを行うことで、チームは何が起こっても大丈夫なレジリエンスを保つことができるのです。
インバイトジャパンは、未知の未来に向けて、チームがレジリエンスを高め、維持するための支援を行っています。アクティビティ、ワークショップ、オンラインイベントなど、チームワークとチーム・レジリエンスのさまざまな側面をターゲットにしたプログラムやパッケージを多数ご用意しています。詳しくはお気軽にお問い合わせください。