アテンション・エコノミー(関心経済)における注意力:ハイブリッドな職場環境における集中力の高め方

目次

リモートワークやハイブリッドワークのスタイルに移行し、多くの仕事がオンラインで行われるようになった現在、多くのチームにとっての大きな懸念として挙げられる一つが「注意力」。個々のチームメンバーにとって、オンラインやリモートの環境は気が散りやすいものであるため、いかにして仕事に集中するかということです。またチームにとっては、各自がそれぞれのバブルの中に居る時に、いかにして明確な目標を設定し、チームを共通の軌道に乗せるか、ということでもあります。

週末、Ezra Klein Show氏とJohann Hari氏のポッドキャストにて「注意力」とそれがテクノロジーの変化によってどのような影響を受けたかについてが論じられていました。このインタビューは、現代のワークスタイルが24時間365日繋がることとマルチタスクをいかに重視しているかといった問題に触れており、とても興味深いのと同時に、これは特にリモートチームやハイブリッドチームに関連しているテーマであると感じました。

番組の大半は、注意力の問題にどう対処し、もっと集中できるようにするにはどうすべきかといった個人の行動に関するものでしたが、構造的なアプローチや地域社会に根ざしたアプローチについても少し触れていました。人々が考えるためのスペースを確保し、最も重要なことに集中できるようにするためには、私たちはどのように物事を再編成すれば良いのでしょうか。

そこで今回のブログのテーマが決まりました。「注目」とテクノロジーに関するこの情報を活用して、より良い環境を形成するためにチームがどのように協力できるのか。これはチームや個人がそれぞれの目標を達成し、統一された目的意識のもとに纏まることを可能にするものでもありますので、是非参考にしてみてください。

「注意」と「集中」の大局を見る

このポッドキャストで学んだ最も興味深いことの1つは、「注意」には実にさまざまなレベルがあるという考え方についてでした。「注意を払うこと」について考えたり議論する時、私たちは今すべきこと(優先すべき仕事や責任、読書や研究など)と、注意力を妨げるものがいかに能力を制限するかにばかり目を向けがちです。 

しかし生活においては、異なるレベルでも集中する時間を必要とすることがあります。例えば長期的な目標や、迷った時やスキルアップしたい時に新しい方向性を見出す方法を考えることなどです。

Johann Hari氏は、元技術関係者で作家のJames Williams氏の「注意のレベルの違いについての考え」を紹介していました。彼の著書「Stand Out of Our Light」の中で、Williams氏は注意を3つの「ライト」というカテゴリーに分類しています。

  • スポットライト… これはあなたが今、集中してやっていることです。今やりたいこと、集中しようとする活動に大きなスポットライトが照らされているのを想像してください。おそらく「集中」について考える時、ほとんどの人が思い浮かべるのはこれでしょう。  
  • スターライト…これは長期的な目標や高い目標へのあなたの集中を表します。船に乗り、「星の光に導かれる」ことをイメージしてください。このような注意を払うことで、自分の人生で行きたいところへと向かって進むことができます。
  • デイライト…これは理性、知性、知識、メタ認知などに基づく、世界と自分自身に対するあなたの一般的な認識を表します。昼間の光のように広く、あなたを取り囲むように存在し、そもそも何に焦点を当てたいのか、どの方向へ進みたいのかを見極めるのに役立ちます。

注意のレベルを目の前のタスクのことだけに限定してしまうと、目標やより良い判断をするための新しい知識の獲得などといった、他のレベルの注意について考える機会を失ってしまいます。そして現代の社会では、生産性をどのように捉えているかによって、こういった他のレベルにエネルギーを集中させることが「時間の無駄」のように思われることもあるのです。

しかし、「スターライトの注意」や「デイライトの注意」を見落とすと、不利益につながる場合があるということも認識しなければなりません。目標を持たないとやる気を失うことに繋がりますし、そもそも新しい目標を立てる意識がないと、完全に迷子になって無気力になってしまいます。

ですから、「スターライトの注意」や「デイライトの注意」も散漫になりがちであることをもっと意識することで、注意と散漫が私たちの生活のさまざまなレベルにどのように影響するかについて、より明確で広い視野を持つことができるようになるのです。時には、物事を成し遂げることに限らず、より長期的な問いに答えることに気を取られてしまうこともあります。そして時には、「生産的」と感じられる様々な短期的な作業で気を散らしてしまうことさえあるのです。

チームにおける注目のレベル

これらの概念はグループ、特にチームを効率的に機能させる方法ともしっかりと関連付けることができます。

まず「スポットライトの注意」は、チームメンバーの日常業務や責任に当たります。「スターライトの注意」は、チームの大きな目標や動機です。そして「デイライトの注意」は、チームメンバーが自分の活動分野やより大きな世界との繋がりについて知っていること、そしてチームの限界や可能性について意識していることと考えられます。

個人的な観点との大きな違いは、チームはお互いに支え合いながら仕事ができるという点です。チームには、互いの意見を聞き、スキルと才能を組み合わせ、自分たちが働く構造を形成するという能力があります。特にハイブリッド・チームは、古い慣習に頼ることなく、新しい仕事のやり方を試すことが可能です。

目標を共有することは、心理的安全性、チームの結束、モチベーションなどの面で重要であることは、以前にもお話しした通りです。そしてチームの自己意識を高めることは、チームビルディングスキル開発メンターシップなどを通じて行うことができます。

集中力を維持するための3つの秘訣

チームが本当に重要なことに集中し、注意力を保つために役立つアドバイスを3つご紹介します。

1. マルチタスクを制限する

「マルチタスクは良くない。」これが今日、多くの研究者の間にある共通認識です。そもそも「マルチタスク」という呼び方自体が間違っているとも言えます。なぜなら、マルチタスクだと思ってやっていても、ほとんどの場合は本当に複数のタスクを一度にこなしているわけではないから。実のところ我々が行っているのは、個々の作業を連続して行うこと、つまり「タスク・スイッチング」なのです。

タスク間の移動は効率的ではなく、本当に集中することが難しくなります。音楽を聴きながら仕事をすることでさえ、特に集中力を高める効果があるとは言われている訳ではなのです。

これは是非ともチームで取り組むべきことと言えるでしょう。ワークフローを管理することは、生産的で効率的なチームであることの一部です。そしてワークフローが過負荷になると、最も重要な(あるいは意味のある)仕事を処理するのが難しくなってしまいます。

マルチタスクはオンライン作業環境では特に多く見られています。常に異なる文書、タブ、アプリケーションの間を行き来しており、Eメールやメッセージの受信も頻繁に発生することがその理由です。

そこで、チームでマルチタスクの問題点や解決策を話し合い、ワークフローをより生産的に管理する方法をブレインストーミングしましょう。また、ToDoリストの中から1つずつのタスクに順番に集中することができるよう、マネージャーやプロジェクト管理ツールでサポートすることも必要です(但し、プロジェクト管理アプリが別の気晴らしにならないように注意しましょう)。

2.  散策や探索の時間を確保する 

集中力や生産性というと、一箇所に籠って猛烈に作業をすることと思われがちです。しかし、自分自身の注意力をいつどのように働かせるかは、常にコントロールできるという訳ではありません。休憩が必要な時もあれば、横道に逸れて「ただ歩き回る」べき時もあるものです。

現代の大きな問題のひとつは、「心を遊ばせる」代わりに、スマートフォンを取り出してSNSをスクロールしたり、ウェブサイトを閲覧したりすることが優先されがちだという点です。しばしば必要とされる精神的な空間と時間を自分に与えず、むしろスマートフォンが与えてくれるものでその隙間を埋めてしまっているという現象は、ほとんどの人が当てはまるのではないでしょうか。

「ただ歩き回る」というと非生産的に聞こえるかもしれませんが、実はぶらぶら歩くことは注意力や集中力を高めるのに効果的であることが分かっています。頭をすっきりさせるために散歩をすることは、古来より行われてきた方法です。 そして最近の研究では、歩き回ることが創造性を刺激し、問題解決に役立つことが確認されています(以前ここでもお話ししたことがありますね)。

しかし、歩き回ると言っても、必ずしも物理的である必要はありません。「マインド・ワンダリング」と言って、単に「自分の心を好きなところへ行かせる」という主旨の方法もあります。多くの場合、自由に文章を書いたり、絵を描いたり、瞑想したり、パズルを解いたりするような作業とセットになっていることが多いようで、「普段集中的に取り組んでいるタスクとは無関係のことをすることで、タスクについて新しい視点から考えることが可能になる」という理論です。

そこで、個人やチームでのブレーンストーミングセッションなど、チームで「歩き回ること」をもっと取り入れてみることをお勧めします。スケジュールを柔軟に調整して、メンバーがじっくりと考え、新しいアイデアを出すのに必要な時間を確保しましょう。特に自宅で仕事をしている場合は、必要であれば、散歩をしたり、絵を描いたりすることを許可してみてください。そして、クリエイティブなプロセスはあくまでもプロセスであって、スイッチのオン・オフではないことを理解することが大切です。

3. 互いに学び、成長し続ける     

チームとしてより自己認識と知識(デイライトの注意)を深める努力をするためには、チームは一緒に学び続けることが必要です。そうすることで、行き当たりばったりではなく、同じ方向を向いて、一体となったチームとして成長することが可能になります。つまり、一緒に意思決定を行い、問題解決に専念し、より効率的に仕事をこなすことができるようになるということです。

しかし、学習にはさまざまな形態があります。たとえば若手社員や新入社員の指導の機会。またはチームメンバーがスキルを向上させたり、新しいスキルを身につけたりするための徹底したジョブトレーニングやスキル開発などもそう。そしてより良いチームになるための方法をチームに教えるチームビルディングも含まれます。

このような共有学習は、今のハイブリッドチームにとって非常に重要です。チームメンバーがそれぞれ独立し、全員が異なるスピードで成長している今、ハイブリッドチームはチームの成長をより意識し、共に前進する方法をより積極的に実行する必要があることがより明確になってきました。

オンラインチームビルディングアクティビティ、能力開発セミナー、オンライン講習などは、ハイブリッドチームが学び続けるための素晴らしい方法です。近い将来、物事が再び動き出す時、仕事以外の交流も重要なカギを握るでしょう。その時に向けてこのような学習と一体感を促進することで、チームは自分たちがどのように機能し、交流しているかにもっと注意を払うことができるようになるのです。

最後に

インターネットを定期的に利用するチームにとって、どのように、そして何に対して注意を払うかは大きな関心事であるはずです。注意を払うということは、単にタスクを完了させるということだけでなく、目標設定やモチベーションといった長期的な問題でもあるのです。テクノロジーによって集中することが難しくなったとはいえ、完全に手に負えないというわけでもありません。創造性、アイデア、生産性をよりスムーズかつ自然に発揮できるように、仕事を別の方法で構成することが可能なのです。試してみようと思う限りは。