ここ数回のブログシリーズでは、リモートワーク中にモチベーションを維持する方法についてご紹介してきました。特に前回までは個人のリモートワーク環境に焦点を当て、リモートワークがもたらす困難を乗り越えて、自分自身でモチベーションを見つけるためのアドバイスをお伝えしてきました。続く今回は、チームメンバー個人ではなくチーム全体に焦点を当てていきます。
リモートチームのモチベーションを高めるにはどうするべきか?この質問に答えるには、2つのパートに分けて考える必要があります。まずは「チームやグループのモチベーションを高める方法」についてです。これは当然、自分個人のモチベーションを高めることとは大きく異なります。あなたは自分自身のことを知っていますし、何が好きで、どんな願望や希望、能力があるのかも知っているはず。しかしチームの場合は、それぞれ目標や願望が異なる場合もあるでしょう。そのためチームのモチベーションを高めるには、まずこれらの異なる目標を一つにまとめることが重要になります。
そして次の段階として、「リモートチームのモチベーションを高める方法」について考えることになります。多くのチームがリモートワークやハイブリッドなワークスタイルに移行し継続している現在、マネージャーやチームリーダーをはじめとした、チームの生産性やオンタスク性の維持に関心のある全ての人にとって、チームのモチベーションを高めることは、重要な意味を持つ新たな課題となっています。その結果、リモートチームやハイブリッドチームのモチベーションを高めて効率良く活動するには、新しい方法や仕事の構造に移行することが必要になるかもしれません。
内発的動機と外発的動機
モチベーションは内発的なものと外発的なものの2つに分けられます。内発的モチベーションとは、個々の人間の内面から生まれるものです。特定のタスクや仕事にどのように関わり、そこから個人的に(スキル、評価、成長など)何が得られると感じているかを意味します。
一方、外発的動機とは、自分自身の外からやってくるものです。通常は会社やチームから与えられる、仕事に対する支払いや名誉などの報酬制度、労働者の「賛同」や「働く動機」を指します。しかしそれだけでなく、仕事における外発的動機は、会社の文化や構造にも関係していると私は考えています。
また、具体的な報酬制度があったとしても、チームのモチベーションを高めるためには、メンバーを大切にし、心理的に安全な環境を提供するチーム構造や文化が必要です。
リモートチームのモチベーション向上に関する問題の多くは、外発的なモチベーションの問題と、外発的なモチベーションをリモートチームにどのように伝えるかということに集約されます。具体的には、リモートワークへの移行に伴うチームの文化や構造の変化(通常のコミュニケーション・チャンネルの変化を含む)が外発的動機の混乱を招き、さらにそれが気付かれなかったり、対処されなかったりすることが挙げられます。
つまり、外発的なモチベーションを与えるための旧来の仕組みを見直す必要があるということです。以前は何か問題が起きた時や、チームメンバーが困っている時には、顔を合わせてコミュニケーションを取ることができました。しかしそれが叶わない今は、少し考え直す必要があるのです。
5つの行動モデルを用いたリモートチームにおける外発的モチベーションの具体的な課題
リモートチームに特有の問題を解決するために、今回はパトリック・レンシオーニ氏が作成し、アイリス・カルプ氏がブログ記事で非常に分かりやすく説明している「5つの重要な行動モデル」を使おうと思います。
このモデルでは、成功するチームが示す5つの(一般化された)「行動」または指標として、「信頼」、「対立」、「コミットメント」、「責任」、「結果」を挙げています。以下では、これらのカテゴリーごとに、リモートチームのモチベーション向上に関する問題点とその対策について説明します。
1. 信頼(脆弱性)
問題点
- 別々に仕事をしていることにより、メンバー間の信頼関係が希薄になる
- 他のメンバーが何をしているのかが見えないために経営者がチームに不信感を抱き、より注意深くメンバーを監視するためのテクノロジーの導入を検討する
- ビデオ会議やメッセージ、タスク管理といった最新のツールも、場合によっては通常のコミュニケーションに混乱や破綻をもたらし、不信感を抱かせることがある
ではどうするべきか
コミュニケーションを強化し、リモートチームのメンバーが常に監視されることなく仕事ができるようにすることで、リモートチームの信頼性を高めることを目指します。プライバシーを犠牲にすることなく、効果的かつ透明性の高いコミュニケーションを可能にする様々なコミュニケーションツールを比較検討し、試してみましょう。
2. 対立(生産的な対立と対立解消)
問題点
- チームメンバーが分散している場合、発生した対立を管理したり、生産的な対立を促進するための適切かつ効率的な方法がない場合がある
- 特定の対立を個人間で処理するよりも、グループ全体の前で指摘する方が刺激が大きくなる
- ビデオ会議やSlackのチャンネルだけでは、水面下で起こりつつある対立に気付きにくい
ではどうするべきか
チームメンバー全員が「自分の意見や批評を聞いてもらえる」と実感できるようにしましょう。問題が発生した時には、できるだけ個々のメンバーに声を掛け、対立が発生した時には気を配り、積極的に対応します。また、ビデオ会議で大人数の生産的なディスカッションを行うためには、ミーティングの方法を変える必要があるかもしれません。例えば、ブレイクアウトルームを使用して小規模なディスカッションを行い、先にある程度の意見を吸い上げたり、オンラインのホワイトボードアプリを使用してブレインストーミングを促進する…といったことも場合によっては有効な解決策になるでしょう。
3. コミットメント
問題点
- 意思決定のプロセスから取り残されたように感じたり、会議で何が決定されたのかはっきり分からないという人が出ることがある
- 仕事とプライベートの境界がないため、休暇規定や休息について混乱が生じることがある
ではどうするべきか。
意思決定のプロセスを明確にし、休暇規定や休日など、リモートワークを取り巻く仕組みに影響を与える決定を下す際には、できるだけ多くのチームメンバーを参加させましょう。こういった問題が発生した場合にはオープンで正直な会話をし、一貫性を保つことが大切です。
4. 責任
問題点
- リモートワークに切り替えたことに伴う、自分の責任の範囲やその変更点がはっきり分からない人がいることがある
- 人との交流やそれぞれの役割の明確な定義とその更新といったことが欠落することによって、チームメンバー間や経営陣との間で責任問題が生じる可能性がある
- コミュニケーションの難しさとチームメンバーの分散により、チームメンバー間で責任を果たすことが難しくなることがある
ではどうするべきか。
繰り返しになりますが、鍵となるのは透明性です。チームメンバーの役割と責任を明確にし、それを果たせなかった場合にはどうするかを考えましょう。状況によっては、方針や期待値を変える必要があるかもしれません。しかし難しいことではあるものの、責任を果たすために、問題発生時にはチームメンバーと個別に話し合うように努力すべきであることは変わらないのです。
5. 結果
問題点
- リモートで一人で仕事をしていると、全体像やチームの成功に自分がどう関わっているのかが見えにくくなることがある
- リモートワークでは、大局的な視点やチーム全体の目標や成果について話し合う時間や場所を確保するのが難しくなることがある
- 成功を十分に祝うことが以前に比べると難しく、その必要性を忘れがちになる
ではどうするべきか。
結果やパフォーマンスの成果をできるだけリモートチーム全体に伝え、チーム全体の状況を全員に知らせましょう。また、長期的な目標やチーム全体の目標について一緒に話し合う時間を設け、定期的に意識のすり合わせをすることも大切です。成功を祝ったり、ストレスの多いプロジェクトの後には一緒にリラックスする時間を、(例えオンラインでなければならないとしても)作るようにし、それぞれの仕事が結果に繋がっていることとその区切りを明確に示しましょう。(オンラインのチームビルディングアクティビティなど、チームとして一緒に過ごすための素晴らしい方法は、それぞれの状況に応じてたくさんあります!)
最後に
このように、リモートでのモチベーションの問題の多くは、対面式のチームが直面する問題と根本的にはそれほど変わりません。違うのは、全員が分散していて、ほとんど一人で行動している場合、外発的なモチベーションを高めるのが難しくなりやすいということです。
しかし難しいのであって、不可能ということではありません。慣れ親しんだ仕事の構造や方法を見直したり、チームメンバーとのコミュニケーションを取ったりする際には、より多くの思考と努力が必要になるでしょう。オンラインでのリモートワークはチームを目標に結びつける方法や、チーム同士を結びつける方法について、これまでとは少し違った考え方をしなければならないということです。こういった作業は困難で余計な手間のように感じる部分もあるかもしれませんが、長い目で見てみれば、チームにとってそれほど悪いことではないのではないでしょうか。
インバイトジャパンは、リモートチームやハイブリッドチームのモチベーション維持をサポートします。コミュニケーション、チームワーク、そしてチームを支える人間関係を強化するための幅広いアクティビティをオンラインと対面式の両方で提供していますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。