「先延ばし」とそれをチームで克服する方法

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誰もが「先延ばし」にしてしまうことがあるものですが、多くの場合、それは個人で解決すべきことと考えられていることでしょう。しかし、チームの力を活用し、その構造を一緒に批判的に見ることで、この問題を克服するための変革の道筋が見えてくるかもしれません。今回の記事では、その方法を紹介します。

「先延ばし」は、多くの人が人生のある瞬間に必ず直面する恐ろしい問題です。しばらく続くこともあれば、何度も繰り返されることもあります。この問題に対処しても克服するのが得意な人もいれば、常に課題となっている人もいるでしょう。

「先延ばし」はよくある問題で、さまざまな記事やブログでもよく取り上げられますが、そこにはまだ多くの汚名があり、「先延ばし」についてオープンに議論することに恐れを抱いている人もいます。なぜなら、「先延ばし」は怠惰や時間の自己管理ができないことと関連づけられることが多いからです。

この前提には、「先延ばし」は個人が対処すべき問題であるという考え方が含まれています。そして、この感覚は「もっと整理整頓する」「新しいスケジュール管理・時間管理の方法を見つける」「気が散るものを取り除く」など、「先延ばし」に対処するために通常与えられるアドバイスによってさらに増長されます。

しかし、仕事やチームプロジェクトにおける場合、「先延ばし」は個人だけの問題ではありません。「先延ばし」が他のチームメンバーや同僚自身、そして彼らの仕事の進め方にも影響を及ぼすことは想像に難くないでしょう。そして実は、「先延ばし」は個人的な問題として個別に対処するのではなく、チームで助け合うことで克服することができるものでもあります。さらに、チームの構造やコミュニケーションに問題がある場合、「先延ばし」が発生することもあるのです。

そこで、今回の記事では「先延ばし」とチームの機能との関連性をより詳しく見ていき、広く蔓延するこの問題を克服するためにチームをどう活用すればよいかを考えていきます。

この記事を読むにあたって留意していただきたいのは、(ここでは社会人チームに焦点を当てていますが)これらのアイデアや解決策の多くは、私たちのプライベートな生活にも応用できるものだということです。人生の大きな選択から医者に行くことなど日常的なことまで、個人的な問題を「先延ばし」にすることは誰にでもあるでしょう。そんなときでも、家族や友人など身近な人に相談することによって、自分ひとりで何とかしようとするよりも、「先延ばし」に対処することができるかもしれないのです。

「先延ばし」とは?

まず、「先延ばし」とは実際にどのようなものでなのか、或いはどのようなものでないのかについて説明します。「先延ばし」は「怠惰」とは違います。怠惰とは「仕事をする気がないこと」と定義できるでしょう。しかし、「先延ばし」にするときは、その「意欲」があります。ただ、仕事を「先延ばし」にしたり、後回しにしたりしているだけです(これから少し説明しますが、それにはさまざまな理由があります)。

実際、「先延ばし」にしている人の多くは最終的に仕事を終えています。ただ、最もタイムリーな方法で終わらないだけなのです。時間をかけて何かを仕上げるのではなく「先延ばし」にする人は、ギリギリまで、あるいは期限が切れるまで待ちます。そこには、「不快な」仕事や、まったく自信が持てない仕事を避けたいという気持ちがあるのです。 

その結果、罪悪感や羞恥心が生まれ、やがてやる気をなくし、うつ病になることさえあります。また、特に「先延ばし」にする理由が不明確な場合、自分に対する不満が生じることもあります。

「先延ばし」とチームの関係性

もちろん、「先延ばし」はチームの他のメンバーにも、さまざまな形で影響を及ぼします。それは、タスクが「先延ばし」になることで、他のメンバーがそのスケジュールに合わせて仕事をすることを余儀なくされるだけではありません。「先延ばし」にしている人が感じている不満ややる気のなさは、生産性の低下を招き、最終的にはチームの他のメンバーにも影響を及ぼす可能性があります。

つまり、チームにはメンバーがどんな「先延ばし」の穴に陥っていても、そこから抜け出す手助けをするべき動機があるのです。さらに、前にも少し触れましたが、「先延ばし」にする人に遭遇したら、すべてを本人のせいにするのではなく、チームの内側に目を向けることも頭に置いておきましょう。なぜなら、チーム内に「先延ばし」になるような根本的な問題がある可能性があるからです。

誰もが生産的で心理的に安全だと感じ、自分の考えや意見を正直に、そしてオープンに話すことができる環境を常に作るよう努力しなければならないことを忘れないでください。チームメンバーの1人または複数が何かに苦しんでいる場合(「先延ばし」は間違いなく苦痛の一つです)、チームができる最善のことは、彼らを助け、一緒に解決策を探すことです。

ではここからは、「先延ばし」に対処する際に見落とされがちなチームの主要なエリアとその構造をご紹介します。 

1. コミュニケーション:チーム内のコミュニケーションに問題があると、「先延ばし」の問題につながることがあります。話を聞いてもらっていると感じられないチームメンバーは、より孤立感を感じ、仕事への意欲を失ってしまうこともあるでしょう。さらに、「先延ばし」にしてしまったときのフラストレーションについて、自分の気持ちを共有できないことも、問題を悪化させる可能性があります。チームの基本はコミュニケーションです。オープンで正直なコミュニケーションの場を作ることが、「先延ばし」を含むあらゆる問題への対処に繋がります。

2. 協力関係(コラボレーション): チーム内での協力関係が不足すると、チームメンバーは互いに疎外感を感じ、自分の仕事やチーム内での居場所に自信が持てなくなります。チームメンバーが協力し合えば、互いに高め合い、批判的なフィードバックを与え、刺激し合うことができるでしょう。

こうすることで、チームメンバーは集中し、協力し合って前進することができます。一方、協力関係が不足すると、チームメンバーは方向性を見失い、さらに「先延ばし」になる可能性が出てきます。効果的な協力関係のためには、適切なツールやプロセスを使用することが不可欠です。マルチタスクや協力し合うための適切なスペー スがない場合、チームメンバーはさらに混乱し、状況に圧倒され ることになります。

3. 明確な役割と目標 :チームワークを発揮するための効果的な仕組みとともに、チームメンバーは自分がやっていることに意味を見出し、チームにおける自分の役割に価値を見出すことが必要です。自分の役割やチームの目標が不明確だと、メンバーは不満を感じ、やる気をなくしてしまうことがあります。その結果、自分が何をしているのか、なぜそれが必要なのかがわからなくなり、「先延ばし」に繋がることもあるのです。

4. 創造的気晴らし: 「先延ばし」の問題を解決するために気晴らしをすると言うと、直感的に矛盾していると思われるかもしれません。しかし、以前の記事で説明したように、「創造的気晴らし」は、人々が他のことに少し集中することで、心が一息つけるようになる健全な手段なのです。SNSやテレビなどの「破壊的気晴らし」とは異なり、チームメンバーを高揚させ、より活気のある気分にさせてくれます。例えば、チームビルディングやソーシャルアクティビティは、チームに気晴らしと楽しみを与え、同時に貴重な人間関係を構築するのにも役立ちます。

また、散歩をしたり、趣味に没頭したりと、健康的に心を遊ばせる機会を与えることで、長期的には集中力を高め、「先延ばし」になりがちな状況を打開することができます(特に、創造性を阻害されることが原因で「先延ばし」になりがちな場合)。しかしそのためには、チームが互いに信頼し合い、創造性と探求心を育む環境を整えることが必要です。

「先延ばし」になりがちな原因とチームで解決するために

では次は、これらの考え方を実践してみましょう。「先延ばし」には様々な原因があり、その原因も人それぞれです。もちろん、「先延ばし」はその人の私生活で何が起こっているか、心身の健康状態、目標などにも左右されます。しかし、「先延ばし」になる原因には、何度も繰り返し現れる共通のものがいくつかあります。

そこで、以下では前節の関連する部分を参照しながら、それぞれについてチームで解決していくための方法についてお話しします。

原因1.「仕事に追われている」と感じる

解決策: チームメンバーとのコミュニケーション、協力体制を再検討する

「先延ばし」にする最も一般的な原因の1つは、やらなければならないことに圧倒されてしまうことです。あなたも感じたことがあるのではないでしょうか。やるべきことが多すぎて何から手をつけていいか分からず、麻痺して何もできなくなるという状況です。あるいは、小さな仕事を片付ける意志はあっても、大きなプロジェクトは怖くて後回しにしてしまうことで、問題を積み重ねてしまうこともあるでしょう。

これは結局のところ、チームのワークフローに問題があるのです。円滑なチームのワークフローは(ほとんどの場合)チームメンバーに負担を感じさせません。そして通常、ワークフローの問題は協力するための構造に起因しています。もしかしたら、あなたのチームはマルチタスクが多すぎるために、チームメンバーがより負担を感じているのかもしれません。あるいは、仕事の分担が不均等である可能性もあるでしょう。

また、会議や電子メールを通じたチームの交流方法も、この問題の一因になっている可能性があります。電子メールに頼りすぎると、チームメンバーがこなすべきタスクが小さくなり、不必要な会議を多く予定すると、タスクを完了するための時間が奪われてしまう可能性があるのです。

このような問題を解決する方法は、コミュニケーションにあります。他のチームメンバーも同じように感じているかもしれませんし、上司も何が起こっているのか分かっていないということもあるでしょう。しかし、コミュニケーションをとることで、その根底にある協力するための構造に潜む課題に適切に対処し、最も重要なことを行うための障壁を取り除くことができます。

原因2:集中できない/「閉塞感 」がある

解決策:「創造的気晴らし」を見つけ、より多くのコラボレーションを行う

集中できないことと、(精神的または創造的な)閉塞感を感じることを一緒にしていますが、これは本質的にコインの裏表であるからです。集中できないときは、目の前の仕事について明確に考えることができない状態にあります。そして、閉塞感を感じているときも、できるだけ物事に集中しようと無理をしているにもかかわらず、明確に考えることができない状態になっています。

この2つの問題がある場合、たいてい結果が「先延ばし」になってしまいます。しかし、どちらも同じ解決策が有効で、それは、今の自分の考え方から抜け出すことです。つまり、自分の心に余裕を持たせて、新鮮な視点を得ることです。これは「創造的気晴らし」によって実現できます。クリエイティブなことや精神的に刺激的なことにちょっとだけ集中することで、集中力を高めることができるのです。

パズルを解く、文章を書く、絵を描く、カラオケに行く、皿洗いをするなども、適切な方法で行えば、「創造的気晴らし」になります。また、チームビルディング・アクティビティや、同僚とおしゃべりをするなどの集団的な「創造的気晴らし」も、1つのことに集中しすぎていた心に楽しい休息を与え、自然と新鮮な展望を与えてくれるでしょう。

そこで、もう1つの方法として挙げられるのが「コラボレーション」です。新しいアイデアが浮かばなかったり、気が散ってしまったりして行き詰まったとき、他の人と一緒に仕事をすれば、仕事に集中できますし、アイデアを出し合う相手にもなります。

原因3:退屈/やる気が出ない

解決策: 役割と目標を明確にし、手を差し伸べる

仕事や自分のやっていることを退屈に感じているとき、私たちはやる気のなさを感じています。その結果、ワクワク感がないために、仕事をすることを「先延ばし」にしてしまうのです。あるいは、チームの目標を見失ったり、自分自身が評価されていないと感じたりして、仕事をする意義を見いだせなくなることもあります。 

これはチームメンバーにとってとても危険な状態です。なぜなら、それはチームメンバーが自分の能力を十分に発揮できていないことを意味し、チームメンバーが退職する準備をしているサインである可能性があるからです。このような状況に対処するには、そのメンバーだけでなく、他のメンバーとも協力して、中心的な目標と各メンバーの役割を明確にする必要があります。

「先延ばし」にしている人をこのプロセスに参加させることで、チームのメッセージや自分がやっている仕事と再び繋がることができるかもしれません。また、自分の役割を見直すことで、見られていない、評価されていないと感じている問題に対処できることもあります。例えば、自分の役割を拡大したい、何か新しいことに挑戦したい、といったことが分かるかもしれません。

しかし、最も重要なのは「手を差し伸べること」そのものです。チームメンバー全員が、何か困ったことがあったときにはお互いに手を差し伸べ、コミュニケーションをとることができるようにしなければなりません。同時に、他のメンバーは仲間が少しやる気をなくしているようなときに、それに気づき、何が問題なのかを知るためにコミュニケーションをとるようにしなければなりません。それがやる気をなくしたり、「先延ばし」にしたりしないための第一の防御線となるのです。

原因4:自信がない/チームからの疎外感・孤立感

解決策: 協力とコミュニケーションをより定期的に行う

モチベーションの低下と少し似ているのが、自分の仕事に自信が持てない、あるいは孤立しているように感じるということです。実はこれは、リモートワークやハイブリッドワークが一般化した結果、現在チーム内で増えている問題です。一人で仕事をする人が増え、オフィスカルチャーにあったような定期的なフィードバックの仕組みがないため、多くの人が自分に自信を持てなくなっているのです。

自分に自信が持てないと、自分自身を疑うようになり、新しい仕事やプロジェクトに取りかかるのが難しくなります。また、自分がよい仕事をしているとは思えなくなり、不安やストレスを感じるようになるのです。

このサイクルを断ち切るには、メンバー同士が定期的に協力し合い、コミュニケーションをとることが必要です。これはリモートチームやハイブリッドチームの場合、二重の意味で当てはまります。また、ブレインストーミングを行い、一緒に新しいアイデアを出すなど、チーム内で交流し、楽しむことも大切です。

さらに、完全にオフィスにいるチームでも、チームメンバーへの十分なフィードバックに苦労しているチームが多いようです。しかし、これはとても重要なことなのです。チームメンバーは何を改善すべきか、どの方向に進むべきかを知るためにフィードバックを求めています。また、評価されていると感じることも重要です。これこそが「先延ばし」を防ぎ、効果的に働くチームにするためにできる最も基本的なことなのです。