パズルデザインのメソッド:「困った!」ではなく「アハ!体験」を作るために

パズルデザインのメソッド:「困った!」ではなく「アハ!体験」を作るために

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ストーリーとスケールを設定する 

出来の良い物語が嫌いな人は居ないでしょう。新しいゲームやプログラムを作る時(特にゼロから作る時)は、テーマがプロジェクトに進むべき方向や美的感覚を与えることによって、物語を紡ぎ出すことが始まります。しかしブレインストーミングの段階では何でも思い付くものの、その全てのアイデア、特にストーリー性のあるものが、最終的に上手くいくとは限りません。


パズルデザインの開発においては、ゲームやパズルのタイムスパンを適切に設定することが重要になってきます。アイデアが動き出した時、このロジスティックスこそが現実的なスケールでプロジェクトを進め、ストーリーの形を浮かび上がらせる基になるのです。

他のストーリーテリングのジャンルでは、台詞やアクション、あるいは何かしらの外からの力によってプロットが前進します。一方脱出ゲームや街歩き謎解きでは、パズルがプロットのポイントとなり、プレイヤーを前進させるための興奮と好奇心の源となります。ということは、どんなに優れたデザインや丁寧なストーリーテリングでも、パズル自体が満足のいくものでなければ意味がないということです。

パズルにできる可能性のある素材は無限にありますが、個々のパズルの成否に直結するような性質のものも存在しているという発見もありました。

所要時間とタイミングを見極める


脱出ゲームに関しては、まずプレイヤーが「閉じ込められる」空間があることが前提です。では、人はどのくらいの時間であれば、娯楽のために監禁されていられるでしょう?もし何時間も掛かるような野心的なプログラムを制作しているのであれば、その場合は食事やお手洗いの時間を確保しておく必要が出てきますからね。

では具体的に、脱出ゲームの基本ユニットからスタートして考えてみましょう。プレイヤーは空間やアイテムを探索して自分達の進む方向性を定めますが、何かに阻まれてそれ以上進めなくなります。そこでプレイヤーは課題を精査し、それを解決するために必要なピースを探し、いくつかの仮説を立てて検証します。そして正解に辿り着くと、喜びと興奮に包まれると同時に新たな空間や物体が現れる…というサイクルが繰り返されるのが脱出ゲームです。

単体のパズルやゲーム自体がすぐに終わってしまうのは、簡単すぎて「あっ!」と思うようなサスペンスが足りていない証拠です。しかし逆に難しすぎると、プレイヤーはイライラして飽きてしまい、「あぁ…そうすれば良かったのか…」と萎えてしまうでしょう。理想としては、5分以上10分未満で解くことができるのが、やりがいのあるパズルのサイクルです。これをいくつか重ねることで、30分から1時間程度のゲームが仕上がります。

安定性と復元力を確保する 

 どんなゲームであっても、大切なのはプレイヤーに「自分の冒険」に没頭してもらうことであり、「次のプレイヤーのためにゲームをリセットする」という工程を考慮させるのは適切ではありません。製作者はプレイヤーが自由に冒険できるようにすることと、きちんとメンテナンスされた小道具やデザインをプレイヤーに壊されないようにすることの間で適切なバランスを取る必要があり、実際これが作業の難所でもあります。


スマートフォン版の脱出ゲームでは、謎を解くために非常に破壊的なアクション(「ナイフでソファを切り裂け!」「 時計を壊して電池を取り出せ!」「上着に火をつけて投げろ!」など)が採用されていることが多くあります。その影響かは分りませんが、残念なことに、私たちのリアル脱出ゲームにおいても「この小道具を真っ二つにすれば中に何かあるに違いない!」と確信し、興奮しすぎてしまったプレイヤーも実際にいるのです。

また、目先のことに囚われて自滅してしまったこともありますのでお話ししておきましょう。以前、大皿に盛られたオードブルの配置をテーマにしたイベント用パズルを開発しました。とても良いアイデアだったのですが、ここで予想外の展開が。なんとプレイヤー達は一日中何も食べていない状態でこのイベントに参加していたのです。楽しく美味しいはずのパズルは、あっという間に普通の美味しいオードブルとして消え去ってしまいました…

プレイヤーが普段接する機会がないアイテムに触れられるような面白いパズルを提供していれば、備品の多少の消耗は仕方がないものです。「侍  幕末の究極の選択!」と名付けられた私たちのパズルでは、プレイヤーはアンティークの武将の甲冑を組み立てることが求められます。


この甲冑は実際の戦にも耐えられるように設計されたリアルなレプリカですが、脱出ゲームで使用される方が間違いなく大きなダメージを受けていることでしょう。しかしそれによって、プレイヤーには無理のない範囲で、博物館では通常禁止されているような体験を楽しんでもらうことができました。

集中力とその低下を考慮する


数字、色、形、なぞなぞ。多くのパズルはこれらの基本要素によって生み出されています。これらのピースを正しい組み合わせで配置すれば答えが見えてきますが、組み合わせを間違えると、プレイヤーは混乱して答えから遠ざかります。

パズルデザイナーは誤解を招くような「目眩まし」や「偽情報」を加えることがしばしばありますが、明らかに気が散るようなミスリードは避けるべきでしょう。約10分という限られた時間しかない中でプレイヤーを無駄に迷わせることは、顧客満足に繋がらないということを覚えておく必要があります。


私たちのゲームは、プレイヤーに異なる考え方を求めるように作られているので、いずれのパズルも幅広いアプローチが可能になっています。しかしその対価として、チーム内の力関係がパズルデザイナーの意図を台無しにしてしまうことがあります。一人のプレイヤーがアイテムの何に執着し、解答に繋がると確信してチームを強引に引っ張っていくかは予測ができないからです。逆に、パズルデザイナーが「この見方しかできない」と思っているパズルを、プレイヤーがまったく違う見方をしているのを見て、驚く(たまに落ち込む)こともあります。

前提にできる「常識」の範囲を見極める

視点といえば、知識や情報を得るために非常に重要なのがこの最後のポイントです。トリビアやなぞなぞをベースにしたパズルでは、「誰も知らないこと」によって躓いたように感じて、プレイヤーが混乱したり、諦めてしまうことがあります。実際、毎日のように「ベートーベン」を知らない、書き方も分からない人が世界中で生まれています。スマホを手放してゲームを楽しんでいただくということは、「ゲームをクリアするためには予備知識も含めて何も準備する必要はありません」という約束をしているようなものなのです。「常識」の前提をどこに置くかが非常に重要であるということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

これは広い意味で、親しみやすさと包括性の問題とも言えます。私たちのチームの目標は一人でも多くの方に私たちの作品を楽しんでいただくことです。言語や文化は、あくまでゲーム全体を印象付けることに貢献するものであって、障害になってはいけません。チームビルディングのゲームでは、プレイヤーは必然的にお互いの隠れた才能やスキルを知ることが重要なのです。

私たちが数学や論理の問題を用いてプレイヤーに頭を使う機会を与えるのは、何よりもパズルを解くことが魅力的だと思うからです。与えられた内容を積極的に検討して結論を出すことは、満足感があり、気持ちが良いものであります。そして、プレイヤーに「あ!そうだったのか!」という満足感を与えることが、私たちの最大の仕事なのです。

そんな私たちが作る最新の街歩き謎解き「なぞたび 横浜」は10月1日に発売開始予定です!その他の街歩き謎解き「なぞたび」シリーズについての詳細はShopifyでご確認ください。また、各種チームビルディングについての詳細は、公式サイトをご覧ください。

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