パズル思考:パズルを解く力を使ってチームで問題を解決する方法

パズル思考とは、インバイトジャパンが開発した新しい思考モデルであり、チームの好奇心を刺激し、効果的かつ人間関係を構築しながら問題を解決することを目的としています。 

今月はずっと、さまざまな思考法やモデルについて議論してきました。デザイン思考、ラテラル・シンキング(水平思考)、システム思考、クリエイティブ・シンキング(拡散思考思考)、ロジカル・シンキング(収束思考)、そして職場におけるさまざまなタイプの思考者についてのモデルについてなど。その目的は、さまざまなスタイルの思考をチームで活用することで、問題を違った角度からとらえ、新しいアイデアや創造性の道を切り開くことを意識することにあります。

そしてこのシリーズを終えるにあたり、私たち独自の思考モデルを作ってみたら面白いのではないかと考えました。インバイトジャパンのチームビルディングのアクティビティの多くはパズル(謎解き)が中心なので、当然、私たちの思考モデルを「パズル思考」と呼ぶことにします。

デザイン思考がウェブベースのデザインやUXから、システム思考がシステムやソフトウェア工学からヒントを得るように、パズル思考はパズルとその操作方法をベースにしています。

私たちインバイトジャパンは、2015年から謎解き事業に取り組んでいます。脱出ゲーム施設を運営し、パズルを使ったオリジナルのチームビルディングプログラムを考案し、何百もの様々なチームが私たちのゲームをプレイする様子を見てきました。そのため、パズルの仕組みやチームへの効果に関しては、豊富な経験と知識があると自負しています。

そのため、私たちのパズル思考モデルはこうした制度的な知識や情報の多くを抽出したものとなりました。そして、このモデルはパズルを解くことから得られる教訓を、チームが現実世界の課題解決にも活用できることを示しています。

では早速、パズル思考をご紹介しましょう。

「パズル思考」モデルの基本的な考え方

このモデルの根底には、私たちのパズルへのアプローチを定義する「好奇心」と「ラテラル・シンキング(水平思考)」という2つの基本コンセプトがあり、これを念頭に置きながら、残りのモデルを進めていくことが重要です。

好奇心

好奇心を持つということは、新しい情報や体験に対してオープンであること。新しい状況はすべて、新しいことを学ぶチャンスであり、失敗さえも新しい知識の源となり得ます。

そして、「好奇心を持つこと」それ自体が、実際にパズルに取り組み、自分自身に挑戦することに繋がるため、パズルを解く上で非常に重要なことです。好奇心がなければ、パズルを解く楽しさは生まれないことでしょう。

このように、好奇心は期待から自分を解放する方法と言うこともできます。世界に対して好奇心を持つということは、何が起こるかわからない、自分が正しいかどうかわからなくて構わないということです。むしろ、何が起こるかを見守り、その結果がどうであれ、それを知ることを楽しみにするのです。

ラテラル・シンキング(水平思考)

ラテラル・シンキングについては、別のブログ記事で詳しく説明しました。簡単におさらいすると、ラテラル・シンキングとは、複数の可能性や多角的な視点を見ることを重視する思考の一種です。

ラテラル・シンキングは問題を「縦に見て」すべてのアイデアを問題の中心に集めるのではなく、問題からアイデアを分岐させ、新しい見方や解決方法を見出すことを可能にします。  

そして、ラテラル・シンキングは、パズルとは何か、パズルが何をするものかということの基礎となるものです。パズルは通常、問題の通常の見方を試すような 「ひねり 」を含んでいます。これは最終的に、パズルが生み出した視点の変化を認識し、自己認識の機会を増やすという、有名な「アハ体験」と呼ばれるカタルシスの瞬間へと導きます。

つまり、パズルの本質はラテラル・シンキングに依存しているのです。ラテラル・シンキングは好奇心と同じように、前提や条件を緩める必要があります。ラテラル・シンキングとその可能性を本当に吸収するためには、普段の考え方や、物事が「こうあるべき」という期待を捨てなければならないのです。

パズルの思考プロセス 

1. 現在位置を知る

パズル思考のプロセスの最初のステップは、次にどのパズルをやるかを探すことです。脱出ゲームのようにパズルでいっぱいの部屋に居る場合は、順番がはっきりしないので、どれが次のパズルなのかを探さなければならないということもあるでしょう。これはどこに注意を向けるべきかを選択すると言い換えることもできます。このステップの重要性は明らかであり、次にどこに行きたいのか、次に解く問題を何にしたいのかを決める必要があるのです。

2. 観察する

次に何に取り組むのかが決まったら、そのパズルや問題を取り巻く地域や状況を観察し始めると良いでしょう。あなたの近くや周りにあるものを見てください。何が見えますか?何か欠けているものや、場違いなものはありませんか?近くに手がかりはありますか?何かパターンが見えるものがありませんか?

ここで大切なのは、「視点」です。時には一歩下がって、そのエリアの全体像を見ることや、近づいて細部を調査すること、或いは問題そのものをひっくり返すことも必要になるでしょう。このとき、視点を変えて遊んでみてください。そして、たとえ仮説ができても、それに固執しないことが重要です。

実は、この段階で自分がどう考えているかを「観察」することもできるのが面白いポイントでもあります。緊張していないか、焦っていないか、できるだけ早く終わらせようとしているのか、それともすべての選択肢を検討する余裕があるのか。自分の感情や思考パターンを観察してみると、客観的で中心的な視点を保つことができるようになります。 

3. 想像する 

次は、パズル思考のプロセスの中で、頭を自由に使えるようになる段階です。問題が見えてきて、文脈や状況を観察したら、次は解決策をブレインストーミングで考えてみましょう。

ここでは「想像する」という言葉を意図的に使っています。問題に対する解決策を「想像」し、パズルに残された「穴」をどのように埋めるかを考える必要があるのです。ラテラル・シンキングにも通じますが、自分の想像力を抑制せずに、できるだけ多くの解決策を考えてみることが大切です。なぜなら、たとえバカバカしいと思ったり、無理だと思ったりしても、それが後に正しい道を見つけることに繋がるかもしれないからです。

4. 決定する

解決策をいくつか思い浮かべたら、次は実際にどれにするかを決める大変な作業です。このステップでは、自分のアイデアにコミットする、或いはそれを実行に移すことになります。まだ迷いがあるにしても、自分の決断に自信があるから実行するのでしょう。しかしその瞬間、自分のすべてがそのアイデアに集約され、選択したことになるのです。

状況によって判断の仕方は当然違ってきます。時間的な制約があるかもしれませんし、他の仕事もあって忙しいこともあるでしょう。或いは、他の人と一緒に決断を下すこともあるかもしれません。その場合、どのようなアイデアを実行すべきかについて、意見が対立する可能性もあります。いずれにせよ、このステップに注目し、自分がどのように意思決定を行っているかを確認することは、次回も同じプロセスを繰り返す(あるいはより良くする)ために重要なことです。

5. 振り返る

アイデアを実行に移したところで、振り返りの時間をとります。この振り返りには、アイデアを実行したときに気づいたことや、周りの人からの批判など、どんなフィードバックでも構いません。一人であれ、グループであれ、「聞く」「吸収する」ということが、この振り返りの大きなポイントになります。

パズルを解く場合、解けたかどうか(正解だったかどうか)がすぐに結果としてフィードバックされます。鍵が開いたり、新しいアイテムが出てきたり、自分の答えが正しかったことが何らかの形で示されたりするので、分かりやすいポイントです。

それに加えて、何が正しくて何が正しくなかったのかを自問自答してみましょう。自分の決断に対してどのような感情を抱いたか、また、自分の決断のプロセスを改善することができたかどうかを書き留めておくこともおすすめです。

6. 前進する

パズルの思考プロセスの最後の段階は、次に進むことです。前の段階と矛盾するようですが、可能な限り振り返りや反省をしたら、次の問題に移ったり、別の方法を試したりすることが大切なのです。失敗したことや思ったようにいかなかったことをくよくよ考えても、何も変わりません。変えることができるのは、次のチャレンジのときの行動だけなのです。

前に進むことは、忘れることではありません。勝利を祝い、失敗を反省する。しかし、同じ場所、同じ思考空間に留まらないことが大切です。チャレンジは、自分自身やチームをより良くするという大きな課題の中の1ピースに過ぎないと考える方が、ずっと重要であり、長期的にはより成長することに繋がります。大切なのは、前に進み続けることなのです。

その結果、一人ではできないことを認め、外部の助けを求めることになったとしても何ら問題ありません。多くのプレーヤーは助けを求めることに気後れしてしまうものですが、実際には、それは失敗の兆候ではなく、前進するための方法であり、最終的にはより大きな成功に繋がる可能性があるのです。

パズル思考から得られるチームへの教訓

これが、私たちが提唱する「パズル思考」のプロセスの概要です。これは基本的なアウトラインであり、将来的にはさらに発展させる予定ですが、現時点でこのモデルから得られる重要な教訓と学びをいくつか挙げておきます。

1. 失敗しても大丈夫 

パズル思考は「失敗を恐れないこと」をチームに促します。チームはさまざまなアイデアを想像したり、できる限りそれを実行に移すことや、同じ問題に対して異なるアイデアを試すことを恐れてはなりません。もし成功しなかったとしても、チームは何かを学んだのだから、別のアイデアに移ることができると考えるべきなのです。 

それとともに、「外部に助けを求めても良い」ということを頭に置いておくことも忘れてはなりません。本当に行き詰まったとき、人は他の人の助けを得ることで前に進むことができるものです。プライドを持つことは、目標達成の妨げになることもあるということを覚えておきましょう。

2. 成功に必要なツールはすぐそばにある 

つまり、答えはたいてい目の前にあるということです。パズルの場合、成功に必要なものはすべて身の回りにあります。それを阻んでいるのは自分自身の視点です。視点を変えれば、自分が見落としていたものが見えてきます。チームも同じで、どんな問題でも解決できるリソースは既に持っているもの。必要なのは、彼らがすでに持っているツールやスキルに気づくことなのです。

3. できるだけ多くの視点とスキルを組み合わせる

パズルを解くためには、常に新しい視点を持ち続けることが必要であり、それが新しいパズルが出てきたときに役立ちます。パズルだけでなく、日常や業務におけるあらゆる問題にも同じことが言えるでしょう。ですから、多様な視点で構成されたチームを持つことと、その視点からの意見に耳を傾け、学ぶ時間が大切なのです。同様に、複数のスキルをバランスよく身につけることで、将来的にチームはよりレジリエント(高い回復力を持ったもの)になり、さまざまなタイプの問題を解決することができるようになります。

4. 期待や思い込みに挑戦する

パズルを解くと、自然に自分の思い込みや期待に挑戦することになります(以前、ラテラル・シンキングについて説明したときと同じです)。予想外のギミックやパズルは、「こうあるべき」というあなたの思い込みを利用して仕掛けられているからです。

そして、「パズル思考」はこの姿勢を現実の世界にも持ち込むことを勧めています。「世界はこうあるべき」「各チームはこうあるべき」という思い込みや期待を捨てることで、チームは周囲の制限を受け入れる代わりに、自分たちの可能性を真に発揮し、自分たちの言葉で世界を変えることができるようになるのです。そうすることで、チームは自分たちの枠を打ち破り、限界を超えることができるでしょう。

チームビルディング完全
ガイドブック

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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。