パンデミックが始まって以来、特にここ数ヶ月は、「レジリエンス」という言葉を、新聞、雑誌、オンライン、ポッドキャストなどあちこちで見かけるようになりました。Appleのティム・クックも決算説明会でこの言葉を使っていました。健康、疫学、政治、国際関係、経済、心理学、気候科学、都市計画、さらにはチームビルディングなど、さまざまな分野で使われています。
「レジリエンス」が注目されているのには理由があります。今、私たちは生活や社会の中で大規模な動乱や変化を経験しています。これからご紹介するように、「レジリエンス」はこの時代であらゆる考えが結合してたどり着いた言葉であり、特定の課題について考え、それに対応するための方法として用いられているものです。
今回のブログ記事では、「レジリエンス」とは何か、なぜ多くの人がこの言葉に注目しているのか、そして「レジリエンス」が今このタイミングでチームを考える上で、いかに強力なコンセプトとなり得るかについてお話しします。この記事は、今後数ヶ月の間に主要なテーマになると思われる用語のご紹介だと思っていただければ幸いです。
「レジリエンス」とは?
レジリエンスとは、危機に適切に対応し、危機によって変化する状況に適応し、危機が去った後に再び前進する能力のことを言います。レジリエンスが危機や困難と結びついているということは既にお分かりいただけると思いますが、実際、これらの言葉を使わずにレジリエンスを定義することはほぼ不可能です。
これは重要なポイントと言えるでしょう。レジリエンスとは、危機を回避したり、危機が起こらないように想像したりすることではありません。むしろ「危機に備え、危機に適応する方法」を学ぶことを意味するものなのです。
もう一つの重要な点は「危機の循環性」との関連です。危機を嵐のように考えると、嵐が来た「瞬間の衝撃」、「乗り切らなければならない」嵐の期間、破片を拾い集めなければならない嵐の「余波」があります(最初に、嵐が来ることに気づき、それに「備える」という別のステップを加えることもできます)。
このような危機の各段階において、レジリエンスは鍵となります。特に最後の段階では、忘れてしまったり、すぐに次のステップに進みたくなってしまうことが多いからこそ重要だと言えるでしょう。私たちはしばしば、危機が永続的なダメージにつながったり、時には他人の助けを借りて対処しなければならない程の痛みをもたらしたりすることを忘れてしまいがちです。また同時に、本当の意味での反省と改善の意志がある限り、危機は有益な変化をもたらす強力な動機にもなり得るということも忘れてしまいがちです。
いずれの場合も、レジリエンスについて考えることが役立つでしょう。レジリエンスとは、危機に正面から対応し、そのために必要な困難な仕事やタスクから逃げないことと結びついているからです。
なぜ今「レジリエンス」について考えるのか?
「危機」と言えば、明らかに今私たちは大きな危機に直面しています。コロナウイルスのパンデミックは、間違いなく私たちの多くがこれまで経験したことのない危機でしょう。だからこそ、人々はどのように行動すべきか、その後どのように前進すべきか、そして将来のこのような状況にどのように備えれば良いのかを考えているのです。
しかしそれだけではないと私は思うのです。パンデミックは私たちの日常生活だけでなく、企業活動や政府の活動にも影響を与えています。また、パンデミック以前から始まっていた多くの変化を急激に加速させ、あらゆる緊張感や不安定感を増大させてもいます。さらに、パンデミックが長期に渡って続くことで、ある種の不安感や緊張感も生まれ始めていることも無視できません。
これらが相まって、社会のあらゆるレベルで大きな再考を迫られています。何が悪かったのか、何をすべきだったのか、どうすればいいのか、あらゆる場面で判断を迫られているのです。 言い換えれば、私たちは「よりレジリエントになる方法」を模索しているということです。
サプライチェーンとSDGsを例に考える
パンデミック以外の例で、人々がレジリエンスについてどのように考え始めているかを見てみましょう。これらの事例がレジリエンスの概念をより明確に説明してくれることを願っています。
1つ目は、サプライチェーン(供給連鎖)に関するものです。過去数十年間、多くの企業(および国)は、安価な労働力と海外での生産、そして高度なグローバル輸送ネットワークとテクノロジーを利用して、「リーン・サプライチェーン」を構築してきました。これは無駄な在庫を抱えることなく、消費者に商品を迅速に「オンデマンド」で供給するという戦略です。また、サプライチェーンの中断の原因となる余剰在庫は、他の企業に委託することができるようになっています。
問題は、この戦略がさまざまな国の多くの可動部品に依存しており、それらすべてが調整され、同期されなければならないということです。大きな危機がない時は問題ありません。しかし昨年も、そして今もそうですが、このシステムは様々な大きな危機にも対応できていないことが明らかになっています。
パンデミックは、気候変動や労働力不足とともに、世界のサプライチェーンやシッピングチェーン(輸送連鎖)に深刻な影響を与えています(今年初めに起きたスエズ運河での事故によるタイミングの悪い船の渋滞も、リーン・サプライチェーンの限界を示しました)。これらを受けて、今多くの人が今後のリーン・サプライチェーン戦略を批判しており、コンピューターチップの不足に再び悩まされることのないよう、グローバルなサプライチェーンの混乱にうまく対応できる、よりレジリエントな戦略を提唱しています。
もう一つの例は気候変動と、この1カ月間何度も話題として取り上げられてきたSDGsです。最近起きている気候災害や悪天候(火災、洪水、ハリケーン、猛暑など)を受けて、多くの人がレジリエンスという言葉を使い、持続可能性にとっての重要性を強調しています。
気候変動と持続可能性の文脈におけるレジリエンスとは、気候変動に適応する方法を考え、都市や社会を再構築することで、気候変動の危機に対応し、人々の安全を可能な限り確保できるようにすることを意味します。既に起こってしまった被害を元に戻すことはできないでしょうから、重要なのはもはや気候変動と「戦う」ことではなく、適応して気候変動と共存し、これ以上悪化しないようにすることを学ぶことなのです。
これは最初は悲観的なアプローチに見えるかもしれませんが、実は「戦略としてのレジリエンス」の方が現実的なのです。欲しいものがすべて手に入るとは限らないし、世界が思い通りになるとも限りません。私たちにできることは、可能な限り適応し、経験から学び、そこから成長することです。この考え方にはある種の謙虚さもありつつ、ある意味では希望をより身近なものにし、構想や実現をより可能に近付けるものでもあります。
チームビルディングとのつながり
レジリアンスとチームビルディングについては、今後のブログ記事でさらに掘り下げていこうと思います。しかし今ここでは、チームとチームビルディングに関連して、レジリエンスについて考えるためのフレームワークを整理してみたいと思います。
レジリエンスがチームに役立つ主な理由の一つは、物事が上手くいかないときに何が起こるかを明確に考えることができるという点です。すべてが永遠に上手くいくと思いたいところですが、危機や困難は大小様々、個人的なものから公的なものまで、常に発生しています。危機が訪れたときにチームが行動できるように、危機にどう対処し、適応し、そこから学ぶかを考えるということに、チームは慣れる必要があります。
そのためには準備が大切です。レジリエンスは、危機が訪れたからといって自動的に現れるものではありません。あらかじめ浸透させておく必要があるものです。チームの場合、レジリエンスとは、コミュニケーション、コーディネーション、そして、チームメンバーが自立しつつもチームとの繋がりを感じられるようなシステムを意味します。そのためには事前の練習やある種の作業が必要です。
チームビルディングは、チームのコミュニケーションスキルやチームワークをテストし、より強い人間関係を構築し、チームの結束を促すのに役立ちます。また、チームメンバー同士がよりオープンで正直になることで、チームの心理的な安全性を高めることができます。これらはすべて、チームがより強い回復力を持つための準備なのです。
だからこそ、考え抜かれた反復的なチームビルディング戦略を実施することが非常に重要なのです。多くのことが起きている今、より強いつながりを築き、起きている変化に適応し、自分たちの未来をどうしたいかを一緒に考えることを大切にするチームが生き残っていくことは、想像に難くないでしょう。
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