こんにちは。
東京オリンピックも早くも折り返し地点。
各競技の結果は勿論、人種や政治、選手のメンタリティなど、様々なトピックが話題になっていますが、実は今回の東京2020大会には「Be better, together より良い未来へ、ともに進もう」という「持続可能性コンセプト」なるものが掲げられているのをご存じでしょうか?
敏感な方は既にピンと来ているかもしれませんが、これは国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に貢献することを目的としたコンセプトです。
「持続可能な開発目標(SDGs)」は昨今様々な企業や行政団体が積極的に協力を表明しているため、CMや電車の中、街中でも目にしたのを記憶している、という方も多いのではないでしょうか?
環境保全に関する一種のブームのような印象があるかもしれませんが、実際人に説明できるほど理解できている人は現段階では多くなく、「とりあえず流行りに乗っておかなきゃ」という印象を拭えない企業広告があるのも事実です。
そこで今回は、今話題のSDGsとは何なのか、何故多くの大企業が取り組んでいるのか、私たちの生活への影響や個人としてどう捉えるべきかなどを解説し、その重要性と本質に迫っていきたいと思います。
SDGsとは?
SDGsは国連で2015年に採択された「Sustinable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までに国連加盟国が達成するべきものとして掲げられた目標です。
日本国内では「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」、海外では「SDG(エス・ディー・ジー)」と主に呼ばれています。
近年急に出てきたもののように思われがちですが、実はSDGs以前にあったMDGs(ミレニアル開発目標/2015年までに達成されるべきものとして採択された8つの目標と21のターゲット)をベースに、MDGsでは達成できなかったものを実現することを目指して掲げられたものなので、以前から長らく存在していたものでもあります。
このSDGsは17の大きな目標と、そのための具体的な169のターゲットで構成されています。
17の目標
このカラフルなイラストは目にしたことがある方も多いかもしれませんね。
「持続可能な開発目標」と聞いて、我々先進国の市民がイメージしやすいのはこのあたりでしょうか?

実際に企業や行政、教育機関としても、このあたりがとっつきやすい、身近なものとしてイメージしやすいこともあってかよく採用されている印象です。
もちろんこれらは非常に大切なことですが、他にも実は教育や貧困、ジェンダーや格差といった人権に関する目標も含まれています。

企業に課せられた目標が多いのも、SDGsの大きな特徴の一つです。MDGsが比較的発展途上国を先進国が支えるという意味合いが強かったのに対し、SDGsは明確に先進国を含む全ての国、企業、団体、市民にあらゆる面での協力と努力を促しています。
2015年までの目標であったMDGsと比較することによって、我々人類が歩んできた道、努力の結果と現在直面している危機が浮き彫りになるのも興味深い点ですね。
非常にざっくりとご紹介しましたが、以上がSDGsで掲げられている17の目標です。
そして長くなるためここでは割愛しますが、この17の目標を達成するための具体的な指標として、169のターゲットが設定されています。より現実に落とし込んで目標をイメージしやすくなるため、興味がある方は以下から是非このターゲットもご確認ください。
JAPAN SDGs Action Platform | 外務省 (mofa.go.jp)
企業が取り組むメリット
とある調査では、2021年6月現在、全国の企業のうち、SDGsの「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と回答したのが14.3%、「意味および重要性を理解し、取り組みたいと思っている」と回答したのが25.4%とのこと。計39.7%が多いと感じるか少ないと感じるかはそれぞれだと思いますが、ポジティブに考えるとしたら、「今からでも遅くない」ということが言えるでしょう。
内部の労働環境改善に関する活動と、消費者の意識向上を目的とした啓発的な活動に分けられる企業のSDGsへの取り組みですが、いずれも膨大な時間と投資が必要なのは間違いありません。では積極的に取り組むメリットは何でしょうか?
一つ目が企業イメージの向上。近年は消費者が製品やサービスを選ぶ基準が変化してきています。良いものを安く買える、というだけではなく、消費者はそこに付加価値を求めるようになりました。サスティナブルな製品であったり、売り上げの一部が寄付されたり、オーガニック商品であったりと理由は様々ですが、企業イメージもその一つとして購買意欲に直結します。直近ではオリンピック開会式の事例が話題にありましたが、消費者は企業や団体や著名人に非常に高いモラルを(時に過敏なほどに)求めているのです。
次が優秀な人材へのアピールです。社内の労働環境に関しても、現代の社会では「内部のことだから」では済まないことが増えてきました。俗に言うブラック企業の内情やあらゆるハラスメントは、思わぬところから世間に露呈し、一度表に出てしまえば回復には途方もない労力を要します。
個人レベルでの情報交換が盛んなこの時代、企業が労働者を選ぶ立場であると胡坐をかいていては、いつの間にか労働者からも消費者からも見放されることになることを認識し、社内モラルの向上や社員のモチベーションの保持といった、優秀な人材を確保するための努力を社内外にアピールすることが重要なのです。
そしてもう一つのメリットは新境地の開拓です。後でお話ししますが、弊社もSDGsをきっかけに新商品の開発が行われました。最初はもしかしたらこじつけのようで「自社には関係ない」と思われるテーマや分野であったとしても、そこを掘り下げていくことで、今まで気付かなかった顧客のニーズや、企業の新たなポテンシャルを発見する可能性は大いにあるでしょう。また、社会貢献という観点から新しいコラボレーションの話が寄せられたり、国際的な視野を持つ投資家の目を引くことに繋がる可能性も高まります。
このように、SDGsは長期的に考えて企業が健全に持続・成長していくためにも重要な目標ということがお分かりいただけたでしょうか。言い方が良くないかもしれませんが、今真剣に取り組んでおいて損はないのです。
道徳とSDGs
このように企業に課せられた目標が多く含まれていることもあって、個人としての取り組み方がイメージしづらい目標も確かにありますが、根本的には結構当たり前のことを言っていると感じるものも多いのがSDGsです。
特に日本の小学校を卒業した人は、これに近い内容の授業を子供の頃に受けた覚えがあるはず。それは「道徳」です。人としての豊かさとは何かを考え、人への思いやりを持ち、環境問題に興味を持ち、「もったいない」の精神を学ぶなど、SDGsも道徳も、根本は同じことを訴えていると言えるのではないでしょうか。
実際に現在の学校教育では、既にSDGsに関する授業が始まっており、子供たちのほうが我々大人よりもこのテーマを自分自身のこととして捉えられているかもしれません。
私たち大人は、もう一度「当たり前のこと」を真剣に考える必要性に迫られているのです。
私たちにできること
このようにSDGsは「流行りのテーマ」で終わらせるには勿体ない、終わらせてはならない、私たちと社会の身近な未来に直結する重要な目標です。
だからといって難しく考える必要はなく、まずは私たちに何ができるのかを知ることから始めましょう。興味を持つこと、考えること、話すこと。実際の行動はその後自ずと付いてきます。
このあたりは子供たちの方が非常に柔軟性が高いと思わされる場面です。子供たちは各目標を自分の身近な出来事に置き換えることができた時、「自分の行動が世界と未来に繋がっている」と素直に受け取めて真剣に考え、行動に移すことをためらいません。
・ごはんを残さない(フードロスを減らす)
・水を大切にする
・ゴミの分別をし、ポイ捨てや不法投棄をしない
・エコバッグを持ち歩く
・モノを大切に使う
・思いやりを持つ
・違いを当たり前のこととして受け入れる
・誰も仲間外れにしない
例え上記のような当たり前のことだとしても、自分で考えて「僕/私はこうしよう」と自分で決めた時、子供たちはただ人に言われて実行する時よりも強くそれを心に刻みます。そして家族や周りの大人の行動を今まで以上によく観察するでしょう。そこで疑問を投げかけられた時、私たち大人はちゃんと「自分の意見」を伝えることができるでしょうか?自身の行動に責任を持つことの重要性を再認識する時なのかもしれません。
大切なのはこの目標の重要性と目の前の問題を認識し、自分自身がそこに貢献する一員であるという意識を持つこと。「できることから始める」で十分なのです。
各国の取り組み
日本の教育の話を少しだけしましたが、私たちインバイトジャパンは多くの外国人スタッフを抱える企業です。そこでスタッフに「あなたの国のSDGsの取り組みの印象は?」という質問を出してみました。すると国ごとにカラーが色濃く出ていることが分かる、非常に興味深い情報が集まりました。
かいつまんで一つのブログにまとめるのはあまりにも勿体ないので、今月木曜日は、アメリカ、フランス、ドイツ、フィリピン出身のスタッフのレポートを、毎週一カ国ずつご紹介していきたいと思います。お楽しみに。
インバイトジャパンのSDGsプログラム
先程お話しした通り、インバイトジャパンでは現在、SDGsに関するプログラムを2つご用意しています。
環境保全をテーマとした街歩き謎解き「なぞたび 日本橋編」と、謎解きを通してクラスメイトとの交流を深めながらSDGsについて考える、学校教育向けのSDGs×街歩き謎解きプログラム「スクール探偵」です。
学校向け SDGs x 謎解き プログラム – Invite Japan
このスクール探偵の制作にあたり、私たちは教育関係者や企業へのリサーチを実施しました。
興味深い捉え方をしている人や、既に出来ることから実践しているという人がいる一方で、「やらなきゃいけない立場だけど、どこから手を付けていいか分からない」という素直なご意見を出してくださる方も少なくありませんでした。地球規模の人類の目標を掲げられてもピンと来ないのは当然のことと言えるでしょう。
そこでインバイトジャパンは、「スクール探偵」の事後学習教材を合わせて制作し、さらにご要望に合わせてSDGs講義も実施できるようにしました。この講義が大人からも大変ご好評頂いており、SGDsについての理解をざっと終わらせたいというカジュアルなご要望から、企業の今後の指標を定めるための取っ掛かりにしたいという内容まで幅広くご相談を頂いています。
学校向け SDGs x 謎解き プログラム – Invite Japan
是非お気軽にお問合せください。
最後に
さて、ここまでSDGsの概要からその意義、個人でできることを駆け足でお伝えしてきました。地球規模の課題も、噛み砕いてみれば私たちに関わりがないものでも、難しいものでもない、という意識を持つお手伝いが出来ていたら幸いです。
折角ですから、「今までのツケを払わされている」といった方向ではなく、「人類の今までの歩みや努力があるからこそ、今取り組む力がついた」とポジティブな方向から捉えていきたいものですね。社会の繋がりが薄れ、個に目を向ける時間が増えた昨今だからこそ、人として大切なことの基本に立ち返って見つめなおし、話し合ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
先ほどもお伝えした通り、次回から今月の毎週木曜日は各国のSDGs取り組み状況に関する社内スタッフからのレポートをご紹介していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに。
ではまた!