8月頭から1か月、毎週木曜日はインバイトジャパンの国際色豊かなメンバーによる、各国のSDGsの取り組み状況に関するレポートをお届けしてきました。
今回はそのまとめと、これらを踏まえて私たちが今後目指すべき道筋を改めて考えてみようと思います。
ここまでアメリカ、フィリピン、フランス、そしてドイツ(こちらは個人的な生活に基づく内容ですが、興味深いレポートですので是非併せてご覧ください)とご紹介してきましたので、まずは各国/各都市のレポートを簡単に振り返ってみましょう。(詳細は各リンクからブログをご確認ください。)
アメリカ「アメリカにおけるSDGs:今、何が起きているのか」
アメリカは高度に発展した裕福な国であるため、SDGsの達成に向けて順調に進んでいるのではないかと思われるかもしれません。しかしアメリカはSDGs目標への到達状況において、全世界の国の中で35位と、世界の先進国の中で最も低い順位です。
このような低い順位になっている理由はいくつかありますが、いずれも気候変動や都市の持続可能性に関わる問題に対して、国がリーダーシップを発揮できていないことが関係しています。大統領が変わるごとに政府の方針も変わるため、政策に一貫性がなくなり、長年に渡ってSDGsに含まれる問題を解決するための計画を誰も打ち出すことができていないのです。
また、地域開発や都市の持続可能性の問題に関する責任は州政府と主に地方自治体に掛かっているため、SDGsの多くを達成しようとする試みに成功している地域もあれば、遅れをとっている地域もあり、全米の州や地域、都市によって大きな格差が生じています。
しかし各都市は今、「この街は今までこうして生きてきたのだからしょうがない」という固定概念を打ち破り、それぞれの進化を目指しています。彼らは多くの課題があることを知っているからこそ、自分たちの優先順位に合ったSDGs目標に焦点を当てて独自の行動を取ることができるのです。州政府と自治体の権限が大きいからこそ実現できる、独自の未来築くチャンスとも言えるかもしれません。
そしてそれと同時に、トップから組織された政策が必要だということに気が付きつつあるようです。
Leeがこの記事を書いていた当時、地域のインフラや交通システムを改善するための資金や資源提供を目的とした1.5兆ドル(約165兆円)の巨大なインフラ法案が議会で交渉、調整されていました。またさらに、電気自動車の増加などの気候変動対策プロジェクトや、保育園や高等教育に資金に資金提供し、アメリカの医療インフラ改善を目的とする3.5兆ドル(約384兆円)規模という別の巨大な法案の提出もあったとのことです。
これらの成立の可否に関わらず、これらの計画は、アメリカをより持続可能な国にしようという決意と、そのために何ができるかという人々の想像力が広がっていることを示しています。
フィリピン「フィリピンにおけるSDGs : データで見る進捗状況と独自の目標」
先進国に数えられつつも、まだ遅れを取っていると自覚するフィリピンでは、SDGsと並行して独自のAmBisyon Natin 2040を打ち出しています。AmBisyon Natin 2040 は、フィリピンの人々が描く自分自身と国のための長期的なビジョンと願望を明確にしたものであり、2040 年までにどのような生活をしたいか、どのような国にしたいかという国民の希望が記されています。
また、フィリピンの独特な点として、政府と非政府組織の協力を非常に重要視している点が挙げられます。Philippine Development Plan(フィリピン開発計画/PDP)という、国家統一の基盤を形成し、少なくとも4つの政府行政機関の計画努力を促すことを目的とした計画をも同時に遂行しているのです。
そして現在および将来の開発が現在の世代の犠牲の上に成り立つことがあってはならない、経済成長のために環境保全が犠牲になってはならないという強い意志も示しており、これらを組み合わせて、フィリピン人が「マタタギ(しっかりと根付いた)」、「マジンハワ(快適)」、「パナタギ(安全)」な生活を送るための持続可能な長期的プランを立てています。
フランス「フランスにおけるSDGs:グラン・パリ計画(より偉大な、より良いパリを築くための巨大プロジェクト)」
フランスでは既に完成されたように見える世界的大都市のパリを再開発し、その恩恵をより多くの人に広げるような大規模都市再開発計画「グラン・パリ(Le Grand Paris)」が進行しています。
SDGsに沿って設計されたこのプロジェクトによって、パリとその周辺都市の移動がより簡単になり、より良い交通手段を活用することで二酸化炭素排出量の削減が可能になります。また同時に、仕事、文化、教育、スポーツへのアクセスに関して、パリ中心部だけでなく、新しいメトロポール「グラン・パリ」に住むすべての人の地域的な不平等の軽減も見込まれています。
ドイツ「ドイツ人が日本で考える「私にできるSDGs」 : 今ある選択肢を見つめなおし、世界に変革をもたらす」
Annaは自国のSDGsの進捗状況に関する調査における早い段階で「自分が生活する環境の中で、自分自身に何ができるだろう」と考え始めました。そこで今回は、SDGsに貢献するために日常生活の中でできること、変えることができそうな習慣、身近にある小さなことをご紹介しています。
まず手始めに、Annaは自分自身のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を知ることにしました。自身の居住環境や生活習慣をもとに、とあるサイトで計算した結果によると、Annaの年間の二酸化炭素排出量は12.58トンで、これは180本の木に相当するとのこと。ひとまず指標となる数字は得ることができたAnnaは、ここから具体的な行動を見直して行くことにしました。
・普段使用するウェブブラウザを、植樹活動に貢献できるものに変更する
・嗜好品のカフェインをどの商品から摂取するのが環境に優しいのかを検証する
・牛乳と植物性ミルクの差はどの程度あるのかを検証する
などに着手したのち、Annaは以下のようにまとめています。
「私は第一世界の国に住む一個人に過ぎないので、2030年までにSDGsの目標を達成するために私ができることは僅かです。それでも私は日常生活の中で、最小限の、よりエコで倫理的な選択をすることができますし、このようなブログ記事を書くこともできます。そして最も重要なのは、自分の財布で投票することです。結局、世界に大きな変化をもたらすのは、大企業や社会構造でしょう。だからこそ、私たち全員が善良な人々から少し多めに購入し、悪質な人々からは少し少なめに購入することで、私たちが望むこと、つまり、地球上のすべての人に良い生活を送ってほしいということを伝えることができるのです。」
これからの10年を人に任せるか、自分の足で歩くか
ここまで、この1か月のブログを簡単に振り返ってきました。このたったの数カ国の比較だけでも、それぞれの掲げる目標、抱える課題、道のり等の違いを実感していただけたことと思います。
2015年に採択され、2016年から取り組みが始まり、オリンピック・パラリンピックなどの助けも借りてようやく一市民の間にもなんとなく浸透してきたように感じるSDGs。さて、期限がいつまでだったかを覚えていますか?そう、2030年。既に10年を切っているのです。SDGs推進本部は「SDGsアクションプラン2020」の副題として「行動の10年」を掲げました。2021年のアクションプランには感染症対策なども盛り込まれており、流動的かつ難しい時代ではあることを実感するものの、今はより具体的なアクションが求められるフェーズに入っているのです。
そこで一般市民の私たちにまず求められることは、「この壮大な地球規模の目標は、遥か未来の見知らぬ人類のためのものでない」と認識することです。これは「今の自分とその子供たちの目の前にある未来のための目標である」と意識を変えることが、大切な第一歩となるでしょう。
そして次に、これは大企業や政府による大きな事業や政策によってのみ進むようなものではないことを知りましょう。一人ひとりの小さな積み重ね無くして、この壮大な目標の達成は成し得ません。Annaは「財布で投票する」と表現していましたが、「一つひとつの選択で、意思表示していく」ことは、私たちが想像するよりももっと意味があることなのです。
大人が選択の基準や行動の責任を意識することで、それを見た子供たちは必ずそこから学び、より良い未来を目指す心を純粋に育んでくれます。それにより、この重大さを理解する企業は「見られている意識」を持ち、消費者の意志を汲んでさらに大きな行動に移してくれることでしょう。そして政府がその動きを国民の意志として捉えて実行するという道筋を、私たち個人から作るのです。
SDGsをより身近に捉え、身の回りの「当たり前」を一つずつ見直すことを通して、未来に目を向けてみませんか?
私たちインバイトジャパンは、SDGsを楽しみながら学べる製品もご用意しています。学生向けだけでなく、企業や自治体向けのワークショップもご好評いただいていますので、是非お気軽にお問い合わせください。
学校向け SDGs x 謎解き プログラム – Invite Japan
SDGsの知識を深め、時代を掴むためのきっかけとしていただければ幸いです。