システム思考:チームのレジリエンス(回復力)と創造力を融合させる方法

システム思考は、チームが問題に対してより前向きで全体的なアプローチをするのに役立ち、チーム全体の視点を変えることができるものです。

チームビルディングや生産性モデルで見られる問題解決の方法のほとんどは、逐次的または直線的なものです。つまり、問題があって、その具体的な解決策を見出そうとするということです。このブログではラテラル・シンキング(水平思考)やデザイン思考など、必ずしも直線的ではなく、線からはみ出した色彩を持つ別の思考法も提案しようと試みています。

しかし、これらの思考モデルでさえ、特定の問題に対する解決策を見つけることに関心があるものであり、たとえその解決策を他の場所で探すことを意味していても、それは変わりません。しかし、もし問題解決方法が、その問題だけに焦点を当てるのではなく、むしろズームアウトして大局的に見ることだとしたらどうでしょう。もし、問題が孤立して存在するのではなく、問題がより大きなシステムや他の連動する問題からどのように影響を受けているかを理解することが、持続可能な解決策を見つける鍵だとしたらどうでしょうか。

システム思考の導入

システム思考の大前提として、問題を解決するためには、その問題に影響を与えている大きなシステムや構造に目を向けて、修正可能なポイントを見つけることが重要であるという考え方があります。

重要なことは、問題を評価する際には、文脈、視点、そして全体像が重要であるという点です。これは以前にも少し触れましたが、全体的な状況を把握するために、より広いレンズから問題を見るという意味で、「ホリスティック思考」とも呼ばれています。

もうひとつの重要なポイントは、問題は相互に関連しており、互いに分離して存在するわけではないということです。チームにおいては、対人関係の問題が仕事の成果に影響を及ぼしているということもあるでしょう。あるいは、マネジメントの問題がチームの効率に影響を与えていることもあるかもしれません。あなたのチームにおいて創造性が阻害されていると感じている?もしかしたらそれは、時間管理の問題など、一見関係なさそうなことが関係しているかもしれないのです。

この2〜3年の経験から、この視点を得た人は多いと思います。新型コロナウイルスは主に公衆衛生の問題でしたが、それだけでなく公衆衛生と仕事の不平等、医療品やサプライチェーン全般へのアクセス、強力な政府機関の必要性、誤情報など、他の問題との関連性が露呈しました。

ズームアウトして相互に関連する問題を見ることは、最初は難しいし、かなりフラストレーションが溜まるという人もいるでしょう。しかしそれは、長期的に見れば、チームが強くたくましくあるために、非常に必要かつ有益なこととなります。複雑な問題や「邪悪な問題」をシステム思考の観点から見ることは、結果的にチームをより複雑な問題に対処しやすくし、現代において培うべき有用なスキルなのです。

そこで今回のブログ記事では、システム思考とは何か、そしてあなたのチームがどのようにシステム思考を活用できるかをご紹介します。

システム思考とは?

1. システムを理解することは、文脈を理解すること

まず、「システム」とは何かということから説明しましょう。システム思考は1950年代に始まり、コンピュータ工学とその時代に起こったハイテクコンピュータシステムの台頭から多くを借用しています。システムとはさまざまなコンポーネントや機能が連動して動作する、より大きな全体の一部であるコンピュータシステムを考えるのに役立つものです。

仕事やチームの世界では、まず自分自身から始まります。あなたには他の人と一緒に行う一定のタスクと役割があります。さらにズームアウトすると、あなたのチームは他のチームと組み合わさって会社を形成しています。さらにズームアウトすると、あなたの会社は単独ではなく、同業他社、顧客、消費者、投資家、他の生産者と相互作用し、あなたの業界やセクターの機能を形成しているのです。さらにズームアウトすると、あなたの産業は他の産業と相互作用して経済システムを形成し、さらに大きな社会システムの一部として法律、政府、文化とともに機能していることがわかります。

2. ズームアウトする 

システム思考は、この「ズームアウト」と「全体像の把握」を促すことで機能します。システムの1つの機能やノードだけを見ると、それが他の機能とどのように連動しているのか、あるいは真の問題はどこにあるのか、それはまったく別のところにある可能性がある、ということがわからなくなるでしょう。

このように、ズームアウトすることで、チームは少し違った視点から考えることが要求されます。しかし、この視点の変化は自分たちがシステムの他のポイントや要素にどのような影響を及ぼしているのか、また、本来自分たちが完全にコントロールできないシステムに直面したときに、どうすればよりレジリエンス(回復力)を高めることができるのかという観点から、チームを考えさせることができるのです。

ということは、大局だけでなく、より長期的な視点が見えてくるということです。ズームアウトすることは、時間について考えることにも繋がります。つまり、システム思考を実践しているチームは、目先の短期的な利益だけでなく、自分たちの行動がもたらす長期的な影響や起こりうる結果について考えるようになるのです。

3. レバレッジポイント(テコの力点)を探す

また、ズームアウトすることで、問題の所在を把握し、修正点を見出すことができるようになります。このような領域は「レバレッジ・ポイント(最も効果的に物事に作用できる点)」と呼ばれます。もちろん、システムは大規模で、さまざまな関係者や可動部品が関わっているため、すべてのレバレッジ・ポイントを修正できるわけではありませんし、修正できる範囲にあるわけでもありません。

例えば、あなたの会社が今、サプライチェーンの問題に直面しているとします。ズームアウトしてみると、世界経済全体がサプライチェーンの問題に直面しており、多くのチームが自分たちだけではこの問題を解決できないことがわかるでしょう。

しかし、レバレッジ・ポイントに関して自分の限界を理解することで、他の部分で何をすべきか、どこに解決策を求めるべきかの判断をより的確に行うことができます。

3. フレームを拡張する

もし、そのサプライチェーンの問題を回避するために、別の供給ルートやサプライヤー、或いは別の生産方法を見つけたり、会社の主軸を変えたりすることができれば、それはめでたく「枠の拡大」に成功したことになります。

枠を広げるということは、視点を変えて、今まで無視していた、あるいは見落としていたシステムの新しい領域をチームのフレームワークに取り込むことができたということです。

解決策を見出すこの考え方は、実に興味深いものと言えます。つまり、創造性とは完全に斬新で独創的なものである必要はない、ということです。視点を少し変えて、広い世界、特にこれまで重要だと思わなかった分野に目を向けるだけでいいのです。

枠を広げるということは、考え方の多様化とも言えます。枠を広げようとすると、多様な意見や考えを自分の枠に取り込まないと、同じ考えや同じプロセスの繰り返しになってしまうからです。

4. フィードバックの重要性を知る

そこで登場するのがフィードバックであり、システム思考の中心的存在となっているものです。フィードバックのループに注意を払うことで、新しいプロセスやアイデアが実際に機能するのか、それとも同じことを違う名前で試しただけなのかを知ることができます。

フィードバックループに注意を払うことは、システムの文脈では明らかに多くの形態をとることができ、フィードバックループをモデル化したり、図式化したりすることができます。対して、チームや人々との関係においては、フィードバックに耳を傾けることができるでしょう。チームメンバーの発言や感情に注意を払うことで、チームは自らの行動の影響を分析し、注意を要する問題の高まりにしっかりと注目することができます。つまり、コミュニケーション・チャネルをオープンにしておくことは、システム思考にとって非常に重要なことなのです。  

5. 強化とバランスを意識する 

システム思考のもう一つの大きな側面は、「強化」と「バランス」です。拡張されたフレームに基づいてチームやシステムの構成要素に変更を加えることは、構成要素を強化し、より良いものにすることと言えます。しかし、システム思考では、構成要素を強化するためには、バランスをとるプロセスが必要です。つまり、その変化に適応し、システムの他の部分と一致させる方法が必要なのです。

このことが意味するのは、永続的な変化を実現するためには、チームがしっかりとした土台を持つ必要があるということです。システムに負荷がかからないように、変化を起こすための基礎が必要なのです。あまりに急激な変化や、チームのフレームワークに十分に組み込むことができないような大きな変化は、逆効果になります。

チームの場合、バランスをとるプロセスには、信頼とコミュニケーショ ンの強固な基盤を持つことが含まれます。そうすれば、チームのやり方に変更を加える際、その変更を容易に伝え、全員が同じ考え方になるようにすることができるでしょう。また、強い価値観や目標も、チームを地に足の着いた状態に保ち、チームの本質に沿った強化要素を採用することに集中できるため、良いバランス調整メカニズムの一つとなります。

最後に:システム思考とレジリエントなチームビルディング

今回ご紹介してきたように、システム思考は全体的かつ先見性のある方法で問題に対処するための非常に有効なフレームワークをチームに提供してくれるものです。この種の思考法は、以下のような点から、チームに役立つでしょう。

  • チームとチームが置かれている状況を長期的かつ大局的に見ることができる。
  • チームの限界を理解し、実際にどのような問題を解決できるのか、またその最適な方法を見つけ出すことができる。
  • チームが見逃しているかもしれない新しい視点や異なる視点を取り入れ、視点を変え、参照する枠を広げることで創造性を発揮する。
  • フィードバックに注意を払い、ある手段を講じた場合の結果を率直に認識する。 
  • チームの構造に変化を取り入れる手段を確立し、その変化がチームのあり方に沿ったものであることを保証する。

これらの教訓は、困難にうまく対応し、状況に適応できるチームを作るための土台となります。つまり、レジリエントなチームを作るための有効な道しるべとなるのです。 

システム思考のレッスンをより具体的に実践するためにも、インバイトジャパンがご提供するようなチームビルディングのセッションを定期的に開催することをお勧めします。インバイトのチームビルディングプログラムは、あなたのチームが異なる視点に立ち、より深い価値観について考えられるようにサポートします。このような機会を設けていくことにより、あなたのチームはどんな困難が待ち受けていても、刺激的で創造的な新しいアイデアを生み出し、より簡単に実行できるようになるでしょう。 

チームビルディング完全
ガイドブック

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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。