チームビルディングの成果を測定する6つのステップ

チームビルディングの成果

これは、チームビルディングの成果を測定するための6つのステップです。好きなものを選ぶメニューではなく、順番通りに進める一連のプロセスです。チームビルディング研修プログラムを導入する企業は、この6つのステップすべてを順序通りに実施する必要があります。ステップ1で目的を定義しておかなければ、ステップ3のサーベイで使えるデータを得ることはできないからです。

このテーマを扱う記事の多くは、同じような6つのステップを紹介しています。しかし、そのどれも具体的な数値や尺度、基準値までは示していません。本記事では、公表されている研究データに基づいた具体的な数値を、各ステップに加えています。

対象となるのは、チームビルディングの成果を経営層に具体的な根拠のある数値として報告する必要がある、人事担当者や総務担当者です。抽象的な感想では不十分な場面を想定しています。

ステップ1:プログラムを実施する前に、目的を明確にする

プログラムを始める前に設定した目的によって、実施後にどの指標を使うべきかが決まります。エンゲージメント向上を目的としたプログラムと、定着率向上を目的としたプログラム、そして業務スピード向上を目的としたプログラムでは、測定方法が異なります。

チームビルディングの目的は、大きく3つに分類できます。エンゲージメント、定着率、そしてアウトプット(業務スピード)です。エンゲージメントを目的とするプログラムは、ステップ3で紹介するエンゲージメントスコアや従業員ネットプロモータースコア(eNPS)で測定します。定着率を目的とするプログラムは、ステップ5のプログラム後定着率で測定します。アウトプットを目的とするプログラムは、ステップ6のチームパフォーマンス・納期遵守率で測定します。

先に目的を定めておくことで、経営層が本来求めている問いとは違う問いに答えるデータを集めてしまう事態を防げます。士気の低下を改善する目的で企画したプログラムを、本来想定していなかった納期遵守率という指標で後から評価するべきではありません。

ステップ2:プログラム実施前にベースラインを設定する

以降のステップで使うすべての指標は、比較対象となるプログラム実施前の数値を必要とします。実施後のスコアだけでは、その起点がなければ意味を持ちません。

エンゲージメントスコアとチーム結束指数は、ステップ3のパルスサーベイから得られるベースラインを必要とします。このサーベイはプログラムの前後で1回ずつ実施します。プログラム後定着率には、プログラム開始前の既存の人事離職データが必要です。チームパフォーマンス・納期遵守率には、プログラム実施前からプロジェクト管理ツールにすでに蓄積されているデータを使います。

このベースラインは、プログラム実施前に取得しておく必要があります。実施後に記憶を頼りに推測するものではありません。数か月後に「以前のエンゲージメントはどうだったか」を管理者に尋ねて推測させると、実際のベースラインでは生じないバイアスが入り込んでしまいます。

ステップ3:実施前後にサーベイを行う

実施前後のサーベイとは、5問から10問程度の短いパルスサーベイのことです。プログラム終了後できるだけ早いタイミングで実施し、実施前とまったく同じ設問セットを使って再度実施します。設問数が8問から10問を超えると回答完了率が急激に下がるため、設問数の上限はこの範囲に収めます。

この種のサーベイの回答率は、30%から50%程度が一般的です。60%を超えれば良好な結果といえますが、これは標準的に期待できる数値ではありません。

このサーベイからは、2つの指標の元データが得られます。1つは従業員エンゲージメントスコアです。1〜5、または0〜100の尺度で、プログラム実施後の結果をステップ2のベースラインと比較します。もう1つは従業員ネットプロモータースコア(eNPS)です。批判者(0〜6と回答した従業員)の割合を、推奨者(9または10と回答した従業員)の割合から差し引いて算出します。eNPSの数値単体では意味を持ちにくく、業界平均は10から30程度とされているため、この範囲であれば通常の値であり、危険信号ではありません。

特定のスキルギャップの解消を目的とするプログラムでは、別の手法を用います。ファシリテーターが3から5つの指定スキルを、実施前後で同一の評価基準を使って評価する方法です。これはカークパトリックモデルのレベル2(学習到達度の評価)にあたり、実施前後で対になった評価によってスキルの変化を測る、標準的な評価フレームワークです。

ステップ4:実務における行動の変化を観察する

サーベイのデータだけでは、日常業務の中で管理者や同僚だけが気づくような行動の変化までは捉えられません。このステップでは、それを補うために2つの観察型の手法を加えます。

管理者による観察チェックリストは、あらかじめ定めた短い行動リストをもとに、チームの直属の管理者が4週間にわたって週次でスコアをつけていく方法です。この4週間という期間は、公表されている基準値ではなく、実務上の設計として妥当な長さです。週次で無理なく完了でき、かつ形骸化して急いで済ませるだけの作業にならない程度の長さです。

360度評価では、3から5つの具体的な行動を匿名で評価し、参加者1人あたり合計6から10人の評価者を設定します。360度評価に関する一般的なガイドラインでは、最低でも5人程度から、正式なレビューでは15人から20人程度までが推奨されていますが、6から10人という人数は、十分なカバー範囲と小規模チームでの実施のしやすさのバランスを取った数値です。この手法は、すでに日常的に協働している6人から40人規模のチームに適しています。

これら2つの手法は、いずれもチーム結束指数というおよそ6項目からなる複合スコアに反映されます。6項目という数は、結束を測定する学術的な尺度の中でもっとも簡潔なもの、BollenとHoyleが1990年に開発した知覚的結束尺度(Perceived Cohesion Scale)に対応しており、より長い尺度では12項目や19項目に及ぶものもあります。実施30日後と90日後に確認することで、指数の上昇が、部門を越えて助けを求める行動の増加、対立解消の迅速化、会議への参加の安定化という3つの行動を予測する材料になります。

ステップ5:その後数か月にわたって指標を追跡する

実施前後の1回限りの比較だけでは、その結果が持続するかどうかは分かりません。このステップでは、その問いに答えるために複数月にわたる観測期間を必要とする2つの指標を扱います。

長期的なエンゲージメント追跡では、ステップ3とまったく同じ設問セットを、6か月から12か月にわたって90日ごとに繰り返し、単発の比較ではなくトレンドラインとして可視化します。トレンドラインを見ることで、スコアがベースラインに向けて低下していくのか、横ばいを保つのか、それとも改善を続けているのかが分かります。これは1回限りの実施前後比較では把握できない情報です。

プログラム後定着率は、参加者のうち6か月後と12か月後の時点で在籍している割合を、プログラムに参加していない同規模の従業員グループと比較して追跡します。この比較グループを設定することで、会社全体の離職傾向とプログラムそのものの効果を切り分けることができます。この切り分け手法はチームビルディング特有のものではありません。カークパトリックモデルを発展させた確立されたフレームワークであるフィリップスROIメソッドに基づくもので、学習・育成領域の効果測定全般において、比較グループを設けることがプログラムの真の効果を他の要因から切り分ける標準的な方法とされています。

ステップ6:結果を事業成果に結びつける

経営層は、チームがプログラムについてどう感じたかではなく、アウトプットへの影響でプログラムを評価します。このステップでは、チームがすでに保有しているデータから、その根拠を導き出します。

チームパフォーマンス・納期遵守率では、プログラム実施前後の4週間から8週間の期間で、スプリント完了率、マイルストーン達成率、チケットサイクルタイム(着手から完了までにかかる時間)という3つの数値を比較します。いずれも新たなサーベイではなく、チームがすでに使っているプロジェクト管理ツールから直接取得します。

このステップには、プログラム実施前からすでに稼働しているトラッキングツールが必要です。ツールを導入していないチームの場合は、比較対象となる既存の納期データが存在しないため、代わりにステップ3のサーベイデータとステップ4の観察データを用います。

チームの規模と頻度に応じてフレームワークを調整する

このフレームワークは、チームの規模、プログラムの実施頻度、そして企業がどこで事業を展開しているかによって形を変えます。

100人以上の規模では、ステップ3のサーベイとeNPSの派生手法は、追加コストなしでスケールします。どちらも人数にかかわらず単一のデジタルフォームとして実施できるためです。一方、ステップ4の手法は同じようにはスケールしません。管理者による観察も360度評価も、1人ひとりに向き合う必要があるため、40人を超えたあたりからコストがかさみ、精度も安定しなくなります。

単発のプログラムであれば、ステップ3のサーベイとeNPSの確認だけで十分です。どちらも同じ週のうちに完了できます。四半期ごとのオフサイトのような継続的なプログラムでは、ステップ5の長期追跡を行って初めて、測定を実施する意味があります。90日ごとの継続的なチェックポイントによってはじめて、以前の成果が持続しているかどうかが分かるからです。

どの手法が実際に必要になるかは、プログラムに含まれるチームビルディング施策の内容にも左右されます。短時間のアイスブレイクには、丸1日かけたスキル重視のプログラムほどの観察の深さは必要ありません。ステップ4の手法は、後者にはあてはまりますが、前者にはそれほど重要ではありません。

日本国内でこのフレームワークを運用する際は、2点調整が必要です。1つは、ステップ3のサーベイを英語と日本語の両方で実施することです。英語のみで送付すると、日本語を第一言語とするスタッフからの回答率が下がり、回答内容も本音から遠ざかる傾向があります。もう1つは、ステップ5とステップ6のチェックポイントのタイミングを、3月末に決算を迎える日本の会計年度に合わせることです。

チームビルディングの価値とは

チームビルディングの価値は、経営層がすでに追跡している3つの指標、すなわち定着率、アウトプット、エンゲージメントスコアに表れます。実施後にどれだけ好意的な感想が集まったかではありません。入社1年目を超えて定着する人を増やすプログラムや、翌四半期の納期遵守率を高めるプログラムには、満足度評価だけでは示せない価値があります。

その価値を経営層にどう示すか

その価値を経営層に示すということは、当日の様子をまとめた一般的なレポートではなく、ステップ1で設定した本来の目的に紐づく具体的な指標を使うということです。上記のステップ1から6は、その数値を直接導き出します。ベースラインと比較したエンゲージメントスコア、比較グループと比較した定着率、あるいはプログラム実施前の週と比較した納期遵守率です。

チームビルディング活動のメリットとは

このようにチームビルディング・アクティビティを測定することのメリットは、経営層が判断材料にできる数値が手に入ることです。逸話ではありません。また、掲げた目的に対して重要な指標では、どのプログラム形式も同じ結果を出すとは限らないため、次の四半期にどのプログラムを再度実施し、どのプログラムを見送るべきかの判断材料にもなります。

チームビルディング活動のデメリットとは

チームビルディング活動には、よくある2つのデメリットがあります。1つは、測定そのものが実施されず、プログラムの投資対効果が結局証明されないままになることです。もう1つは、1回しか測定していないプログラムでは、実施から数週間を過ぎた後の持続的な効果を示す根拠が何も残らないことです。

こうしたデメリットを避けるには

こうしたデメリットを避けるには、プログラム実施前に、上記のステップのうち少なくとも2つに取り組むことを決めておく必要があります。測定を後付けで追加するのではありません。ステップ3のパルスサーベイは1つ目のデメリットを防ぎます。ステップ5の長期追跡は2つ目のデメリットを防ぎます。実施から数週間を過ぎた後も効果が持続しているかどうかを確認できる唯一のステップだからです。

効果的なチームビルディングの7つのC

効果的なチームビルディングを構成する7つのCは、次の通りです。

  • コミュニケーション(Communication)
  • コラボレーション(Collaboration)
  • コーディネーション(Coordination)
  • 対立解消(Conflict resolution)
  • コミットメント(Commitment)
  • 結束(Cohesion)
  • 称賛(Celebration)

結束は、ステップ4のチーム結束指数がまさに測定している対象です。コミュニケーションは、同じくステップ4で扱う360度評価によって可視化される対象です。同僚同士がその行動について直接評価し合う仕組みだからです。

日本におけるチームビルディングの費用相場

日本国内のチームビルディングの費用は、グループの規模、プログラムの形式、実施時間によって変わります。その幅は広く、単一の平均値だけを示しても実用的な参考にはなりません。規模や形式別の費用の内訳については、東京のチームビルディング費用相場に関する記事をご覧ください。

グループの人数によって、1人あたりの費用は変わるか

1人あたりの費用は、グループの人数が増えるほど下がる傾向があります。ファシリテーション費や運営費といった固定費が、より多くの参加者に分散されるためです。人数・形式別の詳細な内訳は、上記の費用に関する記事に記載しています。

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