思考方法の種類とその特徴を理解すること。それはチームがより多様性を身につけ、限界を超えられるメンバーを育成することに繋がります。
あなたは、ご自身の思考方法について考えたことがありますか?問題や疑問を抱いたとき、それを解決するためにどのような方法を取るでしょう?問題をその文脈で見るのか、それとも起こりそうな結果に注目するのか。可能な限り多くの解決策をブレインストーミングで考えるのか、それとも唯一の解決策を見つけようとするのか。或いは、過去の経験に頼るのか、それとも新しい道を模索するのかなど…。
これらの質問に答えるのはなかなか簡単なことではありません。私たちは自分のやり方で考えることに慣れすぎていて、「自分がどのように考えているのか」「自分の考え方がどのような精神的ツールやプロセス、前提に依存しているのか」をきちんと分析することを阻害しがちだからです。
しかし、実際には私たちの多くが普段から何気なく使っている思考にはいくつもの「タイプ」があります。そして、それらを意識することは「メタ認知(思考について考えること)」とも呼ばれ、自分自身の成長や発達だけでなく、強くしなやかなチーム作りにも非常に有益なことなのです。
これらについて学ぶにあたって、まず「思考のタイプ」は、アイデンティティや性格のタイプと同じではないことを覚えておくことが重要です。一日の中、あるいは同じ問題に向き合う中でも、人はさまざまなタイプの思考を使うことができます。しかし、私たちは感情の状態や生い立ち、受けてきた教育や環境など、或いはその他の要因に基づいて、ある特定のタイプに傾きやすくもなっています。
さまざまなタイプの思考法を学ぶことが重要な理由
では、なぜ思考の種類を学ぶことが個人やチームに役に立つのでしょうか。これに答えるには、2つのアプローチがあります。1つ目は、個人の立場から自分自身の考え方を知ることです。高いレベルの思考には、考えるための方法や手法が含まれています。そして、自身の考え方を意識することによって、新しい考え方や心の視野を広げることにも繋がります。
したがって、自己啓発のためにはさまざまなタイプの思考について学び、自分の思考プロセスをより意識する方法を身につけることが有効です。そして、さまざまな方法で考える訓練をすることができれば、問題解決がより容易になるうえ、少なくとも何かを解決する方法について、複数の視点に立つことができるようになるでしょう。
そして、チームでの応用も極めて重要なポイントです。一人でさまざまな思考法を身につけるのは難しいことであり、だからこそ、私たちはチームで仕事をすると言えるでしょう。一人では必ずしも解決できない問題を解決するためにチームが集まり、それぞれの考え方やスキルを結集するのです。
そしてチームにおいて、このような思考法を理解することは、メンバーの思考法や問題解決能力をより認識することにも繋がります。その結果、問題を解決する際、あるいは進め方に迷った際に、メンバー間の理解を深めることができるのです。また、多様な思考法を持つチームを形成することをより意識するようにもなるでしょう。
言い換えれば、自分がどのように考えているかを知ることは、個人として成長し、自分が何者であるかを理解するための重要な要素なのです。したがって、チームのバランスを取り、成功に導き、弾力性を維持する上でも、同様に重要なことであると言えます。
では次に、思考の種類とその意味についてお話していきましょう。
7つの思考タイプ
今からご紹介するのは、一般的に認知されている思考のタイプのうち、最も基本的なものです。この他にも、今回挙げるタイプを包含しており、「思考のタイプのカテゴリー」として分類されることもあるという理由で、このリストから分離したものもいくつかありますので、そちらは最後に見ていきます。
批判的思考
これはおそらく、このリストで最もよく知られているタイプの思考法ではないでしょうか。批判的思考には、質問をし、発言や考えの裏にある妥当性や前提を探ることも含まれます。批判的思考は主張の起源や、それが伝聞や誤った情報に由来するものでないかどうかを調査することに非常に関心があります。
批判的思考の良い例として、チーム内の情報やアイデアを評価することが挙げられます。批判的思考をする人は、その考えが本当に正しいかどうかを確認するために、アイデアに異議を唱えたり、議論の穴を突いたりすることが得意です。これはそのアイデアに反対しているのではなく、そのアイデアがしっかりとした論理的、事実的な根拠に基づいていることを確認したいからです。これはチームに新しくより良いアイデアを出させるために非常に有効であると言えるでしょう。
創造的思考
そこで、より一般的な思考法の一つである「創造的思考」を取り上げましょう。創造的思考は新しいアイデア、新しい理論、新しい解決策など、常に新しいものを考え出すことに取り組む思考法です。そのため、アイデアや情報をバネにして、常に革新的で新しいものを生み出すことが、この思考法の原動力となります。
創造的思考は、天才や芸術家など、ある種の人たちだけのものだと考えられがちなものでもあります。しかし、私たちは皆、日常的に創造的思考を行っているもの。日々のちょっとした行動でも、新しいアイデアや方法を思いついたとき、あるいは自分自身でブレインストーミングをするとき、私たちは創造的思考を行っているのです。
分析的思考
分析的思考も、最も一般的な思考法の一つです。分析的思考とは、アイデアや解決策を構成要素に分解し、根拠と論理を用いてそれらの構成要素を分類・検討する方法を生み出す思考方法です。
分析的思考の最もよく知られた例は科学と数学でしょう。科学的方法は、分析的思考を使って現象を調べ、新しい理論を提案する例であると言えます。データ分析も、大きな数字の集合を分析しやすいパーツに分解することです。加えて、チームで問題を検討する方法を提案したり、問題を分解して見ようとしたりすることも、分析的思考が最もよく現れる方法です。
抽象的思考
次に紹介するのは、関係や結びつきを考える抽象的思考です。抽象的思考をする人は、一見バラバラに見えるアイデアを一つにまとめ、概念の裏に隠された意味を明らかにすることができます。これは「愛」や「力」といった具体的な対象から切り離された抽象的な概念に敏感であり、また、より広い理論にも精通しているからです。
抽象的思考は比喩的な言葉や記号を扱うことに抵抗がないため、パズルを解くのにも有効な思考方法です。そのため、チームでは複数の視点から物事を見たり、異なるアイデアの繋がりを見つけたりすることができる、優れた問題解決者になります。
具体的思考/実践的思考
具体的思考は抽象的思考と対置されることもありますが、実践的思考とも呼ばれます。抽象的な思考とは対照的に、具体的思考はアイデアや問題を非常に文字通り、鋭く見つめる思考法です。具体的思考は文脈や分析、ブレーンストーミングに夢中になることはありません。なぜなら、その目的は最もシンプルな解決策をできるだけ早く見つけることにあるからです。
具体的思考は、手作業や機械的な作業の際に非常に役に立ちます。また、多くの思考を必要とする大きな問題であっても、具体的思考はチーム内で時々発生する「考えすぎ」を減らし、要点に切り込むのにも役立ちます。
発散的 /水平思考
発散的思考と水平思考は、解決策や答えをどのように見つけるかに重点を置いた思考法です。発散的思考では新しいアイデアを思いつくために、できるだけ多くの異なる解決策を見つける方法をとります。時には、元の問題から遠く離れて、インスピレーションを得ることもあるでしょう。そのため、このタイプの思考はしばしば創造的思考や抽象的思考とも結び付けられます。
例えば、ブレインストーミングのようにたくさんのアイデアを出し合い、その中から徐々に核となるアイデアを絞り込んでいくような思考方法です。このように、発散的思考はさまざまなアイデアを集めることができるため、プロジェクトの初期段階において有効な思考方法といえます。
収束的思考/垂直的思考
発散思考とは対照的に、収束思考、つまり垂直思考は、論理と分析によって、アイデアを組み合わせたり、排除したりして、一つの進むべき道を見出すことです。収束思考は非常に組織的で効率を重視しますが、異なるアイデアを組み合わせたり融合させたりする必要があるため、エレガントで芸術的な側面もあります。
発散的思考と収束的思考は、対立するものとして見る必要はありません。むしろ、代用品というより、良いコンビのようにさえ感じられます。大きな会議では、発散的思考でチームに新しいアイデアをたくさん出させたり、創造的に考えさせ、次に収束思考で全員をまとめ上げるという使い方がわかりやすいでしょう。
さらに2つの思考法:順次的思考と全体的思考
ここまで一般的な思考法を7つご紹介してきましたが、これらの他にもさらに2種類の思考法があり、他の思考と一緒にリストアップされることもあります。しかし、私はこの2つのタイプは少し異なるものであると思うため、今回のリストでは別々にしました。なぜなら、そのうちの一つはより全体的な視点とプロセスに関わるもので、上記のタイプの多くを含む可能性があるため、タイプではなく「カテゴリー」と呼ぶ方が適切かもしれないからです。
順次的思考/直線的思考
順次的思考は問題を段階的に処理するものです。そのため、このリストにある分析的思考や収束的思考など、論理的なタイプの多くを包含しています。しかし、より創造的な性格の人は、大きなプロセスを小さなステップに分割するときに順次的思考を使うこともあるでしょう(例:ブレインストーム→アウトライン→作成→編集/レビュー→最終製品)。
チーム内でタスクや役割を分担する際には、順序立てて考えることがよくあります。全員が大きなプロジェクトの小さな部分を与えられ、全員がプロジェクト全体を完了させるための大きなスケジュールや方法の中で、自分の役割と期限を認識するからです。
全体的思考
最後にご紹介する「全体的思考」は、全体像を把握し、各構成要素がより大きな全体像にどのようにフィットしているかを見る思考法です。これは経営者やリーダーによく見られます。しかし、私は自分の行動がチームの他のメンバーとどのように調和し、利益をもたらすかを理解するために、すべてのチームメンバーが多少なりとも全体的思考能力を必要としていると主張したいのです。
プロジェクト開始時のミーティングで、チームの目標や成果、成功への道筋を議論し、役割分担やタスクの割り当てを行い、そこに至る詳細やプロセスを考える様子を想像すると、全体思考がどのように作用しているかがよく分かります。このように、収束的思考と発散的思考と同様に、順次的思考と全体的思考は互いに補完し合い、チームを成功に導くために必要なものなのです。
最後に:チームにおけるダイバーシティに関わる思考タイプ
これまで見てきたように、思考法にはさまざまなタイプがあり、その多くは互いに混ざり合っています。私たちはこれらを別々のものとして分類しがちですが、先に述べたように、多くの人が日常的にさまざまな思考法を無意識に用いています。とは言え、私たちの多くは問題に対して特定の方法で考えるように訓練されており、簡単に切り替えることは難しいことかもしれません。ですから、自分が特定の考え方をしていることに気づき、違う見方をすることで視野を広げる訓練をしておくと良いでしょう。
チームではある問題に対して、特定の思考法や、多くの思考法を組み合わせることが必要になることがあります。だからこそ、いろいろな思考法ができる人たちで構成された、多様性のあるチームが良いのです。多様性というと、いろいろな経験をしている人を連想しますが、それは、いろいろな経験をすることは、いろいろな思考法をとることに繋がるからです。
さまざまなタイプの思考を持つ人が集まった総合的なチームがあれば、問題を多面的に捉え、より優れた、より革新的な解決策を導き出すことができるようになります。また、チームはより多くの問題を予見し、新たな課題に直面しても弾力的に対応することができるようになるでしょう。
チームがどのように考えるかを意識して挑戦する方法のひとつに、チームビルディングがあります。インバイトジャパンがご提供するようなチームビルディング用アクティビティは、チームがさまざまな方法で考え、あらゆるスキルや視点を組み合わせて成功するよう、試行錯誤することを目的としています。そして、チームビルディングを行えば行うほど、チームメンバーが自分自身の思考プロセスに気づき、またチームメンバーの思考プロセスにも気づくことができるようになるのです。