対立の「調停」:そのスキルをチームと生産的な議論に活用する方法 

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すべてのチームは、基本的な「調停」と言うツールを学ぶことで、対立を交渉するためのプロセスを構築することができます。しかしそれだけでなく、「調停」は生産的な議論を行うためにも使用でき、チームメンバーが自分の考えや意見を率直に共有できる安全な空間を作り出すことにも役立つのです。

今月はずっと「対立とチーム」をテーマに、その解決方法についてお話ししています。ほとんどの回において、「チームにおける対立」についての主な考え方を説明することにとどまってはいますが、これまでのところ、主に対立の3つの主要な概念的枠組みである「対立解消」、「対立管理」、「対立変化」のレンズを通してこれを行なってきました。 

この3つのフレームワークを念頭に置いて、チームとして対立に取り組むことは、間違いなく有効であると確信しています。なぜなら、それぞれのフレームワークによって、チームがどのように対立に関わり、対立後の目標をどうするかが決まるからです。

例えば、あなたはチームにできるだけ早く対立を解決してほしいと思っていますか?(→「対立解消」)それとも、この対立を生産的な議論や新しいアイデアを生み出す手段として活用したいですか?(→対立管理)?それともこの対立を利用して、この対立が浮き彫りにしている根本的な問題に本当に対処し、チームに深刻な構造的または文化的変化をもたらしたいのでしょうか?(→対立変化)

対立に関わる前にこのような異なる目標を持つことは、明らかに、その後の結果に大きな違いをもたらすでしょう。しかし、これらのフレームワークの多くが対応していないのは、実際に対立に関与したり、対処したりする際の細かい点です。つまり、実際にどのように対立を解決するのかということが抜けているのです

私たちがこの話に最も近づいたのは、「対立解消」のお話しをしたときでした。「対立解消」はできるだけ早く解決策に到達することに重点を置いているため、この結論に至る一般化されたステップが生み出されています(目的がよりオープンエンドである他のフレームワークとは異なる点です)。しかし、これらのステップも「解決」を達成することに偏っていると言わざるを得ないのです。

では、チームの目標が何であれ、簡単に使うことができる対立の対処法とは何でしょうか?そこで登場するのが「調停」です。「調停」とは、対立を処理するプロセス、あるいは、あなた(と関係者全員)が対立が存在することを認めた上で、あなたが決めたどんな目標にも到達するための手段とも言えるでしょう。

これから見ていくように、「対立調停」は特に意思決定や生産的な議論を行えるようになることに関して、チームにおけるさまざまな応用が可能です。したがって、すべてのチームにとって「調停」の原則とその方法について学ぶことは非常に有益なこととなるでしょう。

「調停」の主な特徴

本当の意味での誠実な対話ができる環境を整えるという点では、「調停」は非常に有用なものです。ですから、以下の特徴は「調停」とは何か、どのように機能するかを定義するのに役立つだけでなく、そのプロセス自体に内在するものでもあります。そして、これらの特徴は「原則」とも言い換えることができます。

  • 任意であること :「調停」は最終的には対立や対立の当事者間の自発的な行為です。強制的に「調停」に参加させることはできません。
  • 秘密厳守:「調停」中に起こること、そしてそれが生み出す議論のすべては、機密事項として扱われます。これは、オープンで正直であるための信頼と安全な空間の確固たる基盤を提供するための原則です。
  • 非拘束:「調停」から出てくるものは、(「対立解消」のプロセスとは異なり)必ずしも条約または署名された絶対的な合意ではなく、いかなる脅しや罰も伴うべきではありません。実際、「調停」が適切に機能するためには、たとえ「調停」が失敗に終わっても、最後に待っているのは罰ではないことを当事者が感じる必要があるのです。
  • チームメンバー主導:「調停」はその大部分を、関係するチームのメンバーによって進められるべきものです。「調停人」は居るものの、議論の中心はチームメンバー自身であり、対立を解決する方法についてのアイデアもその中から出てくるはずとしています。
  • 中立的な立場: 「調停」の役割は、対立に関与することができる中立的なプロセスとして機能することです。多くの場合、これは中立的なオブザーバーとして行動することができる実際の第三者「調停人」の形で行われます。しかし、これはチームメンバーが判断なしにお互いに正直になれると感じる、中立で安全な空間を作ることによっても実現することが可能です。
  • 共同作業:「調停」は基本的に共同作業であり、チームメンバーが集まって率直に話し合い、共有するものです。「一方が他方を攻撃する」のではなく、「協力する」と考えることで、対立が引き起こす多くのプレッシャーから解放され、より建設的(かつ創造的)な解決策を導き出すことができるようになります。

「調停」の5段階

ここで、「調停」プロセスの本題である、「調停」の各段階の解説に入ります。

1. 決定する

まず、実際に対立に関与し、「調停」を利用することを決定することから始まります。これは重要な行為なのですが、なぜなら前述したように「調停」は自発的なものだからです。ですから、参加者を強制的にプロセスに参加させるような本当の「調停」は存在しません。これでは、チームメンバーが自分たちのやり方で対立を解決できるように門戸を開いておくという、「調停」の趣旨が損なわれてしまいます。

このステップのもう一つの大きな側面は、「調停」がこの種の対立に適しているかどうか、そしてどのようなスタイルの「調停」を行うかを決めることにあります(下記参照)。時には、時間も「調停」に適していない、またはもっと時間を与えたい、または他のアプローチを試したいといった場合もあるので、あなたとチームが一緒にこの決定をする必要があります。   

2. 準備する 

「調停」を行うことが決まったら、次はその準備です。「調停」では、明確な考えを持たずに対立についての話し合い(またはそのためのあらゆる会議)に臨むのはよくないので、以下のような下準備が重要になります。

  1. 対立に関するあなた自身の考えや気持ち
  2. あなたの考えや思いを裏付ける事実、数字、データ、調査
  3. 対立を克服するためのアイデア

さらに「調停人」は、対立を調査し、背景情報を入手し、会話に完全に参加できるように準備する時間も必要です。しかしそれだけでなく、チームメンバーに考えをまとめるための準備時間を与えることは常に良い手段であり、大奥の場合、より多くの情報に基づいた提案をし、感情的な反応を抑えることに繋がります。

3. 発表する、評価する、傾聴する 

この段階では、対立の当事者が「調停人」とともに集まり、準備してきた内容を発表します。発言を希望するチームメンバー全員に十分な時間が割り当てられ、出席者全員が自分の話を聞いてもらっていることを実感できるようにする必要があります。ここでは、安全な空間を作り出すことが極めて重要になります。

さらに、各チームメンバーが話している間、他のチームメンバーは口を挟まず、注意深く耳を傾ける必要があります。このときこそ、中断することなく、すべての側面を完全に提示し、すべての人の意見を聞くことができるようにするのです。

4. 交渉・協議する

すべての側面を提示した後、チームが集まって、対立を乗り越えて対立を解決する方法を話し合う段階となります。これはダイナミックな段階であるため、それぞれの対立やチームによって異なるものになるでしょう。

さらにこの段階は、前の段階で設定した環境に大きく依存することになります。もしあなたのチームが、オープンな対話と敬意ある議論を促す安全な環境を作ることができているなら、この段階ではそれを基礎として、生産的で創造的な解決策を導き出すことができるはずです。

5. 終結させる

チームがテーブルの上にすべての情報を出し、前進する適切な経路を見つけたと感じたら、それは「調停」のプロセスを終了する時間です。「終結」は、これまでに話したことをすべて総括し、すべての情報が今後のために書き留められていることを確認することを意味します。特に、何らかの合意や書面による解決に至った場合は、それを書き留めてコピーしておくようにします(今話したことをすべてまとめ、確認するこの方法は、すべてのブレインストーミング・セッションやミーティングについて行うべきことでもあります。)

「調停」のスタイル

「調停」は、対立についての考え方というよりも、対立を解決するための実践的なプロセスであると先ほど述べましたが、一般に使用されている「調停」には、さまざまなスタイルがあります。これらのスタイルは「調停」に対するチームの目標によって変えることができ、同様に対立に対処するためにどのようなフレームワークを選ぶかによって決めることができます。

  • 変革型調停:これは調停の目標が「すべての当事者が合意できる何らかの変革的な変化や合意に至ること」である場合です。これは通常、すべての当事者が同じ部屋に一緒にいる、非常に長い交渉や協議の段階を通じて達成されます。また、このタイプの「調停」はより「部分主導型」であり、調停人はそれが行き詰まった場合に、会話を前進させるためのみにそこにいることになります。
  • 促進型調停:このタイプの「調停」は、プロセス全体を前進させるために「調停人」に大きく依存しています。したがって、「調停人」は、「調停」を促進し、議論がうまくいけば(当事者に代わって)導くべき場所を決定していきます。このため、「調停」人は非常に有能で尊敬され、中立的で公平な観察を提供できる人物でなければなりません。このタイプの「調停」は、対立が攻撃的または激しい場合、そして皆を落ち着かせるために安定した手の必要性がある場合にもよく使用されます。
  • 評価型調停:このスタイルの「調停」は、「促進型調停」同様「調停人」に大きく依存しています。しかしこの場合、「調停人」はプロセスを促進するだけでなく、状況を評価し、批判的なフィードバックを与えることが必要です。「評価型調停」は、対立や議論が質的あるいはデータ駆動型のものであったり、法規範の解釈(企業契約や労働者の権利を考える)に関わるものであったりする場合に有効です。
  • 物語型調停:これは最も新しいタイプの「調停」で、対立の幅広いストーリーと、それをどのように形成するかに焦点を当てます。「物語型調停」は、当事者と協力して対立のストーリーを再構築します。対立という概念とその単語が含む攻撃性に焦点を当てるのではなく、「物語型調停」はチームメンバーがそれらを「違い」として考え、対立の見方をオープンエンドで、最終的には癒しのプロセスというものに変えるように働きかけているのです。

チーム内で生産的な議論をする方法

さて、「調停」とは何かと、それぞれのプロセスを見てきましたが、ここからは「調停」から得られる学びをいくつかピックアップして、チームの議論に応用してみましょう。チームには「調停」を必要とするような大きな対立が常にあるわけではありませんが、通常、ミーティングやブレインストーミングセッション中のアイデアにまつわる、小さな対立がたくさんあります。

では、「調停」で得た教訓を活かして、より生産的な議論を行い、より創造的な解決策を導き出すには、どのような方法があるのでしょうか。

1. 強いチーム環境を構築する 

「調停」が適切に機能するためにも、チームが生産的な議論や話し合いをするためにも、強力なチーム環境が不可欠です。強いチーム環境があれば、チームメンバーはお互いを信頼し、より自由に率直で正直なコミュニケーションをとることができます。また、強力なチーム環境は全員が「同じチーム」であり、すべて一緒にやっているという感覚につながります。つまり、より良い解決策を一緒に見つけようという気持ちが強くなるのです。

2. 話題に集中する

「調停」では、「調停人」が参加者が目の前の話題と対立の事実と詳細に集中できるよう手助けをします。同様に、チームでの話し合いでは、小さな争いや議論に脱線しないよう、アイデアと解決策に集中するよう心がけたいものです。そうすることで、対人関係での議論や攻撃からチームを遠ざけることもできます。

3. チームメンバーの疑念を晴らす

チームを個人的な争いから遠ざけるもう一つの方法は、全員の疑念を晴らすことです。まず、チームメンバー全員がチームのために尽力し、チームの利益を一番に考えていると仮定してください。それはつまり、物事を個人的に捉えていないということになります。それとともに、人々が自分の考えや意見を変えることをどこか「厄介な事」であると考えることなく、許容することでもあります。

これには多くの信頼と信念が必要です。しかし、この信頼関係を築くことで、チームはより強く、より弾力的になり、課題に対してより創造的な解決策を打ち出すことができるようになるのです。

4. 知的に謙虚である

最後に、「調停」では参加者は謙虚であることを学ぶことができます。なぜなら、「調停」の一部は、自分がコントロールできない大きなプロセスを受け入れることを意味し、他の人々の視点を積極的に聞くことを含むからです。議論においても、この原則は当てはまります。自分が常に正しいとは限らないことを受け入れることは、チームメンバーであることの一部であり、自分のアイデアを他の人と協力して組み合わせることを学べば、さらに良いアイデアを得られる可能性があります。

知的謙虚さのもう一つの側面は「好奇心」です。好奇心を持つということは、自分がすべてを知っているわけではないことを理解することでもあります。ただし、好奇心とはその事実を怒ったり恥じたりするのではなく、より良くなるために自分の知らないことを探そうとする前向きな気持ちです。好奇心をもって世の中に接すれば、できないことはないですし、議論を通じて新しい変化に対応する力も付けることができるでしょう。